チャレンジしてみたい役であり、ターニングポイントになった作品…『ひみつのなっちゃん。』滝藤賢一さんと渡部秀さんと田中和次朗監督を迎え舞台挨拶開催!
大切な友人“なっちゃん”の死をきっかけに集まった3人のドラァグクイーンが、彼女の秘密を守ろうとする姿を描く『ひみつのなっちゃん。』が全国の劇場で公開中。1月22日(日)には、大阪・難波のなんばパークスシネマに滝藤賢一さんと渡部秀さんと田中和次朗監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『ひみつのなっちゃん。』は、友人の死をきっかけに集まった3人のドラァグクイーンが織りなす珍道中を描いたヒューマンコメディ。ある夏の夜、新宿2丁目で食事処を営む元ドラァグクイーンのなっちゃんが急死した。友人のモリリン、バージン、ズブ子の3人のドラァグクイーンは、なっちゃんが故郷の家族にはゲイであることもドラァグクイーンをしていたことも隠していたと知り、慌ててなっちゃんの自宅アパートに忍び込んで証拠隠滅を図る。そこでなっちゃんの母・恵子と鉢合わせした3人はどうにかその場を誤魔化すが、恵子から葬儀に参列するよう誘われ、なっちゃんの故郷である岐阜県郡上市を目指すことになる。滝藤賢一さんが映画初主演を務め、渡部秀さん、前野朋哉さんとともに3人のドラァグクイーンを演じ、松原智恵子さん、カンニング竹山さんらが名を連ねている。田中和次朗さんが監督を務め、監修はエスムラルダさんが担当した。
上映後、滝藤賢一さんと渡部秀さんと田中和次朗監督が登壇。ほんわかとした空気感の中で賑やかな舞台挨拶が繰り広げられた。
コロナ禍により撮影できるどうか不安もあった本作。滝藤さんは「こうして皆さんにお届けできるのがとても幸せです」と感慨深げだ。お客様の熱意により関西での舞台挨拶を実施でき、3人はゆっくりとすることが出来ずとも、滅多にない移動手段を用いて楽しんでいた。
ドラァグクイーン役としてのオファーを頂き、滝藤さんは「僕はLGBTQ+ではないので、演じていいのか」と不安で田中監督とプロデューサーに何時間も話している。だが「物凄くチャレンジしたい役だったので、やりたかったですよね」と意欲的で「安心してチャレンジさせてもらえる。喜んで受けさせて頂きました」と真摯に引き受けた。渡部さんも「僕で良いのかな」と思い、躊躇しながらも話を重ねていき「自分もチャレンジしてみたい」と決断。「僕の役者人生においても、ターニングポイントになった作品でもあります」と受けとめている。田中監督は、お葬式に興味があり「お葬式の映画を撮りたいなぁ」と検討していた。「故人の為に見送る、という行為には優しが溢れているような気がします」と感じながらも「建前と本音が儀式の中であるなぁ」と複雑な気持ちを描くことに興味津々。その矢先、知人から、ドラァグクイーンだった方のお葬式の報せを受けると共に「彼らの仲間達も一緒に行くことになり、『ばれちゃったらどうしよう』と悩んでいた」と聞き、その旅について「こんな風な優しい旅になるのかなぁ。こんなことに悩むのかなぁ」と思い巡らせながら脚本を書いていった。
役作りにあたり、滝藤さんは「僕は、オードリー・ヘップバーンとマリリン・モンローにとても影響を受けた。アメリカのダイナミックでセクシーなモンローと、イギリスの気品や伝統のあるヘップバーンの動きや仕草や言い方はとても勉強になりました。何ヶ月も前から女性の仕草を真似ることから始めました」と明かし「自分に嘘ついていることが俳優は分かってしまう。馴染んで、しっくりくるまで。何も考えなくても、そういう動きが出来るまで。女性であんな人はいないだろうけど、あそこまでデフォルメしてやらないと男に見えちゃう」と説く。渡部さんも参考した方がいるが「知人に何人もLGBTQ+の方がいたり、(新宿)2丁目に通っていた時期もあったりするので、今までの経験から少しずつ様々な部分を取り入れていった」と説明する。
