聖痕や奇蹟によって民衆から崇められた一方で、同性愛の罪で裁判にかけられた実在の修道女を描いた『ベネデッタ』がいよいよ劇場公開!
(C)2020 SBS PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA – FRANCE 3 CINEMA
17世紀に実在した修道女の宗教裁判を描く『ベネデッタ』が2月17日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ベネデッタ』は、17世紀にレズビアン主義で告発された実在の修道女ベネデッタ・カルリーニの数奇な人生と彼女に翻弄される人々を描いた伝記映画。17世紀、ペシアの町。聖母マリアと対話し奇蹟を起こすとされる少女ベネデッタは、6歳で出家してテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人した彼女は、修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助け、秘密の関係を深めていく。そんな中、ベネデッタは聖痕を受けてイエスの花嫁になったとみなされ、新たな修道院長に就任。民衆から聖女と崇められ強大な権力を手にするが…
本作は、『氷の微笑』『ロボコップ』の鬼才ポール・バーホーベン監督が手掛け、『おとなの恋の測り方』のビルジニー・エフィラが主演を務め、『さざなみ』のシャーロット・ランプリング、『神々と男たち』のランベール・ウィルソンが共演。2021年の第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。
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映画『ベネデッタ』は、2月17日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
巨匠ポール・バーホーヴェン監督の新作は、ショッキングな要素を満載にしつつ、時には大声で笑ってしまいそうな場面もある、完成されたエンターテイメント作品だ。
本作が日本で最初に公開されたのは、2022年10月の京都ヒストリカ国際映画祭の場だった。各国の注目に値する作品をいち早く押さえ、日本に持ってくることで映画ファンの間にも定評のある映画祭である。本作も昨年一番の注目作となり、上映当時は評判を聞きつけた映画ファンが、誇張ではなく日本中から本作を観るために京都入りする事態になり、ちょっとした過熱ぶりだったことも記憶に新しい。
ベネデッタは、冒頭でこそ勇敢で可憐な少女だが、修道院に入ってからは、「這い上がる」というよりも、周囲の者たちを食いちぎり、踏みつけてでも生き延びる、というような猛烈なエネルギーを発散させていく。彼女は劇中で何度も「主に相まみえる」。ベネデッタが 「神を見た」 かどうかは明確には語られないが、並の描写なら「少女が夢を見ただけ」、「妄想で嘘を言っているのだろう」というくらいにしか見えなくなってしまうところを、鬼気迫る演技で、「これ、もしかすると本当に・・・?」という気持ちにさせられた。
ホラー映画の主人公が「自分にしか見えない怪異」を表現するものにも似た、これはどこまでが妄想で、どこまでが真実なのか?と観客に惑わせるスリルだ。「信じる者は救われる」と人々は言う。だが、信じることが出来ない者は救われない、ということを示唆しているような不安にかられた。あんなことまでして、そんなラストを迎える彼女の人生を体験してみたいとは決して思わないが、彼女自身は本当に幸福だったのだろう、という揺るがない余韻が残る。「シスターフッド」という言葉では収まらない過激な性描写、残酷な拷問のシーンなど、どぎついものを孕みつつも、見終わって「いや、面白かった!」と満足する見ごたえであることを保証したい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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