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『氷上の王、ジョン・カリー』高橋大輔さんを育てた長光歌子さんを迎えトークイベントが開催

2019年6月9日

バレエのメソッドを取り入れた演技でオリンピックで金メダルに輝いた伝説のフィギュアスケート選手、ジョン・カリーのドキュメンタリー『氷上の王、ジョン・カリー』が、全国の劇場で公開中。6月9日(日)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に関西大学アイスアリーナコーチの長光歌子さんを迎え、トークイベントが開催された。

 

映画『氷上の王、ジョン・カリー』は、イギリスの男子フィギュアスケート選手でオリンピック金メダリスト、ジョン・カリーのドキュメンタリー。バレエのメソッドを取り入れた演技により、1976年インスブルック冬季五輪のフィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得したジョン・カリーだったが、マスコミによって本来表に出るはずのなかったセクシャリティが公表されてしまう。まだ同性愛が差別されていた当時、ゲイであることが明らかになったメダリストの存在は世界を驚かせ、論争を巻き起こすが、それでもカリーの華麗な滑りは人々を魅了し、後進にも大きな影響を与えていく。アイススケートを芸術の域まで高めたと言われるカリーのアスリートとしての姿はもちろん、栄光の裏にあった孤独や、病魔との闘いなど知られざる光と影を、アーカイブ映像や関係者へのインタビューなどを通して明らかにしていく。
ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロらスケート関係者も登場し、『パンターニ 海賊と呼ばれたサイクリスト』のジェイムス・エルスキンが監督を務めた。なお、日本公開版では、2014年ソチ冬季五輪にも出場した元フィギュアスケーターの町田樹さんが字幕監修および学術協力を担当している。

 

上映後、長光歌子さんが登壇。選手時代から追いかけていたジョン・カリーさんの熱く語るトークイベントとなった。

 

本作を鑑賞した長光さんは「ジョン・カリーさんの素晴らしいスケーティングを改めて見せて頂いて、大変感動しました」と語る。特に「札幌・インスブルックのオリンピックは一人の観客として同じ会場で彼のスケーティングを観たんですが、その後、プロとして一度も私はジョンさんのスケーティングを観ておらず、その素晴らしさに、もう一度観ておいた方は良かった」と残念がっていた。

 

札幌オリンピック当時の長光さんは選手で、女子の練習を観に行くことを目的として、10日前から現地入りし毎日観戦する日々。だが、男子の練習を観始めたら楽しくて仕方がなぃく、次第に男子の追っかけになっていた。特に、ジョン・カリーさんとカナダのトーラー・クランストンさん、ケネス・シェリーさんとジョン・ミーシャ・ペトケビッチさんの4人が強く印象に残っている。それまでフリースケーティングはコーチから「手の平は氷面に水平にしなさい」と言われていた。「彼が少年時代に優雅に滑り何もかも得意げにやっていたのに、全て禁じられて、男らしく滑りなさい、と言われていた頃は、手の平を水平にさせられていた」と解説。「長野五輪の際には、自然な手の動きがあり、驚いた。ジョン・カリーさんとトーラー・クランストンさんが常識を覆した。トーラーさんはコンテンポラリーな志向、ジョンさんはクラシカル・バレエを踏まえている」と添えた。

 

インスブルックでは表現力が鍛えられており「コンパルソリーもフリーも完ぺきな状態だった。4年間努力されていた」と本作を映画を観て納得。ジョン・カリーさんがイギリスにいた頃は、一般のスケートリンクで環境も良くなく、営業前の朝早い時間や営業後の夜遅い時間に練習する日々だったが「コンパルソリーが上手くなるには足らないぐらいの練習だったんじゃないか」と推測。その後、アメリカ・コロラドに移り「良いコーチとスポンサーとリンクで2年間を幸せな時間を過ごせた」と一安心した。奇跡の6分間と呼ばれる演目『ドン・キホーテ』では「失敗しそうに見えないフリー、ジャンプとスピンのエレメンツの間のつなぎが自然で曲に合っており、ジャンプを飛ぶための滑走ではない。無駄がなく意味がある。男性選手として芸術作品だと思わせたのはジョン・カリーさんとトーラー・クランストンさんが最初」だと絶賛する。

 

札幌オリンピックで観た男子スケートについて、長光さんは「皆さんが個性的でしたが、女子に比べて体力が優れているので、滑走するスピードが速く、ジャンプも高い。体力が高い領域で踊る素晴らしさに魅せられた」と感激。「年を経ることに男子フィギュアが楽しくなってくる。こんなに踊れる男子選手を教えたいなと思い、コーチになるきっかけが出来た」と明かす。

 

長年コーチをしている高橋大輔選手とは、当初は急なピンチヒッターとして担当。「彼の振り付けをしなければならなくなり、編曲する時間もなかった、以前の先生から頂いた『ワルソーコンチェルト』という素晴らしくて大好きな曲だったんですが、聞いた時に中学2年生の倉敷の少年が出来るわけがないと正直思った」と告白。だが、練習を始めると「次第に彼の演技が膨らんでいく。私のアイデアも膨らむ。普通、女性の私が踊ってみせると恥ずかしくて出来ないことが多い。でも、彼はイキイキとしており、踊るプログラムを欲しがっていた」と気づく。お互いに楽しく練習でき「『ワルソーコンチェルト』を自分の体から流れているのかと思うぐらい自分のものにしていた」と感心する。以前、高橋選手は「ジョン・カリーさんを観て、影響を受けました」とよく言っていたが、長光さんは高橋選手に映像を見せたことはなかった。「ビートルズ・メドレーでローリー・ニコルさんに会いに行った時に『彼は素晴らしいスケーティングをするからこれを見なさい』と『After All』をYouTubeで見せてくれた。私も映像を初めて見て、スケートの基本的な動きで繋いでいく素晴らしい7分間だった」と振り返る。

 

なお、特に印象に残っている演目として『牧神の午後』『TANGO TANGO』を挙げた。『TANGO TANGO』について「バレエではなくスケートで別世界を表現できる。足や体の締め方もバレエがしっかり出来上がった上での動かし方なので素晴らしい。毎日の努力を積み重ねた結果」だと絶賛。さらに「天才の彼を形作っている才能と繊細さと完璧主義が素晴らしい演技を作っている。結果として、孤独と絶望を味わっている。本作を何度観ても泣いてしまう」と添えた。

 

最後に、長光さんは「本当に素晴らしいスケーティングを持っていたジョン・カリーさん。スケートならではの氷上での芸術に感動できると思います。ぜひ彼の名前は覚えておいてほしい」と伝え「ジョン・カリーさんに感銘を受けた振付師やスケーターやコーチによって、現在の世界がある。ぜひ歴史的な出来事を考えつつ、これからもフィギュアスケートを愛して頂いて、競技やショーに足をお運び下さい。楽しんで頂けたら」と思いを込め、トークイベントは締め括られた。

 

映画『氷上の王、ジョン・カリー』は、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、難波のなんばパークスシネマ、京都のMOVIX京都、神戸・三宮の神戸国際松竹をはじめ、全国の劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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