親に頼ることができず自分たちで成長していかなくてはならない15歳の姉と11歳の弟の家族を描く『スウィート・シング』がいよいよ劇場公開!
(C)2019 BLACK HORSE PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED
突然頼る大人のいなくなった子供たちふたりが、家を出て行った母のもとへ向かう旅路を描く『スウィート・シング』が10月29日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『スウィート・シング』は、頼る大人をなくした姉弟の悲しくも希望に満ちた旅路を、16ミリフィルム撮影による美しいモノクロ&パートカラー映像で描いたファンタジー。マサチューセッツ州ニューベッドフォードで暮らす15歳の少女ビリーと11歳の弟ニコ。一緒に暮らす父アダムは普段は優しいが酒のトラブルが尽きず、ある日ついに強制入院させられることに。他に身寄りのない姉弟は、家を出ていった母イヴの元を目指すが…
本作は、『イン・ザ・スープ』『フォー・ルームス』などで知られるアレクサンダー・ロックウェル監督が手掛けた。監督の実子ラナ・ロックウェルとニコ・ロックウェルが主人公の姉弟を演じ、監督のパートナーであるカリン・パーソンズが母イヴ役、『ミナリ』のウィル・パットンが父アダム役を務めた。2020年の第70回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で最優秀作品賞を受賞。第33回東京国際映画祭「ユース」部門では『愛しい存在』のタイトルで上映されている。
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映画『スウィート・シング』は、10月29日(金)より全国の劇場で公開。関西では、10月29日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。また、11月12日(金)より、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸でも公開。
アメリカのインディーズ映画界で尊敬を集める監督の1人であるアレクサンダー・ロックウェル。日本では、『イン・ザ・スープ』以来、25年ぶりの長編作公開となる。制作スタッフには、自身が教えるニューヨーク大学大学院ティッシュ芸術学部の学生達が集う。製作にあたり、自己資金とクラウドファンディングによって集めている。創作における自由度を維持するため自主制作の作品として徹底していた。また、キャスティングでは、自主制作ならではの逸材を起用。監督の実の娘と息子が主人公として共演、母親役には監督の実際のパートナー。身近にいる人間の才能を見出す能力に長けている、とも感じた。
作中では、大人になろうとしてなりきれない子ども達の目線を大事にしたカメラアングルで描写されている。突如、親の不在という過酷な状況に追い込まれても、自分達が生きる世界に対して自由と希望を抱いて飛び出そうとしていく姿を瑞々しく描いていた。また、近所の少年と出会う、という何気ない出来事に意味を持たせている。お互いにとって未知の人間と出会い、新たな世界の扉を開く鍵となっていく。まさに素晴らしい体験である。しかし、旅の行く末はあまりにも切ない。だが、観た者が希望を見出すことが出来てこそ本作は完成する、と云えようか。モノクロを中心にした画の中にある煌びやかを感じながら拍手を送りたい。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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