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次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す「ndjc2022」合評上映会!岡本昌也監督、成瀬都香監督、藤本楓監督、牧大我監督を迎え舞台挨拶開催!

2023年2月14日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2022年度作品が完成し、3月17日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で上映される。本公開に先駆け、2月14日(火)には、合評上映会が開催され、各作品を手掛けた、岡本昌也監督、成瀬都香監督、藤本楓監督、牧大我監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、平成18年度より始まり、今年度で17年目になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
8月に行われたワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ4人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に短編映画を制作。フレッシュな感性と第一級の確かな技術が作り上げた個性豊かな短編映画4作品が上映される。

 

映画『うつぶせのまま踊りたい』…

喫茶店で働く山田芽衣子は大人になりきれず、行き場のない思いを短歌に詠むことでつまらない日常をやり過ごしていた。そんなある日、喫茶店で山田の短歌を目にした環七子はそのポエジーに共鳴し、強引に山田を店から連れ出す。社会に適応しながらも自由を求める山田と、自らの過去に囚われつつも自由に生きる七子は、詩という共通言語を通して変化していく。山田役に『彼女はひとり』『手』の福永朱梨さん。初監督作『光の輪郭と踊るダンス』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021「ゆうばりホープ」に選出された岡本昌也さんがメガホンをとった。

 

脚本の執筆に至った経緯について、岡本監督は「詩をテーマにした映画ですが、自分自身に子供の面があると思っています。大人になるにつれ社会性を獲得していく中で、”ここで突然叫んだら、どうなるんだろう”、”演劇を観ている時、突然舞台に出ていったら、どうなるんだろう”と社会に対する子供のような気持ちをなかったことにしたくないな、と書いていた。子供から大人になる間にある、人生の中の夕焼けの季節を映画で、詩という曖昧なものを媒体を通して表現できるんじゃないかな」と話す。脚本指導も入っており「初稿は抽象的な表現を多用していた。プロダクションの方に意味や映っているものを聞かれ、映画は具体的に映るものがないと撮れないので、具体的にしていく作業を通して、自分の映画が立体的になっていくんだな」と感覚的に理解していった。

 

映画『ラ・マヒ』…

嫌われることを恐れて無難な人生を歩んできた荻野愛は、同級生の堂島月子と再会する。愛とは正反対に自分らしい生き方を突き進んできた月子は、現在はプロレスラーになっていた。月子の試合に衝撃を受けた愛はプロレス団体ムーンライトに入門し、プロデビューを目指す中で道場の仲間たちになじんでいく。しかし月子は他人の目を気にして自由になりきれない愛に厳しい視線を向けていた。舞台を中心に活動する女優のまりあさんが愛、プロレスラーの夏すみれさんが月子を演じる。監督は、短編作品『泥』がソウル国際プライド映画祭などに入選した成瀬都香さん。

 

成瀬監督は「可能な限りの要素を詰め込んで、自分が何をやりたいか示そう」と意気込んでいたが、膨大な量になってしまい「30分の作品として、どこを見せるか絞り込んでいくのか。アドバイス頂いて、自分が何をやりたいか探る作業となり助けられた」と振り返る。題材として扱ったプロレスは2年前からファンで「プロレスを撮りたくて、方法を考えていく中で、ndjcがあるんじゃないか、と気づき応募させて頂きました」と告白。

 

映画『サボテンと海底』…

30代半ばの俳優である柳田佳典は映画出演のチャンスになかなか恵まれず、映画やCMの撮影前に出演者の代わりに準備作業をするスタンドインの仕事をこなす日々を送っていた。そんなある日、CM撮影現場で一緒に仕事をした人気俳優の小倉涼とプライベートで飲みにいくことに。そして柳田のもとに、映画の主演オーディションのチャンスが舞い込む。『ヴィニルと烏』の宮田佳典さんが主演を務め、『ふたつの昨日と僕の未来』の佐野岳さん、『ミスミソウ』の大友一生さん、シンガーソングライターの石川浩司さん、テレビドラマ「時効警察」シリーズのふせえりさんが共演。

 

藤本監督は、普段は美術部スタッフとして携わっており「現場でスタンドインの方を見かけた同時期に、別の現場で、今作主演の宮田佳典さんを見かけた。彼が35歳の男性で俳優をしており、充て書きした」と説明。なお、脚本段階で台詞をかむことを書いており、現場でも拘ったが、最終的にアフレコしたことを明かす。

 

映画『デブリーズ』…

CM監督の和田と若手カメラマンの佐々木は企業広告の撮影のためスクラップ工場にやって来るが、突如として発生したワームホールに巻き込まれ、砂漠の異星に飛ばされてしまう。そこには、地球のゴミで作られた衣服や仮面を身にまとって暮らす不思議な民族がいた。出演は『半グレvsやくざ』の山根和馬さん、『佐々木、イン、マイマイン』の森優作さん、『ケンとカズ』のカトウシンスケさん。監督は、短編作品『ダボ』が「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2022」に入選した牧大我さん。

 

