多くの被災者の声に耳を傾けながら「心のケア」に奔走する精神科医を描く『心の傷を癒すということ《劇場版》』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)映画「心の傷を癒すということ」製作委員会
阪神淡路大震災の際、自らも被災しながら被災者の人々に寄り添い心のケアに奔走した精神科医の姿を、実在の人物をモデルに描く『心の傷を癒すということ《劇場版》』が2月12日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』は、阪神・淡路大震災時、被災者の心のケアに奔走した実在の精神科医である安克昌さんの著書「心の傷を癒すということ 神戸…365日」を原案にしたNHKドラマ「心の傷を癒すということ」の劇場版。2020年1月から放送されたテレビ版全4話を再編集した。安和隆は自身のルーツが韓国にあることを幼少時に知って以来、自分は何者なのか模索し続けてきた。やがて人の心に関心を持つようになった彼は、父に猛反対されながらも精神科医の道へと進む。映画館で出会った終子と結婚し、第一子も生まれて幸せな日々を送っていたある日、神戸の街を大震災が襲う。和隆は避難所で被災者たちの声に耳を傾け、心の傷に苦しむ人々に寄り添い続ける。
本作では、和隆を柄本佑さんが演じ、終子役で尾野真千子さんが共演。和隆の両親を石橋凌さんとキムラ緑子さん、兄を森山直太朗さん、弟を上川周作さんが演じた。そのほか濱田岳さん、浅香航大さん、清水くるみさん、濱田マリさん、谷村美月さん、近藤正臣さんもキャストに名を連ねている。
(C)映画「心の傷を癒すということ」製作委員会
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』は、関西では2月12日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸やOSシネマズミント神戸など各地の劇場で公開。
在日韓国人として日本や韓国で生きていくことがどれだけ大変であるか、を思い知らされる本作の前半。父親に認められないと将来の道を決められない、かのように育てられる厳格な家庭。そんな環境なら思い切って家を飛び出したくなってしまう。だが、和隆は自身のアイデンティティに悩んだ上で、人間の心を理解しようとする道を志す。父親に理解されずとも自らの道を切り開いていった強い意志には心打たれてしまう。思春期に親の理解を得ようと何度も説得した出来事が私自身にもあったことをふと思い出してしまった。
そして、1995年の阪神大震災。報道では決して伝えられない出来事が避難所で起きていたことを、救援のために現地を訪れた方から聞いたことがある。人間の根本的な欲求を端的に表した出来事が起きていたことを知り、人によっては、精神状態が極限に追い込まれても仕方がない、と痛感してしまう。この頃からPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が日本でも挙げられるようになった。私自身、阪神大震災と東日本大震災の両方を体験しているが、その後しばらくは少しの揺れでも敏感に反応してしまう体に…寝ていても、血の巡りや脈拍だけでも揺れと錯覚してしまう。本作に出てくるような不安に襲われ眠れなくなってしまった方には共感せざるを得ない。そんな方々に寄り添い。治療や研究に勤しんだ安先生がいたことを伝えるドラマが放送され映画にもなったことを心の底から大いに称えたい。「心の傷を癒すということ」というシンプルで中身がしっかり伝わってくるタイトルも素晴らしいと思える一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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