生きづらさや思いを形にしたかった…『シスターフッド』兎丸愛美さんと西原孝至監督を迎え舞台挨拶開催!
フェミニズムをはじめとした“多様性を肯定すること“をテーマに、東京に住む若い女性たちの人間関係と人生の決断を描き出す『シスターフッド』が、7月20日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。初日には、兎丸愛美さんと西原孝至監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『シスターフッド』は、生きづらさを抱えた女性たちが探し求めた自分らしさを描いていく実験的作品。フェミニズムを題材にしたドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っているドキュメンタリー映画監督の池田。ある日、池田はパートナーのユカから母親の介護をするため、母が暮らすカナダに移住することを告げられる。友人の大学生・美帆に誘われて池田の資料映像用のインタビュー取材に応じるヌードモデルの兎丸は、自身の家庭環境や彼女がヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。独立レーベルで活動を続ける歌手のBOMIが語る言葉に触発される池田。さまざまな人間関係が交錯し、それぞれが人生の大切な決断を下していく。
学生団体「SEALDs(シールズ)」に密着した『わたしの自由についてSEALDs 2015』、目と耳の両方に障害のある「盲ろう者」の日常を追った『もうろうをいきる』などのドキュメンタリー作品を手がけた西原孝至監督が、ドキュメンタリーと劇映画を混在させる手法とモノクロの映像を用いた。
上映後、兎丸愛美さんと西原孝至監督が登壇。今年の第14回大阪アジアン映画祭以来の再会となり、大いに語り合った。
本作は、西原監督が2015年に撮影を始め、低予算で個人的に制作してきた。普段は、TVドキュメンタリー制作に関する仕事をしており「東京で暮らしている様々な職業の女性達の生き方や人生や仕事に対する思いをドキュメンタリーとして制作したい」と思いを持って取り組んでいる。1人の女性だけを追いかけるのではなく、複数の女性が歩んできた人生について、写真を撮るように淡々と描く映画として企画し、兎丸さんやBOMIさんにもオファーしていく。他作品の撮影があり、中断することもあったが、撮影を続けており、兎丸さんも作品の完成を楽しみにしてきた。
その後、月日は流れ、MeToo運動やWoman’s March(女性たちの行進)が行われ、現代は女性の権利が叫ばれている。日本でも理不尽な女性差別があり、西原監督は、本作について考え続けていた。昨春、ドキュメンタリーにフィクションの追加撮影を行い、混ぜ合わせてようやく完成に至る。4年前に撮影が始まったが、兎丸さんは当時に撮られていた記憶があまりなかった。だが、当時の感情や気持ちが甦り、昨夏に行われたドラマパートの収録に参加し「4年前から変化していた。成長記録を残してもらって良かった」と感謝している。
今作をパーソナルな映画にしたかった西原監督は、撮影しながら「撮らせて頂いた兎丸さんをはじめ、出演して頂いた女性の生き方や思いが繋がって見てもらえたら、映画として成り立つ」と考え、自身の思いを詰め込んだ。同時に、現代女性の生きづらさを考えていくなかで「結局、男性だけや女性だけに限った問題ではない。女性が生きづらさを感じていたら男性も感じている。生きていると様々な理不尽を感じている。現代社会では男性より女性の方が圧倒的に感じている」と受けとめ、今回は女性に拘って撮っている。
兎丸さんは、作中のインタビューで女性としての生きづらさを聞かれたが「上手く答えられなかった。女性としての生きづらさは無かったけど、人間としては沢山ある」と冷静に鑑みた。西原監督は、今作に対し「1人1人の生きづらさや思いを形にしたかった。映画という表現を通して、観てくれた人の中でその思いが広がってくれたら」と願っている。また、作品作りに対しても「お客さんの心に残る時間が大切。長い時間をかけて観てもらえる作品を作りたい」と考えるようになった。本作について「2018年から2019年にかけて東京で暮らしている女性達はこういう思いを抱えているということを残せて良かった」と満足している。兎丸さんは「映画を観る時、体調や感情によって良し悪しが決まりませんか。西原さんのように女性の生きづらさに対して感情を持っている人が観たら変化するんじゃないかな」と期待を寄せていた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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