パリから福島に至る放浪描くロードムービー『シャルロット すさび』が大阪・九条のシネ・ヌーヴォでいよいよ公開!
ある男の過去に関係のあった女たちとの時空を超えた交接と、パリから東日本大震災後の福島に至る放浪のさまを、アーティスティックかつエロティックに描き出す衝撃作『シャルロット すさび』が、3月23日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開される。
映画『シャルロット すさび』は、舞踏家の岩名雅記さんが独自のイマジネーションで、パリから福島へと至る放浪を描いたロードムービー。アート活動に深くのめり込んだことにより、前妻スイコを失った日本人パフォーマーのカミムラ(K)は、かつてのようにシンバルを用いたパフォーマンスができずにいた。公演で用いる板ガラスを買うためにパリ13区にあるガラス店を訪れたKは、なぜかほろ酔いの女主人・朝子と出会う。同じ日に突然の雨を避けるために入り込んだメトロの構内でKが目にしたのは、フリークスの美しいイタリア人女性シャルロットだった。シャルロットから「夢の中で逢いましょう」と告げられたKは、その晩ある夢を見る…
本作は、ヨーロッパを中心に活躍する現役の舞踏家でありながら、『夏の家族』『うらぎりひめ』など映画製作にも取り組んできた73歳の芸術家である岩名雅記さんが監督第4作目として、構想に16年をかけて生み出した渾身のロードムービーである。キャストにはイタリアの舞踏家クララエレナ・クーダ、成田護さん、高橋恭子さん、大澤由理さんが名を連ねた。
映画『シャルロット すさび』は、3月23日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。
シャルロットのビジュアルは衝撃的だった。布に包まれて運ばれる姿は江戸川乱歩の『芋虫』を彷彿させる。もっとも、シャルロットは性を搾取される側でなく搾取する側であったが…
シャルロットは美しい歌を歌う。男はガラスを割る。男は夢の中でシャルロットと出会い、現実では人妻と逢瀬を重ねる。それにしても、この映画はなんだろう。目を背けたくなる。終始、見てはいけないものを見ているような感覚に陥る。それは自分もこの映画に出てくる人間と同じように陰鬱で湿っぽいものを抱えているからだろうか。
「人間は物の世界から追放されたんだよ」という男の台詞は胸に刺さる。だからこそ男は歌うことを全うするシャルロットに惹かれたのか。シャルロットに「物」としての本質を感じていたのか。だから自分自身もガラスを割るのか。しかし、床の上で這いつくばるように踊っていたシャルロットの姿はあまりにも人間らしい人間だった。結局、人は「物」になりきることはできない。
「考えなきゃいけない人間の感情が中途半端なんだ」という台詞はこの映画を観ている観客に向けた言葉ともとれる。しかし考えずにはいられない。それこそが人間の性なのではないだろうか。
fromマツコ
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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