作中には、印象的なダンスシーンがあり、渡部さんは撮影の合間も練習に取り組んでおり「滝藤さんは習得されている、と伺っていた。後からダンス練習に合流したので、凄く焦りました」と懸命だった。滝藤さんは撮影現場に入る前にダンスの練習に取り組んでいたが「(ダンスの)撮影が一番最後だったので、忘れてましたね。一番キレの良い時は終わってましたね」と苦笑い。なお、登場人物の中では、渡部さんは「郡上で最後に出てきた女の子。僕も田舎出身で引っ込み系だったので、人に喋りかけるのも躊躇していたなぁ」と共感。滝藤さんは、スイカを食べていた菅原大吉さんを挙げ「あんなスイカの種の出し方初めて見た」と驚いていた。
ここで、お客さんからの質問タイムとなり、ヒールを履いてダンスすることについて聞かれ、渡部さんは「難しくて。履いているだけで足が疲れる。なおかつ、それでダンスというのが、途轍もなく初めてのチャレンジだった」と応えると、滝藤さんは「だんだん僕は(ヒールの高さが)低くなっていった気がする。あのドレスであの頭(ウィッグ)を付けて踊ったのは本番が初めてだったから、より大変だったかなぁ」と思い返す。そして、渡部さんは「ヒールは履き慣れていないと、前に体重がかかる。爪先がどんどん窮屈になっていく初めての経験だった」と話した。なっちゃんのお母さんとの対面シーンについて聞かれ、滝藤さんは「僕は、普段から女性、というタイプのLGBTQ+の方を選択しました。男性の部分が一つもない中で、男性を演じる。普段の滝藤賢一という男に戻って演じるのではなく、滝藤賢一が女性になった上で男性を演じる。頑張って男をやっているんだけど…みたいな感じだったのかな」と解説。渡部さんは「僕は端的に言うと、暴走です(冗談として)。モリリンとして、短絡的な間違った頑張りを表現したくて。短絡的な考えを可愛さと一緒に、変な頑張りを見せたかった。監督も半ば折れてくれて…」と苦笑い。さらに、両親にばれているなぁ、と思える秘密について聞かれ、滝藤さんは「僕、名古屋出身なんですけど。高校の時、塾に入る、と…名古屋駅前にある塾に入るのに100万円ぐらいかかった。信じられないでしょ。だけど、僕は名古屋駅の方に行くと、栄で遊べるから『入る』と行って、塾に100万円払ったんですよ。でも、1回か2回しか行かなかった。塾行っているふりして遊んでいた。親は知っていましたよね。でも、あまり何も言わなかった」とエピソードを明かす。渡部さんは「ここで言える話はありません」と言いながらも「高校生の時にコンテストに応募してデビューしたんですけど、最初は親に隠して自分で写真を撮って応募したんですけど、合格通知が来て親に言ったら、『隠れて応募していたの知っていたよ』と。そこから応援してくれて…」とあったかエピソードが。田中さんは「僕は秘密にしないから…」と避けていった。
最後に、田中監督は「(バージンさんが)スパークした瞬間に、皆さんそれぞれの人生を前向きに過ごして頂くといいなぁ、という思いがあり、この映画を制作しました。沢山の魅力的なキャラクターが出ていますので、キャラクターの話や様々なお茶の間での話、この映画を紹介して頂いて盛り込まれて頂ければ」とお願い。渡部さんは「大阪が本当に大好きです。役者人生の約半分ぐらいは関西で過ごさせて頂き、様々な方々に出会い、お仕事をさせて頂いた。1週間経ちますが、全国、世界に届くぐらい沢山の方に観て頂きたい胸を張っていける作品だと思っています」と応援を依頼。滝藤さんは「穏やかな気持ちになるような愛くるしいキャラクターばかりなので、優しい映画だと思います。すばる君も最後に素晴らしい歌を作ってくれた。気に入って2回3回観て頂けたら嬉しいです」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『ひみつのなっちゃん。』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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