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当事者が当事者を演じ直し、リアリティを探究した…!『解放区』太田信吾監督に聞く!

2019年10月30日

ドキュメンタリー作家になることを夢見る映像作家の青年の姿を通して、西成区・釜ヶ崎という町とそこに息づく人々の生き様を映し出す『解放区』が関西の劇場でも11月1日(金)より公開される。今回、太田信吾監督にインタビューを行った。

 

映画『解放区』は、自ら命を絶った友人のミュージシャンを正面から描いたドキュメンタリー『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を監督し、俳優としても活躍する太田信吾さんの初となる長編劇映画。日本最大のドヤ街とも言われる大阪・西成区の飛田新地やあいりんセンター、三角公園などでロケを敢行し、そこに息づく人々の姿を描いた。ドキュメンタリー作家になることを夢見ながら小さな映像制作会社に所属するスヤマは、引きこもり青年の取材現場で憤りと正義感から先輩ディレクターに反抗したことで、職場での居場所を失ってしまう。かつて大阪西成区釜ヶ崎で出会った少年たちのその後を追う企画を立ち上げたスヤマは、まるで自分の新たな居場所を探すかのように単身釜ヶ崎の地を訪れる。しかし、釜ヶ崎で天性のクズぶりを露呈してしまったスヤマは、一夜をともにした女から所持金を奪われてしまう。唯一の理解者である彼女とも連絡が取れなくなってしまったスヤマは、釜ヶ崎という町が持つ深い闇へと足を踏み入れていく…

 

前作を経て「フィクションには現実をポジティブに変える力がある」と気づいた太田監督は、現実の出来事をベースにした劇映画である本作を制作した。「人は演技をすることで自身を俯瞰する。自意識に雁字搦めになった精神状態を解して、違う場所に行く作用があるんじゃないか」と考え、フィクションの力に可能性を感じており「現実にネガティブな状況にいる人に使ってほしい」と躍起になっていく。今作では、引きこもっていた青年を連れ出して大阪の街を彷徨っており「フィクションがどのように作用していくか」と探究した。

 

これまでの経験から「演技を作ろうとしても、その人のパーソナリティや個性は出てきてしまう。それらを全て活かした上で、フィクションを加えることで映画は豊かになる」と感じ取り、特に今回は「職業俳優が映画の全てを担おうとすると、描けない世界がどうしても生じてしまい、ディテールに乏しくなってしまう」と危惧していく。そこで「土地に詳しい人が映画が描く世界を広げていくのが良い。今回は、当事者が当事者を演じ直すやり方を採用しました」と明かす。あくまでも本作は、劇映画であるため、一線は超えないように撮影している。だが「いくら想像しても、当事者じゃないと描けないものがある」と考え、メディアに対する問いかけをするためにも「無知なまま体験もせず、画だけ撮って簡単に公開できてしまう時代に、一度、自分の体を通して経験を以て語ることで、言葉や表現に重みが出てくるんじゃないか」と観る者に問いかけた。

 

本作では、人間の弱さについて描こうとしており、ろくでもない主人公を太田監督が自ら演じている。人間は誰しも危うい側面を持っている、と考え「人生は、ほんの些細な出来事で転落してしまう。街にはセーフティーネットが確立されている部分があり、その中で主人公は生きていける」と気づいていく。西成の街をしっかり描こうとした時に「外から来た人が大半を占めているあいりん地区で、辿り着いた男を段階的に描写していきたい」と切望し、人間の弱さを抱えているキャラクターを登場させていった。また、日雇い労働の現場も描かれている。リアリティを出すために、数日間は撮影を中断しスタッフ皆で実際に働いた。現場に馴染んできた時にカメラを回し始めたが、現場の危険さを身に染みて感じる撮影となり「想像を超えていく瞬間がある映画を撮ってるな」と実感。数日だったが「怪我をして働けなくなり、酒浸りになり覚せい剤にまで手を出すことはリアルにあり得る」と受けとめざるを得なかった。

 

作品の編集が終わった頃、行政から10か所程度を削除してほしいという通達を受けてしまう。そもそも事前に脚本は出しており「ドキュメンタリータッチでリアリティを重んじた映画作りをする」と伝え、企画は通っていた。シネアスト・オーガニゼーション大阪 (CO2)が全て企画を採択しており、本来はCO2がOKならば問題ない。行政についも同様だと認識していたが「CO2が脚本を確認したら報告を上げて頂いたはず。役所の方は見ていなかったようで、編集終了の段階で伝えてきた」と告白。結局、西成と分かる描写、ドラッグ、統合失調症の件を中心として偏見に繋がるとみなされ、大阪アジアン映画祭での上映がNGとなった。その後、助成金を返還し、長らく一般公開がされてこなかったが、今回ようやく劇場公開となる。

 

徹底的にリアリティを求めた劇映画を制作した太田監督は、今後も映画制作を止めるつもりは毛頭ない。現在、福島県いわき市を舞台にした原発事故を受けた家族の劇映画や、沖縄・西表島で密猟をテーマにした映画を考えており、未来に目を輝かせていた。

 

映画『解放区』は、11月1日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、11月2日(土)より、京都・出町柳の出町座で公開(共に初日舞台挨拶あり)。また、11月15日(金)より、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋(11月17日(日)に舞台挨拶あり)、11月16日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場、神戸・元町の元町映画館で公開(共に初日舞台挨拶あり)。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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