秘密警察が迫り来る…気球で西ドイツに亡命しようとした家族描く『バルーン 奇蹟の脱出飛行』がいよいよ劇場公開!
(C)2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH
特殊な技術を持たない平凡な一般市民が、国家の裏切り者として逮捕されるリスクを負いながら、熱気球で東ドイツを脱出する姿を描く『バルーン 奇蹟の脱出飛行』が、7月10日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『バルーン 奇蹟の脱出飛行』は、東西冷戦下の東ドイツを舞台に、手作りの熱気球で西ドイツへの亡命を目指す家族の脱出劇を、実話をもとに描いたサスペンスドラマ。1979年、東ドイツで抑圧された日常を送る電気技師ペーターとその家族は、手作りの熱気球で西ドイツを目指すが、国境まであと数百メートルの地点に不時着してしまう。準備に2年を費やした計画の失敗に落胆するペーターだったが、家族の後押しもあり、親友ギュンターの家族も巻き込んで新たな気球作りに着手する。ギュンターが兵役を控えているため、決行までのタイムリミットはわずか6週間。不眠不休の作業を続ける彼らに、秘密警察の捜査の手が迫る。
本作には『ルートヴィヒ』のフリードリヒ・ミッケ、『愛を読むひと』のデビッド・クロス、『戦場のピアニスト』のトーマス・クレッチマンらが出演。『小さなバイキング ビッケ』のミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ監督がメガホンをとった。
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映画『バルーン 奇蹟の脱出飛行』は、7月10日(金)より大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都・二条のTOHOシネマズ二条、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸をはじめ全国の劇場で公開。
1945年から1989年にベルリンの壁が崩壊されるまで、616,066人が東ドイツから西側へ移住した。壁際で殺された人は136(138)人。現在に至っても死者数は更新され続けている。本作の舞台は、まだドイツが東西に別れていた1979年の東ドイツ。密かに西ドイツへ脱出しようと計画している家族がいた。1度目は失敗、その代償は死へのカウントダウン。しかし2度目のチャンスがまだあった。追い詰めていく秘密警察シュタージが家族を先に見つけるか、家族がバルーンを飛ばすのが先か。
自然だが手が込んだ詳細な演出、一人一人の役者による臨場感溢れる演技によって、この脱出が史実だったと納得させる。始まりから終わりまで1秒たりとも見逃せない仕上がり。息子が恋に現を抜かしているだけで怒号を飛ばすほど父は逃亡へ拘る。”自分が殺されるかもしれない”という恐怖から自発的にシュタージへ協力する市民もいれば、当然歯向かう人もいた。当時の東ドイツの人々がどれだけ虐げられていたのか想像するのは難しくない。
そもそもなぜ、彼らは東ドイツを脱出しようとしたか。遡ること1945年、ナチス・ドイツが崩壊した後、旧ソ連と連合軍(イギリス・アメリカ・フランス)の各国がドイツを領地にした。1948年、社会主義を採択した東側(ドイツ民主共和国)と資本主義を採択した西側(ドイツ連邦共和国)が個々の国として成立してしまう。西ドイツが経済成長で豊かになったおかげで、東ドイツから人が流れるようになった。東ドイツは制限が厳しく、日々不満が溜まるばかり、優秀な人材は西へ行きたがる。彼らは旧ソ連国の統制から逃げることしか出来なかった。生きるため、自由になるために逃げた。
史実を扱う映画は見る人を惹きつける力を持っている。フィクション映画とは別ものだ。キービジュアルを見た時、熱気球のカラフルさが目を引いた。隠れて飛ばなきゃいけないなのになぜわざわざ目立つような熱気球なのか、観てからのお楽しみ。
from君山
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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