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他人に恋愛感情を抱かない30歳の女性が自身のアイデンティティや幸せを発見していく様を描く『そばかす』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2022年12月19日

(C)2022「そばかす」製作委員会

 

他者に恋愛感情を抱かない主人公が“恋愛至上主義”の社会で、幸福を探す様を描く『そばかす』が12月23日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『そばかす』は、他人に恋愛感情を抱かない女性が周囲と向き合いながら自分自身を見つめる姿を描いたドラマ。30歳の蘇畑佳純は物心ついた頃から恋愛がよくわからず、いつまで経っても恋愛感情が湧かない自分に不安を覚えながらもマイペースに生きてきた。大学では音楽を志すも挫折し、現在は地元のコールセンターで苦情対応に追われる日々を送っている。妹が結婚・妊娠したこともあって母からは頻繁にプレッシャーをかけられており、ついには無断でお見合いまでセッティングされてしまう。そこで彼女が出会ったのは、結婚よりも友だち付き合いを望む男性だった。

 

本作は、『ドライブ・マイ・カー』の三浦透子さんが主演を務め、中学時代の同級生を前田敦子さん、同僚を北村匠海さん、妹を伊藤万理華さんが演じる。『his』のアサダアツシさんが企画・脚本を手がけ、劇団「玉田企画」主宰の玉田真也さんが監督を務めた。

 

(C)2022「そばかす」製作委員会

 

映画『そばかす』は、関西では12月23日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・烏丸御池のアップリンク京都や、神戸・三宮のkino cinema神戸国際等で公開。

「アセクシャル」や「アロマンティック」という言葉をご存じだろうか。一般的に他者に対して性的感情を抱かない人や指向をアセクシャル、他者に対して恋愛感情を抱かない人や指向をアロマンティックと呼ぶことが多い。もちろん、恋愛感情を抱くアセクシャルや性的感情を抱くアロマンティック、性的感情も恋愛感情も抱かないアロマンティック・アセクシャルもいて、定義された概念の中には多様なグラデーションが存在する。

 

『そばかす』の主人公である蘇畑佳純(そばたかすみ)の場合、性的感情も恋愛感情もないことからアロマンティック・アセクシャルに該当すると思われる。そして「恋愛して当たり前、結婚して一人前」という価値観が浸透した社会は彼女にとって息苦しくてたまらない。合コンで繰り広げられる恋愛トークや駆け引きには全然ついていけないし、結婚を急かしてくる母親も鬱陶しく感じてしまう。せっかく同じ価値観だと思った男友達から恋愛関係を求められてしまい、決定的に仲違いしてしまうことも日常茶飯事だ。佳純の気持ちや価値観はなかなか理解されない。しかし、人と関わり合うことをやめたい訳ではなく、むしろ好きなのだ。社会で生きていく以上、人との繋がりや関わりは絶対に付きまとう。誰かと関わり合う喜びと理解されない孤独は浜辺に打ち寄せる波のように寄せては返す。

 

きっと佳純のような秘めた気持ちを抱きながら社会を生きている人は多いのではないだろうか。しかし、誰も分かってくれないし、分かろうともしない。それでも私たちはこの世界を生きている。今作の存在が名もなき誰かにとって胸を張って誇れる証のようなものになるのではないだろうか。そして、佳純が過ごす何気ない日々の営みや彼女が感じる感情の機微がフィクションとは思えないほどリアルで繊細なものに見えるのは、卑近でどこか生々しい人間関係を描くのが上手い玉田真也監督の演出力とアサダアツシさんの丁寧な描写力、三浦透子さんの佇まいのおかげだろう。また、佳純と友人になる同じ中学校の同級生だった世永真帆を演じた前田敦子さんの擦れた存在感も印象的だった。

 

昨今、多様性やマイノリティを描いた作品が盛んに作られるようになってきている。しかし、アセクシャルやアロマンティックに関する作品となると途端に数が少なくなってしまう。登場したとしても脇役キャラクターの設定として存在を匂わされるぐらいだ。今作を皮切りにアセクシャルやアロマンティックを描いた作品がもっと増えることを願わずにはいられない。

fromマリオン

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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