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”シンプル・ギフト”は世界に届く言葉…『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』篠田伸二監督を迎え舞台挨拶開催!

2018年12月8日

エイズで親を失ったアフリカの子供たちと、震災で親を奪われた東北の子供たちがNYブロードウェイで歌い、踊り、音楽で心をひとつにしていくプロジェクトを追ったドキュメンタリー『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』が、12月8日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。公開初日には篠田伸二監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』は、エイズで親を失くしたウガンダの子どもたちと東日本大震災で津波に親を奪われた東北の子どもたちが、ブロードウェイの舞台に挑戦する軌跡を追ったドキュメンタリー。アフリカ大陸の貧困削減を目標に、優秀な遺児を各国に留学させ、アフリカのニューリーダーを育成する。それはあしなが運動創設者・玉井義臣さんのライフワークである遺児たちの教育支援活動の集大成だった。その活動を世界に発信するため、玉井さんが思いついたのが、ブロードウェイの舞台でアフリカの子どもたちが歌い踊るという大胆な試みだった。玉井さんの思いに賛同した「レ・ミゼラブル」でトニー賞を受賞したジョン・ケアードが舞台演出を担当。東北の震災遺児たちも加わり、舞台経験のない素人の子どもたちと超一流のスタッフたちのブロードウェイに向けての猛レッスンがスタートする。監督は、TBS社員としてさまざまな番組を手がけ、本作が初の長編映画監督作品となる篠田伸二さん。

 

大阪公開初日は、満員御礼状態を向かえ、篠田伸二監督はホッとしながら舞台挨拶に登壇。

 

東京では11月3日から有楽町スバル座で公開。当初は宣伝が行き届かず、お客さんは篠田監督と玉井さんの知り合いばかりだった。だが、次第に井上芳雄さんや尾木直樹さんら著名人が集まり、上映5日目には堂本光一さんが鑑賞。ブログで鑑賞報告があり、本作のホームページへのアクセスが300倍、来場者数も3倍に。様々な方のおかげで大阪公開を迎えて、感謝の気持ちを伝えた。

 

篠田監督は、学生時代に、ポルトガル語を専攻し、ブラジル留学の機会も得る。留学制度は事前研修が充実しており、課題図書を読んだり100Km歩いたりしながら、ブラジルで1年間働きながら学ぶインターン生となる仕組みで、帰国後は後輩達を指導していた。この留学制度を作っていたのが、あしなが育英会の玉井さん。当時から、玉井さんは交通遺児への教育支援を行っていたが「日本の若者をブラジルに行かせたらおもしろい経験ができるんじゃないか」と留学制度をプライベートで構築。当時は、あしなが育英会への参加を求められており「あしなが育英会のボランティアを私も継続してやってきました。事あるごとに玉井さんから相談を受けながら活動してきた」と振り返る。

 

1995年の阪神淡路大震災では震災遺児が増加。また、交通遺児以上に、自死で親を亡くした子供が年間3万人も増え、支援する子供達を広げていった。現在、80歳を超えた玉井さんは、アフリカの子供達を支援しようと動き始める。世界中にアピールする必要があり、「あしながおじさん」が生まれたのが1912年から100年目を迎える2012年をターゲットに設定。そのプロセスでジョン・ケアードさんに出会い「あしながおじさん」のミュージカルを提案。最初にイギリスで上演され、アメリカでも展開、日本でも上演し、井上芳雄さんと坂本真綾さんが主役を演じた。2011年の東日本大震災以降に日本でミュージカルがあり、ジョン・ケアードさんが来日した際に玉井さんは説得。そこで篠田監督は「ジョンからブロードウェイ公演とプロセスの撮影を促された。2013年の4月にジョンがウガンダに入った時からカメラを回し、完成までに4年かかった」と明かす。

 

玉井さんが訴えたかった思いを受け止めた篠田監督は「公演までのジョンによるプロセスはきっと素晴らしく、紆余曲折があるに違いない」と確信。アフリカの貧困やエイズ問題等日本では詳しく報道されていない話題を捉えようと、ウガンダに4回訪れた。さらに、東北には7回も撮影に入り「被災者の声を届けたかった。最終的にはTVで放送したい」と考えたが、世の中には沢山の映像が溢れており、そう簡単に放送へは結びつかないと気づく。そこで「映画にするしかない。映画館で上映されたり映画祭で評価されたりする」と意識して本作に取り組んできた。撮影は300時間にもなったが、90分の作品なので、ほとんどが捨てる作業になった。現地入りした当時を振り返り「レインボーハウスには子供達が60人いたが、どの子が撮影対象になるのか分からない。ジョンと共に60人をインタビューした。出来る限り皆の生活の場に向かった」と話す。子供達の話を思い出しながら「ジョンは『子供達が抱える思いを吐き出さして、それを歌にしてミュージカルにしたい』と言っていた。何も言えない子が多い中で、涙を流しながら腹の中から言葉を絞り出してくれた子達を中心に追いかけることとし、そして皆で協力しながらステージ作りと撮影をやっていた」と回想する。

 

タイトルとなった「シンプル・ギフト」について、篠田監督は「アメリカ人の誰もが知っている曲。アパラチア山脈の麓に暮らすキリスト教ピューリタンのシェーカーという一派がおり、周りとの交流を拒んでストイックに生きている人達がいる。その中の聖職者が1848年に作った」と解説。編集を始めて4ヶ月目、タイトルを決めるにあたり、歌詞を入念に読み込み気づいた。シンプル・ギフトとは「本当に大切なものをなくした人だけが獲得できる気づき。子供達も、家族を亡くして人生のどん底から多くの人達の助けを受け続けてきた、とある時に気づき、気持ちが前向きになり自分の居場所を見つけた」と述べ「現在の恵まれている日本人に刺さる言葉。アフリカの出来事が日本人に届く」と考え、タイトルに決定。日本人向けのTV番組しか作ったことがなかった監督は「果たして自分の作ったものが外国の方々に届くのだろうか」と思い、パリの映画祭に出品。上映後の様子について「皆が泣いていた。トークセッションでは次々に手が挙がった」と報告。「”シンプル・ギフト”が日本人だけじゃなく外国の方にも届く言葉なんだ」と確信し、今後も上映を続けていく。

 

映画『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』は、大阪・十三のシアターセブンで公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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