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日本と中国をつなぐ案内人になりたい…『選挙に出たい』李小牧さんと長岡義博さんを迎えトークショー開催!

2019年1月6日

2015年の新宿区議選挙に立候補した李小牧さんの選挙活動に密着したドキュメンタリー『選挙に出たい』が、1月5日(土)より関西の劇場で公開されている。1月6日(日)には、本作出演の李小牧さんとニューズウィーク日本版編集長の長岡義博さんを迎えてトークショーが開催された。

 

映画『選挙に出たい』は、「歌舞伎町案内人」の呼び名で知られる李小牧さんが、2015年の新宿区議選挙に立候補した際の様子を記録したドキュメンタリー。中国から1988年に来日した李さんは、東京・新宿歌舞伎町で外国人観光客相手に飲食店や風俗店などを案内するガイド業をスタートさせ、「歌舞伎町案内人」として知る人ぞ知る存在となった。彼が20年以上の年月で築いた地位を捨て、新宿区議選挙への立候補を決意する…

 

上映後、本作出演の李小牧さんとニューズウィーク日本版編集長の長岡義博さんが登壇。中国出身の方も客席に多く見え賑やかなトークショーとなった。

 

2007年に李さんの『歌舞伎町案内人』を読んでファンになり、コラム担当になった長岡さんは、李さんとは10年以上の付き合い。李さんは日本に30年以上住んでおり、日本に詳しいため「選挙や政治は日本人も分からないところがある。私に相談して頂いて、深みに入っていった。大変だったが、振り返ってみると、いい勉強になった」と感謝している。本作の撮影を始めた頃は、監督のカメラには映りたくなく逃げ回っていたが「李さんの担当編集者なので、付いて回る。彼女が私以上に李さんに食いついて取材しており、私が見習うべきレベルだった」と反省。途中で「ケイヒ監督のカメラなら仕方がない」と諦めたが「完成した映画は素晴らしいものになった」と満足している。

 

ケイヒ監督は、李さんと共通の友人がおり、メディアを通して李さんを知っていた。北海道大学を修了し番組制作会社テムジンで働き、撮影前の2年はイギリスに留学。日本に帰国後、李さんの活動を知り撮影を始めた。当時、東京法務局に帰化申請を提出したばかりの李さんは「映画が出来るのかと不安だった。カメラが傍にいると邪魔で、握手できないことがあった」と告白。しかし、罵声との闘いには「カメラの存在がプラスになった」と感じ「芸術作品の監督として、お客さんに何を見せるかは表現の自由。私の行動が良くないシーンは逆に勉強になった」と、スクリーンに向かって感謝を伝える。

 

完成した作品を長岡さんはケイヒ監督から受け取っていたが「怖くて見れなかった。自分がどういう風に表現されているのか分からない」と不安だった。2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で初めて鑑賞し「お客さんから温かい反応があり、公開してもらっても大丈夫だ」と確信。普段は取材する側であるため「取材されることは新鮮。それでも、自分がどう描かれているかは怖くもありました」と明かした。長岡さんは大阪出身で、大阪外国語大学で中国語を勉強しており、中国人民大学に2年間留学している。李さんもニューズウィークによって視野が広がり「Tokyo’s eyeを勉強する必要があり、中国やアメリカのニュースも見ないといけない。分析しながら、中国で2年間の記者をした経験による観察力が文章に反映されていった」と長岡さんに感謝を伝えた。

 

日本の選挙に出馬した李さんは「短い期間でも本当に勉強になった。得た財産を使いたい」と立候補できたことで勝算を感じている。中国の政治で育った人間として「日本には民主主義がある」と確信。新宿区は136ヶ国の外国人が住んでおり、32人万の区民のうち12.5%、つまり、8人に1人は外国人。日本には100万人の中国人が在住しており「私が選挙に出れば、在日外国人に影響がある。この国が好きなら帰化しなさい。参政権や投票権を得られる」と後押し。また、日本にいる若者に向けて「権利があるのに行使しないことは残念。若者による新しい風が入らないとこの国は変わらない。目を覚ましてほしい」と告げ「私は新宿区民の為に、少数派の為に、マイノリティの為に出馬した」と明かす。他にも、中国に向けて「未だに中国では投票権がない。中国では1度も投票したことがない。指導者は我々が選んだ人間ではない」と皮肉を込め「出馬には大きな意味がある。30年間もいる日本が大好き。街が綺麗で、教育や国の体制があり、民主主義であることを伝えたい」と話す。長岡さんも「日本人の良い面も見たし、嫌な面も沢山見た」と振り返る。本編には映されていないが「李さんへ露骨にプレッシャーをかけてくる人もいました。日本の民主主義の奇妙さや縄張り等を含め、日本の外国人問題を象徴している。外国人が来日して帰化した際の問題を映画は表している」と示す。

 

地道に溝板選挙活動を行った李さんは「時間が短く、方法も分からなかった。誰も教えてくれない。ポスターも全て貼れていないが、ポスティングは1枚もしていない。空中戦だけでは無理なので、地道にやってきた」と振り返った。中国人を批判をする人達には理解を示しながら「30年前から中国人は沢山来日しているが、2~3割は犯罪者になる。歌舞伎町は中国マフィアの不夜城になった。30年前の中国は貧しい国で犯罪者が多かったが、今は景気が良くなり犯罪者が減少した。だが、他の国からの犯罪者が増えているので安心出来ない。元外国人として、日本人と外国人の懸け橋になっていきたい。社会問題を解決する必要がある」と、今後も訴えていく。

 

李さんの日本語について、長岡さんは「日本語が上手。ただ日本の選挙のやり方に合わせる必要があり、スマホにある文章を棒読みすることになった。選挙で本音を話す時、伝わる日本語が大事」とフォローする。李さんは「民主党事務局から『カラオケでマイクを持って演説の練習しなさい』と言われた。暗記が出来ず、間違ったことを言えば大変なことになるので、最初は読んでいた。本当は、マイク握ったら離したくない程に自由に喋ることが大好き」と語り、3分間で自己紹介と政策を話し続けた。なお、以前は、歌舞伎町案内人を肩書きにしていたが、現在は、新宿案内人になっており「私は中国人に向けて日本案内人になっていきたいし、日本人に向けて中国案内人にもなりたい。両国で育った人間は、普通の日本人よりは中国を知っている。普通の外国人よりは日本を知っている。両国の案内人になりたい」と高い志を以って活動していく。

 

最後に、長岡さんは、昨年末の改正入管法成立を挙げ「これからの日本はさらに外国人がやって来る社会になっていきます。本作は4年前の撮影ですが、奇しくも今の状況を反映している。日本人がどうやって外国人と向き合っていくか考えないといけない。この時期に多くの人に観て頂きたい。決して、日本人にああしろこうしろと言っている映画ではない。起きた事実を淡々と語って、これを基に考えてもらう作品です」と伝える。李さんは「映画が出来たことで大阪に来れました。大きな意味で大阪に外国人が沢山います。特に中国人が沢山来ている。現場を見て私の政策にプラスになる。映画を観たら、日本人と外国人との関係が分かるので、双方が考えられます」と大阪のお客さんにメッセージを伝えた。

 

映画『選挙に出たい』は、大阪・十三の第七藝術劇場、京都・烏丸の京都シネマで公開中。また、神戸・元町の元町映画館でも今春公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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