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認知症を患う父が幻想として見る選ばなかった人生と、娘が直面する厳しい現実が交錯する『選ばなかったみち』がいよいよ劇場公開!

2022年2月21日

(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020

 

人の助けが無ければ生活もままならない、認知症の父親が、病院へ連れ出そうとする娘の横で、自身が辿ってきた人生を振り返る『選ばなかったみち』が2月25日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『選ばなかったみち』は、認知症を抱える父の幻想と彼を介護する娘の現実を交差させながら描いたヒューマンドラマ。ニューヨークのアパートでひとり暮らすメキシコ移民の作家レオは認知症を発症しており、誰かの助けなしでは日常生活もままならず、娘モリーやヘルパーとの意思疎通も困難な状況にあった。ある朝、モリーはレオを病院に連れて行くためアパートを訪れる。レオはモリーが隣にいながらも、初恋の女性と出会った故郷メキシコや、作家生活に行き詰まり一人旅をしたギリシャへと、心の旅を繰り広げる。

 

本作では、ハビエル・バルデムとエル・ファニングが父娘役で初共演。『耳に残るは君の歌声』などのサリー・ポッター監督が自身の弟を介護した経験をもとに、自ら脚本を執筆しメガホンをとった。『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』のローラ・リニー、『フリーダ』のサルマ・ハエックらが共演者に名を連ねている。

 

(C)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020

 

映画『選ばなかったみち』は、2月25日(金)より全国の劇場で公開。関西では、2月25日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都、3月4日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

『ファーザー』や『スーパーノヴァ』など、認知症をテーマにした映画が多い昨今。自分を構成する何かが抜け落ちていく不安や変化を受け止める辛さは誰にでも起こりうる切実な問題だからこそ、多くの映画作家達が語りたくなるのだろう。今作の出発点も若くして認知症になった弟を介護し、最期を看取ったサリー・ポッター自身の経験から始まっている。そして、彼女は人生に付きまとう選択や後悔について認知症患者の視点を通じて思考を巡らせていく。

 

認知症になった父と彼を支える娘が見ている世界は違っている。娘の目の前には自分を認識しているのか分からなくなった父が存在し、日々の生活に苦心するばかり。一方で、父は過去に選ばなかった選択を幻視する。もしもあの時違う選択をしていていたら、今とは違う人生だったかもしれない。あの時もっと自分と向き合っていたら、後悔はなかったかもしれない。父は薄れゆく記憶の中で「もしも」に縋る。しかし、娘が父の過去や後悔に気づく事は永遠にないのだ。過去と現在を彷徨う父を演じるハビエル・バルデムと父の介護に疲弊していく娘を演じるエル・ファニングの姿を見ているとなんともいえない気持ちになる。それはいつか訪れるかもしれない未来の光景だ、と観客は分かっているからだ。

 

誰もが多かれ少なかれ「もしも」を夢想する。人生は選択の連続だ。父が見つめる過去と娘が歩む未来には普遍的な人生の摂理が詰まっている。人生何が起こるか分からない。ならばせめて後悔しないような選択を選びたいものだ。

fromマリオン

 

高齢化が進み、今や誰しもが、他人事ではなくなりつつある、認知症。本作はサリー・ポッター監督自身の経験をもとに描き起こされ、ハビエル・バルデム、エル・ファニングの二人の名演が作品の解像度を更に上げてゆく。今作で、認知症を患う父であるレオが朧げに見ているのは、人生で選択しなかったifの世界。決して、薔薇色のものではなく、何処か哀しげな世界線は、とても儚い…また、父が何を考えているのか理解に苦しみつつも、家族として、娘として、父を思い、支えるモリーの現実パートも、とてもリアルに描かれている。

 

現在、認知症を患い、家族の名前も自分の名前も解らなくなってしまった祖父がいる小生としては、この映画を観て、あらためて認知症について、考えさせられた。そして、そんな祖父も、ifの世界を覗いているのかも知れない。

from関西キネマ倶楽部

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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