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太平洋戦争後、没落貴族となった女性が道ならぬ恋に突き進んでいく姿が描かれる『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』がいよいよ劇場公開!

2022年10月31日

(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会

 

昭和20年の日本を舞台に没落貴族の母娘が生活のために地方へ居を移すも、弟の帰還により、結婚を迫られる姉を描く『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』が11月4日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』…

昭和20年。父を亡くした没落貴族のかず子と母・都貴子は、生活のために本郷西方町の家を売り、西伊豆へ引っ越すことに。そんな中、戦地で行方不明になっていた弟・直治が帰還するとの知らせが届く。歳の離れた資産家との結婚を勧める母に怒りを覚えたかず子は、6年前、まだ学生だった直治が師匠と仰いだ中年作家・上原との出会いを思い起こしていく。

 

本作は、太宰治の名作小説「斜陽」を、『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』『ふみ子の海』の近藤明男監督が映画化。名匠・増村保造監督の助監督を務めていた近藤監督が、増村監督と脚本家の白坂依志夫さんが遺した草稿脚本をもとに脚本を完成させた。今作が映画デビューとなるモデル出身の宮本茉由さんがかず子役で初主演を務め、母の都貴子を水野真紀さん、弟の直治を奥野壮さん、太宰が自らを投影した作家である上原を安藤政信さんが演じる。

 

(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会

 

映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』は、11月4日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや京都・二条のTOHOシネマズ二条などで公開。

太宰治による原作は太平洋戦争の敗戦直後にベストセラーとなった小説であるが、古典とも言えるこの作品をなぜ令和の時代に映像化したのであろうか。近藤明男監督は、その疑問に答えていた。

 

本作には、昭和の日本映画を鑑賞するような安心感を覚えるプロットがある。良くも悪くも伝統的で目新しさがないかもしれないが、不思議なほど古さを感じない。観客の目線が物語の中に今を感じるからだ。

 

敗戦による社会秩序の崩壊は、古きものを容赦なく没落させた。明日をも知れぬ今を生きるのに必死な人々で満ちた社会に、旧華族となった都貴子、かず子、直治は自らの没落を経験する。あるいは、戦後に売れっ子作家になった上原は時代の不安を紛らわすように彼を慕う人々と酒浸りになり、自己破壊的に堕ちていく。そんな彼らを観客は過ぎ去ったものと見なさない。もはや生活に余裕のある豊かな日本が過去となった今、斜陽に描かれる人々は我々の隣人となりうる。

 

旧時代を抱えて死んでいった都貴子や直治、新時代にのまれた上原と違い、かず子が至った「恋と革命」は没落の中の一握の希望であり、観客が自らの希望を照らし合わすことのできるメッセージだ。その意味で、近藤監督は過ぎ去ったものを再演したのではなく、斜陽の国の今を生きる我々に向けた物語に再構成している。

fromにしの

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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