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現場で対峙し溢れ出てきた感情がぶつけられた渾身の一作!『ファンファーレが鳴り響く』祷キララさんと森田和樹監督に聞く!

2020年11月7日

吃音症でいじめられている男子高校生と殺人欲求がある女子高生が、いじめグループを殺しながら旅をする様を映し出す『ファンファーレが鳴り響く』が、11月7日(土)より関西の劇場で公開中。今回、祷キララさんと森田和樹監督にインタビューを行った。

 

映画『ファンファーレが鳴り響く』は、高校生の男女が殺人を犯しながら逃亡する姿を描いたスプラッター青春群像劇。吃音症が原因で同級生からイジメられ、鬱屈とした日々を過ごす高校生の明彦。家族に悩みを打ち明けることもできず、脳内で空想の神を殺すことでなんとか自身を保っていた。そんなある日、明彦は同級生の光莉が野良猫を殺す場面に遭遇。他者の血を見たいという欲求を抱える彼女との出会いを通し、明彦の中で何かが変わる。自分がイジメられていることをホームルームで訴える明彦だったが、そのせいでイジメは激しさを増す。イジメの現場に居合わせた光莉は、持っていたナイフで加害者の同級生を殺してしまう。その現実から逃げるように、東へと向かう明彦と光莉だったが…
『おいしい家族』の笠松将さんが明彦、『Dressing Up』の祷キララさんが光莉を演じる。初長編『されど青春の端くれ』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019グランプリ&シネガーアワード(批評家賞)を受賞した森田和樹監督の商業デビュー作となった。

 

短い期間の中で撮影が敢行されたされた本作。笠松将さんと祷キララさんの顔合わせは1回きりだったが、その際に読み合せて現場に挑んだ。森田監督は「2人が持ってきてくれた技量は十分。指示はしたが、あまり言っていない。制限せずに段取りを決めて一発でOKした」と振り返る。祷さんは光莉について「行動や選択だけを見たら最初は共感できないかもしれない」と打ち明けながらも「脈絡や理由や気持ちの動きがなく突発的にやっているというより、考えて行動を起こしている」と実感。「光莉が何を選び、どのように決めるか。光莉の過去まで考え理解しよう」と探求していくと「クラスにいないような異常な人間だとは全く思わない。見せている部分と見せていない部分があるから、誰もが光莉になり得る。そんなに遠い存在じゃない」と気づかされていく。「殺人によって犯罪者になるけど、その裏にある根本的な原因は、光莉自身ではなく、父親の死や、そこに絡んでくる人間関係、光莉の外にあることが原因になっている」と挙げ「何らかの原因により誰しもが光莉になり得る。悶々として苦しい時に言葉をかけてくれる人がいなかった。小さなきっかけだけかもしれない」と説く。だからこそ「光莉を突発的な快楽殺人に昇華してるだけの人として演じたら駄目だな」と感じ「自分が共感した部分を持っておこう」と役作りに励んだ。もし光莉が実在して目の前にいたら、と想像してみると「光莉の中身を他のクラスメイトは知らなかったから、犯罪を起こすことに衝撃を受けていた。光莉の過去を何も知らず、目の前にクラスメイトとして存在していたら、簡単には喋りかけられない。もしかしたら喋りかけられないまま卒業するかもしれないけど、ずっと気になる存在だろうな」と思いを馳せていた。

 

撮影について「全部苦しかった」と告白する森田監督。「カツカツだったので、スタッフも役者も精神的に擦り減らされていた」と鑑みながら、殺人行為の撮影を考え「正確かどうか分からない。祷さんが刺した相手のリアクション等、どれぐらいやっていいのかな」と迷いもあった。最終的に「刺されたら痛いだろうし、騒ぐだろうからやり過ぎな程に演出していました」と明かす。祷さんも「全部大変でしたもんね」と共感しながら「人を殺すことや人が殺されることは自分が体験したことではない。様々な映画やドラマで描かれるが、リアルなのか分からず」と正直に話す。「人を殺すことや血を見ることが、光莉を突き動かしている。型にはまった表情やアクションはおもしろくないな」と感じながらも「どうしたらいいか分からない。現場で対峙し、演じる上で出てくる表現に任せよう」と果敢にチャレンジしていった。本作の後半では、光莉が初めて自身の感情を人にぶつけるシーンがあり「表情や言葉の強さは、光莉が今まで抱えていたものが表現できる」と確信し「厳しいスケジュールで撮影が順調に進まず悶々としていたけど、この気持ちをのせたら、思っていた以上の表現を見つけられる。わざと発散せずに持っておいて、ぶつけてみたらどうなるかな」と捉え、果敢に演じていく。「笠松君も応えてくれるだろうな。受けとめてくれそうだな」と期待し「思っていた以上の感情があり、笠松君からも想像していた以上のものを返してもらい、俳優として、幸せな経験でした」と満足している。なお、光莉と明彦の関係について「お互いに恋愛感情を持っていたのではないか、と主張する人もいるし、反対の意見もある。私はどちらかには決めていない」と捉えており「もしも光莉が明彦に恋愛感情として好意があったとしても、気づいていなかったのではないか。違う出会い方をしていたら、違う関係で結ばれていたかもしれない。恋愛や友情という言葉を超えた感情なのかな」と思いを巡らしていた。

 

笠松さんとのシーンが多かった祷さんだが「現場で共演していなくても、個人的にも尊敬している好きな俳優さんばっかりなので、共演したかったな」と尊敬する出演者への敬意は止まない。試写で本作を観てもらい「私がこの役で表現したかったことや大事にしたかったことを受けとめてくれて言葉で伝えて頂いた。一尊敬している人達が正直に感想を云ってくれて、温かい言葉ばかりで嬉しいな」と大いに感謝している。森田監督も顔合わせ出来ていなかったキャストの方々がいたが「一緒に仕事をしてみると、自分よがりな人がいなかったから、撮影期間が短くてもどうにか出来たのかな」と振り返り、様々な作品に出演している川瀬陽太さんについて「自分が持ってきたアイデアを出してくれて、”これでいいですか?”とクエスチョンで返してくれるので仕事がしやすかったですね」と信頼を寄せていた。

 

本作は、森田監督にとって初めての商業映画となったが「自分が体験してきたことを過剰に描いている部分があります。母親の過保護や父親の暴力性は無きにしも非ず。おじさんもあんな感じだったので、愛情を込めて脚本を書きました」と解説。2015年に映画を撮りたい気持ちを以て映画学校に通い自主映画を撮り始めたており、今作でも「映画を撮りたい時に抱いていた気持ちのまま撮りましたね」と初心は忘れていない。祷さんは「これから、もっと役の幅を広げていきたい」とチャレンジ精神にあふれており「この役を演じられことで、自分だけでは生まれなかったものや知り得なかったものを受け取れたので、真逆な役もこういう役もやってみたい」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『ファンファーレが鳴り響く』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。また、京都・九条の京都みなみ会館でも近日公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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