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希望のモチーフとして光が存在している…『オーファンズ・ブルース』工藤梨穂監督を迎え舞台挨拶が開催!

2019年6月17日

記憶が徐々に欠落していく病を抱える女性が、行方不明の幼馴染を探しに旅に出る姿と彼女の心の葛藤を繊細に描き出す『オーファンズ・ブルース』が関西の劇場でも6月15日(土)より公開。初日には、工藤梨穂監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『オーファンズ・ブルース』は、失われゆく記憶に苦悩しながら幼なじみを探す女性の旅路を描き、ぴあフィルムフェスティバル2018グランプリを受賞したロードムービー。夏が永遠のように続く世界で生きるエマ。記憶が欠落する病を抱える彼女は、常にノートを持ち歩いて些細なことでもメモをしている。そんな彼女のもとに、行方不明の幼なじみヤンから象の絵が届く。消印を手がかりにヤンを探す旅に出たエマは、ヤンの弟バンら関わりのある人々に出会う。しかし旅が進むにつれ、エマの記憶の欠落は加速していき……。主演は『赤い玉、』『クマ・エロヒーム』の村上由規乃さん。

 

上映後、学生時代の恩師でもある、映画批評家の北小路隆志さんを司会に迎えて、工藤梨穂監督が登壇。本作の理解を深められる舞台挨拶となった。

 

☆本作の着想について

北小路さん:

彼女が卒業制作として完成させ、合評会では教員や学生達が観て意見や質問が挙がりました。自分が担当しましたが、ある程度は評価できる映画だと思いました。出発点として勝負できる映画になった感触があった。こちらの期待を超えるかたちで、ぴあフィルムフェスティバルのグランプリをはじめ、評価を頂き、劇場公開が出来た。我々としては、とても喜んでいる。
卒業制作で映画を制作するにあたり、どのようにして着想していったんでしょうか。

工藤監督:

私自身、ロードムービーが凄く好きです。卒業制作では絶対にロードムービーを撮りたいと思っていました。当時、寺山修司さんの『ひとりぼっちのあなたに』を読み、「夏は終わったのではなく、死んでしまったのではないだろうか?」という一節が良いなと思い、着想点になり、誰かを探しに行く話にしようと思いました。
季節を擬人化することを考えたことがなかった。私にとっては衝撃的で影響を受けた。最初は、風とか夏とか海とかのエレメントに関する話でした。それだと映像として想像しにくいと指摘を受け、様々な経緯を経てこの物語に辿り着き、本作を作りました。

 

☆本作の座組について

北小路さん:

僕等からすれば、映画の作り方は学生たちの方がよく知っている。撮り始める前や撮り終えた後の編集で指摘したりする程度で、現場は任せている。良い座組で作り上げられ、成功に至ったと思う。

工藤監督:

在学中の私は、監督した以外の作品で制作部や録音部をやっていた。同期のスタッフがどんな仕事をしているか見ており、この人だったらセンスが良いと3年間で考え、スタッフもキャストも私がオファーし入ってもらった。

北小路さん:

主演の村上由規乃はどの辺りに魅力を感じたの?

工藤監督:

私はこの作品の前に短編を撮っています。彼女に主演をしてもらった初タッグ作品では、映画に対する感覚や考え方が合致した。彼女の演技が好きで、顔が好きだ。他にも良い顔だなと思った人に声をかけている。彼女とは企画段階からずっと話しており、追加シーンの良い提案があれば取り入れ、編集も一緒に立ち会ってくれた時があった。

 

☆本作のテーマについて
北小路さん:

スペインの映画祭に行ったそうですね。

工藤監督:

上映前後に挨拶をしました。その際に、本作の”光”に注目してくれる方がいました。「この映画では光がどういう要素を持っているのか」と聞かれ「この映画の登場人物達の希望のモチーフとして光を取り扱いました。照明部の子とCDを使ったテストをしながら、虹の光も含めて考えました」と応えました。

北小路さん:

以前、テアトル新宿で村上由規乃さんと喋った時、彼女から役作りについて聞いた。
通常、物語が進むにつれて登場人物は成長していく存在としてストーリーを理解できる。本作では、主演の女の子が記憶を無くしていく設定にしている。村上由規乃さんは、次第に自分が子どもになっていく役だと把握して演技していると聞いた。監督は狙いを以て決めたことでしょうか?

工藤監督:

エマが持つ記憶を失っていく設定にはアルツハイマー型認知症を参考にしています。私の祖母がアルツハイマーでした。彼女の言動を見ていると、自身が好きだった時代に戻っていく。映画では、エマは3人で一緒にいた時間に戻れないけど、戻ろうとしている。ヤンに会いたいのはそういう意味も含んでいる。幼くなっていくように演じる共通認識を以て取り組んできました。

 

映画『オーファンズ・ブルース』は、今後、7月13日(土)からは、大阪・十三のシアターセブンで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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