Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

田辺・弁慶映画祭セレクション2017!野本梢監督作品『私は渦の底から』公開!

2017年6月13日

第10回田辺・弁慶映画祭で受賞を果たした3人の若手新人監督にスポットをあてた特集上映『田辺・弁慶映画祭セレクション2017』が6月10日(土)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で開始。6月13日(火)と6月14日(水)は野本梢監督の『私は渦の底から』を中心に短編作品が上映されている。

田辺・弁慶映画祭」は、2007年に第1回目を開催し、今年で第11回目を迎える映画祭。新人監督の作品を対象としており、映画有識者による審査だけでなく市民審査員も交えたコンペティションを実施している。過去の受賞者には 沖田修一監督や瀬田なつき監督、今泉力哉監督がおり、その後に商業映画デビューを果たしており、インディーズ映画の登竜門となる映画祭になっている。

今回、昨年の第10回田辺・弁慶映画祭で受賞を果たした3人の若手新人監督作品を特集上映している。6月13日(火)と6月14日(水)は映画.com賞を受賞した塚田万理奈監督の『私は渦の底から』を含め4本の短編作品が上映されている。

映画『私は渦の底から』は親友への恋心を打ち明けられず悩むレズビアン女性の葛藤と奮闘を綴った短編作品。自分がレズビアンであることに悲観的な希子は、大好きな親友への思いを断ち切って地元へ帰ることに。しかし別れを告げに行った際に親友から恋人を紹介され、その恋人に挑発されたことで親友への思いを再燃させていく…

他にも新作『はじめてのうみ』と『あたしがパンツを上げたなら2』、『朝をこえて星をこえて』が日替わりで上映される。

上映後、野本梢監督と『私は渦の底から』主演の橋本彩也加さん、『はじめてのうみ』主演の笠松七海さんが登壇。それぞれの作品で主演の2人は大阪出身ということもあり、和やかな雰囲気の中、舞台挨拶は始められた。最初に上映された『あたしがパンツを上げたなら2』について、野本監督は「私はお腹が弱くトイレに行くことが多くあり、その実体験から考えた作品」だと説明。前作について「同じ内容で、今作は3年後の設定。前作も関西で上映する機会があれば」と思っている。

次に上映された『はじめてのうみ』について、野本監督は「制作のきっかけは、私にとっては暗黒時代だった中学生の時のこと。クラスの中心で輝いている人達を見て、卑屈になっていた」と振り返る。今となっては「その人達は私を卑下するでもなく何とも思っていなかった」と感じている。「私が誰かを上だと感じていると、誰かを下に見ていることになる。クラスの中でのランクを意識していたことに大人になって気づき、改めるために作った作品」と述べた。野本監督は、主人公を演じた笠松さんに自身と重なる部分があったか訊ねると「無意識に人を上から目線で見ることがあると気づき、重なった」と応えた。笠松さんは「人と話している時は常に自分の立ち位置を気にする。相手が自分より若くて失礼な態度だと苦慮する。基本的に、自分より年下だからといって敬語ではなくなるのはおかしい」と考えている。本作で主人公を演じ、笠松さんは「ストーリー通りに続けて撮らず、カットを割って撮るので、怒り始めと怒りの最中のシーンで撮影日は違うと、感情を繋げるのは大変だった」と漏らす。これを受け、野本監督は「撮影の最初は怒っているシーンから始まったので、いい緊張感があった」と評価する。笠松さんにとって思い出に残ったのは「監督は現場に入ると雰囲気が変わる。『ヨーイ、ハイ』の声が全然違い、スイッチが入る」ことだった。野本監督は「(田辺・弁慶映画祭第10回記念映画の)『ポエトリー・エンジェル』の現場に入っていた時、先輩である飯塚監督をよく見ていた。”ヨーイ,スタート”、”カット”、”ハイ”で、現場の空気が締まっているのを感じ、監督がしっかりと発することが第1の仕事だ」と感じている。

最後に上映された『私は渦の底から』は、2014年に撮影し2015年に完成した作品。野本監督は「知り合いにトランスジェンダーの方がおり、『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』に出品する作品を撮ってくださいとお願いされた。以前からジェンダーに興味があり、題材にしようと思っていた時に背中を押され、作った作品」だと話す。橋本さんは、役作りにあたって「レズビアンの方の暮らしや悩みについて心得ておらず、インターネットや書籍で勉強した」と告白する。その結果として「どこで知り合い、何を言われ、何に怯えているか、といった悩みが書かれており、内面を知り演技に活かすことができた」と述べる。野本監督も「カミングアウトできず、ブログやSNSに綴っている人の方が主人公に近い感覚があり、参考にしたことがあった」と顧みる。橋本さんは主人公を演じるにあたり「作品に監督の世界観を活かしたいので、出来る限りのことはした。話を受けた時に、自分とは違うキャラクターだったので女優としてやりがいがあり、しっかりやろうとした」と語る。野本監督は、橋本さんに主人公に重なる部分があったか尋ねると「レズビアンの方が持っている悩みについて、自身が悩む部分との重なりを見つけるのは早かった。自身の内面を探求していくと、自分が否定している部分を抱えたままにしたくなかった。自分の欠点や他人との違いを探求したうえで役作りを行い、主人公が何に苦しんでいるかを自分のことのように考えながら演じた」と振り返る。
東京・テアトル新宿から続いている『田辺・弁慶映画祭セレクション2017』によってそれぞれの作品への想いは溢れんばかりだが、時間はあっという間に過ぎていった。最後に、笠松さん、橋本さん、野本監督の順にお客様に感謝を伝え、名残惜しくも舞台挨拶は締め括られた。

映画『私は渦の底から』は、『田辺・弁慶映画祭セレクション2017』内で大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で6月14日(木)まで上映。
なお、6月15日(木)と6月16日(金)は永山正史監督による『トータスの旅』が上映される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts