貧しい船乗りの青年が作家になる夢に向かって突き進む『マーティン・エデン』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE
貧しい暮らしの中で育ちながらも、文学の夢を追う青年の夢と挫折を鮮烈に描き出す『マーティン・エデン』が、9月25日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『マーティン・エデン』は、ハリソン・フォード主演で映画化された冒険小説「野性の呼び声」などで知られるアメリカの作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、イタリアを舞台に映画化。イタリア・ナポリの労働者地区に生まれた貧しい船乗りの青年マーティンは、上流階級の娘エレナと出会って恋に落ちたことをきっかけに、文学の世界に目覚める。独学で作家を志すようになったマーティンは、夢に向かい一心不乱に文学にのめり込むが、生活は困窮し、エレナの理解も得られることはなかった。それでも、さまざまな障壁と挫折を乗り越え、マーティンは名声と富を手にするまでになるが…
本作は、2019年ベネチア映画祭のコンペティション部門に出品され、主人公マーティンを演じたルカ・マリネッリが男優賞を受賞。そのほか、イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・デ・ドナテッロ賞で脚色賞を受賞するなど高い評価を獲得している。
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映画『マーティン・エデン』は、関西では9月25日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸の京都シネマ、10月2日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
映画も今年公開された「野生の呼び声」を書いたアメリカの文豪、ジャック・ロンドンによる自伝的小説「マーティン・エデン」をイタリアを舞台にして映画化された本作。ジャック・ロンドン自身が工場労働やアザラシ漁船の乗組員等をしていたため、まさに忠実に描いた自伝的映画とも受け止められる。無学の青年が、ブルジョワの文化と教養に触れ、世界を知り、内に秘めていた文学への関心を覚醒させていく。まさに根拠なき自信に満ち溢れたモラトリアムを過ごしていった。時代や国は違えど、多感な青春期に多様な文化に触れ、自分は何か大きなことを実現できると思い描いたことがあるながら、誰もがマーティン・エデンに共感を覚え、応援したくなるだろう。だが、執筆した作品は不採用となり返送されてくるのみ。誰しもが経験する挫折はマーティンにも立ちはだかる。ジャック・ロンドン自身も同様に経験しているのだろう。映画化されたことをどのように思っているのか、勿論不可能だか生きていたら是非聞いてみたい。
誰の理解も得らず孤立無援状態になっても、ひたすら執筆し続け、どうにか良き友に出会い、しばらくの生活費程度になる原稿料と共に採用通知が届けられる。僅かな光が見えたが、また社会の荒波に揉まれていく。やはり孤高の文豪となっていく人物はいつの世も苦悩がつきまとってしまう。富と名声を得て不自由なく生活できるようになったとしても、返って虚無感だけが残っていく。向かい風こそが自らを奮い立たせ、絶望の中にある希望を見出す。作家を志す青年の物語だけに収まらない普遍的な人生の醍醐味が込められた作品である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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