牧監督は「コーヒー風見、という喫茶店で、友達と漫画でSFウエスタンを描く話をしていた。ゴミを民族的に使っているエイリアンがいたら良いよね、と与太話からスタートして、この企画があり、あの時の発想を使おう」と着想。キャラクター造形に関して「民族写真家のシャルル・フレジェを参考にして、その服をゴミでやったら、というコンセプトでやった。意外と都会にゴミがなく、ゴミを集めるところで時間がかかった。集めてからは、ゴミを服に落とし込む設計図が書けず、ありものをどのように組み合わせるか。その場で機転を利かしていく作業をしながら、答えを探していくのは難しかった」と思い返す。

 

自作以外でお気に入り作品を聞かれ、岡本監督は「『ラ・マヒ』のプロレスのシーンが、最早フェチ映画みたいに、プロレスを観た人じゃないと分からない感覚が随所に見られる。ndjcでコレを撮るんだ、というピンポイントな力の入れ方にビックリしました」とコメントされ、成瀬監督は「そう言ってもらえると有難い。そこでテンションを落としたくなかったので、妥協したくないな」と力説。なお、プロレスのシーンではバックショットに拘っており「撮影監督と照明の方による映像に対する拘りが凄い。ライティングに関する提案をして頂き、クライマックスでは一番に注力してくれて、美しい。『ジョーカー』のバックショットという暗黙の了解があり、実現できて良かった」と感慨深い。成瀬監督は、藤本監督と仲良くなったが「毎回、自分の作品を観る度に落ち込むんですよね」と心配ぎみ。皆が編集後のチェックを何度も経験しており「最初からおもしろいので、なんで落ち込むの?」と疑問を抱きながらも「あのラストが良かったな。大好きです。凄い人なんだなぁ」と感心。また「簡単には納得しない人なんだな」と感じ「宮崎駿監督は『簡単に納得するクリエイターは大したものを作らないんだ。納得しない人間はいつまでも技術を更新し続けるから』と仰っていた。藤本さんもそういうタイプなんだな」と捉えていた。藤本監督は、『うつぶせのまま踊りたい』の予告編を観た時に嫉妬心を抱いてしまい「ルックが素晴らしい。ライティングと撮影が素晴らしい。女性2人の儚さや夢を見ているような世界観が、あのルックだけで伝わってくる」と伝えていく。牧監督は、『サボテンと海底』について「映像での遊びがあり、観客に向ける映像の笑いに関する感性の豊かさが愛らしい作品だな」と印象ぶかい。そして、『デブリーズ』について、岡本監督は「よく作ったよね。でも衣装が最終的に腐ったらしい…」と聞き、牧監督は「腐食しているので、舞台挨拶に持っていけません、と言われ…」と愕然。牧監督は「首から下はコーヒー前を入れる麻袋。ターメリックをかけて色を作っている」と明かし、岡本監督は「アナログ感が随所に拘りとして見受けられる。デジタルで撮るようになりCG技術が発展していく中で、まだまだアナログで出来ることがここまであるんだ。映画の可能性を逆に探って、昔やっていた方法をもう一度やる」と温故知新な手法に気づかされた。

 

改めて、自身の作品について、岡本監督は「ロケの喫茶店はスタッフさんに探して頂いた。犬がOK、物を倒してもいい喫茶店というだけで候補が絞られてくる。協力して頂いた、だるま堂という喫茶店が融通を利かして頂いた。予め写真を撮り、現状復帰は皆でしっかりと直した。様々なものを壊していくシーンは美術部さんが俳優さんが演じやすいように壊しても良いセットを搬入して下さった。俳優さんも伸び伸びと演じられた」と助けてもらっている。成瀬監督は「プロレス以外の他のシーンでも、カットの意図も使い分けている」と技術的なアピールしながら「格好良く見せるだけでなく、引きの画を取り入れている。人物の動きと前と後ろの奥行を以って主人公らの関係性や可愛らしさを見せている。若くて可愛い子達を撮りたかった。顔だけではなく動きも上手く表現出来た」と自信がある。なお、女性が中心の物語だが「彼氏に応援させるのは決めていた。中盤をどのように描くか考えながら撮っていた」と説く。藤本監督は「冒頭のシーンでは美術だけでは補えきれない部分を人の数で見せている。牧君もエキストラで参加しています」と明かし「最後のシーンは、プロデューサーからカットするように言われていた。どうしても撮りたくてロケを見つけて説得しました」と苦労している。牧監督は「衣装と美術に拘れたな」と満足していると共に「音楽にも拘れたな。限られた時間と予算でヒリヒリしながら勢いよく録れた」と気に入っている。

 

最後に、岡本監督は「感想を欲しています。駄目なところも良かったところも、どんな意見も今後の糧にしかならない宝物です」とお願い。成瀬監督は「もっと大阪のことを知りたい。東京に来る機会があれば声かけてください」とアピール。藤本監督は「感想を聞くのは恐いですが、次につなげるために声を聞かせてもらえれば」と謙虚に。牧監督は「大阪が怒涛のように過ぎ去ってしまったので、また来れるように頑張りたい」と伝えた。

 

若手映画作家育成プロジェクト ndjc2022」は、3月17日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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