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黙祷が国家への反逆行為!?東ドイツで起きた実話描く『僕たちは希望という名の列車に乗った』がいよいよ劇場公開!

2019年5月16日

(C)2018 ZDF/ Logos: akzente, zero one, Studiocanal und Wunderwerk

 

ベルリンの壁建設前夜の東ドイツで、高校生の若者たちが行ったわずか2分間の黙祷が国家機関の目に留まり、政治的な弾圧にさらされる様を描く『僕たちは希望という名の列車に乗った』が、5月17日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』は、ベルリンの壁建設前夜の東ドイツを舞台に、無意識のうちに政治的タブーを犯してしまった高校生たちに突きつけられる過酷な現実を、実話をもとに映画化した青春ドラマ。1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をするが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは社会主義国家への反逆とみなされてしまう。人民教育相から1週間以内に首謀者を明らかにするよう宣告された生徒たちは、仲間を密告してエリートとしての道を歩むのか、信念を貫いて大学進学を諦めるのか、人生を左右する重大な選択を迫られる。

 

本作は、『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』のラース・クラウメが監督を務め、レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツらが出演。ヨナス・ダスラー、ロナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナーもキャストに名を連ねた。

 

(C)2018 ZDF/ Logos: akzente, zero one, Studiocanal und Wunderwerk

 

映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』は、5月17日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、5月18日(土)より、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、6月7日(金)より、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

テオの言った「自分で考えろ」の台詞に尽きる映画だった。

 

情報が制限されている中で正しい情報を見分け、自分の意思を貫くことの難しさ。その中で黙祷を捧げたあの教室での2分間はとても意味のある時間だった。そして意味があるからこそ、問題視されてしまう。

 

戦争中に暴動を起こした人、処刑に加担した人。黙祷の首謀者を守ろうとした人、自分を守ろうとした人。状況は違ってもそのときに下した自分の選択が一生つきまとうというのは変わらないのだなと感じた。18歳やそこらの高校生たちがその選択を迫られるシーンを見ているのは辛い。戦後だからこそ、正しい考えが未来に繋がるわけではないというのが分かっている。だからこそ、最終的に彼らが選んだ道に涙が出た。

 

このラストから数年後、ベルリンの壁ができるのだと思うとラストというよりは始まりのように感じる。僕たちは希望という名の列車に乗った。

fromマツコ

1956年の東ドイツにおいて、若者が「戦死するなんて意味がわからない」と言い切る姿にはポジティブな印象を持つ。しかし、時代は平和な雰囲気ではない。ロシア軍に占領された東ドイツはどこか寒々しく、殺伐とした空気を纏っていた。西ドイツを「ファシスト」と呼び、敵意をむき出し、社会主義を個人に強要する。ハンガリーへの黙祷の意志を先導した犯人探しを始める西ドイツ政府は、ナチス政権を彷彿とさせ、皮肉を表す。

 

舞台となる教室の子供たちは多くが社会に参加している自覚を持ち、他国の情勢を真っ当に知ろうとするニュートラルな姿勢を持っており、人間として理想像たる存在だと感じた。話を進めれば進めるほど子供たちの運命が気になり、のめり込み、手に汗を握る展開へと私たちを導いてくれる作品に出来上がっている。

 

正義か立場か。個であるか国家であるか。本作の打ち出す社会主義の威圧はとても怖く、この時代に生きていなくて良かった、と胸を撫で下ろした。そして、歴史と地続きになった今日を生きる上で観ておいた方が良い映画の一つだとも感じる。ラストシーンで終わりではなく、彼らのように西へと脱出を図る人達が、ベルリンの壁を築かせることに一役買ってしまっていたことは心に留めておいてほしい。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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