日常に感謝し前進したい、明日は我が身…『歩けない僕らは』落合モトキさんに聞く!
回復期リハビリテーション病院を舞台に、新米理学療法士と半身不随の患者の触れ合いを描くヒューマンドラマ『歩けない僕らは』が11月30日(土)より関西の劇場で公開される。今回、主演の落合モトキさんにインタビューを行った。
映画『歩けない僕らは』は、回復期リハビリテーション病院を舞台に、新人理学療法士の主人公・遥と、彼女を取り巻く人びとを描いた短編映画。回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士・宮下遥は、慣れない仕事に戸惑いながらも、同期の仲間や彼氏に励まされながら患者たちと触れ合う日々を送っている。担当していたタエが退院し、新たに遥が担当したのは、帰宅途中に脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植だった。遥が初めて入院から退院までを担当する患者となった柘植から、元の人生には戻れるか聞かれた遥は、何も答えることができなかった。
落合さんにとっては、久しぶりの主演作となった本作。心情の変化がある役であり、当初は手探り状態だったが「リハビリの度合いについて監督とも話し合った。最初は歯を見せる余裕があり、次第にどん底に落ちていき、自分の感情が爆発する」と佐藤監督と確認しながら演じていった。監督とは歳が近く「良い距離感で演じられ、お互いに取り組みやすかった。一緒に手探りで心情を見つけて切り取っている」と信頼を寄せている。
リハビリ施設での撮影となったが、落合さんは、まず施設に迷惑にならないようにひっそりと見学していった。「人が頑張っており、見てはいけないところを見ている気持ちもありました」と告白するが「リハビリをしてくれる理学療法士の方とは会話しながら皆が笑顔で楽しそうにやっていました。前に進もうとしている人が多くて、明るい雰囲気だった」と驚いていた。役柄上、歩き方の練習が必要だが「理学療法士に体を預けているだけなので、理学療法士役の宇野愛海さんと板橋駿谷君が大変でしたね」と振り返る。現場で分からないことがあれば、近くにプロがいるので、声をかけて教えてもらい助かった。
共演相手である宇野さんについて「若いのに一生懸命に頑張っている女優さん」だと話す。現場では一言も喋っておらず「そんなに喋らなくてもいいんじゃないか」と思い「4日間の撮影では挨拶しかしていない。お互いに察して喋らなかった。仲良くても作品への相乗効果にはならない」と考えていた。なお、4日間の撮影で、2・3日目では板橋さんが登場しており「あのキャラクターなので、現場に笑いが起こりライトな空気になる。良い意味で緊張が緩み、良い風通しになった」と振り返る。
もし、落合さんがリアルに柘植さんと同じ立場になったと想像してみると「周りに頼るしかない。両親や友人に頼れるところは頼んでしまう」と応えざるを得ない。今作に関するインタビューを受けていく中で「普段何気なく出来ていることに感謝するし、前に進もうとする。明日は我が身」だと実感した。
また、今回、本作と同時に佐藤監督の初長編映画『ガンバレとかうるせぇ』も上映。試合に勝っても褒められず、負けても責められることもないという微妙な立場にいる高校サッカー部の女子マネージャーに焦点を当てた青春映画である。山王高校サッカー部でマネージャーをしている3年生の菜津は、夏の大会に敗退したタイミングでマネージャーは引退するという通例に反し、冬の選手権まで残ることを宣言。しかし、自分がすでに必要とされていないことに気づいてしまい…
鑑賞した落合さんは「佐藤監督作品らしい。好きですね」とコメント。「30歳の監督なので、自分の世界観やエゴを出したがる人が多い。よくぞ、ここに着眼点を置ける人だなぁ」と感心しており「これからさらに撮りたい作品を撮っていくと思いますが、もっと仕事したいですね」と楽しみにしている。『ガンバレとかうるせぇ』主演の堀春菜さんは、『歩けない僕らは』にも出演しており「このデビュー作ではフワフワした役ですが、今回は底に危うさがあり、色っぽさを感じました」と感想を伝えた。
『歩けない僕らは』は、37分の短編作品だが「説明がない。37分間がスマートにバランスよく熱量がある作品」だと落合さんは捉えている。また、佐藤監督作品に出演するなら「次は主演じゃなくて良い。主人公がよく行くコンビニの店員。楽しい監督なので、ガッツリとした演技もやりたいですよ」と答ええていく。これまで、主演以外を演じる機会が多かったが「やるからには後悔しないでやりきった方がおもしろい」と考えている。「自分に遠い方が演じやすい。近いと自分との線引きが分からなくなってしまう」と説き「俺みたいなことを言う役柄だと、自分に近過ぎて、演じている気がしない」と述べていく。例えば、女の子をたぶらかしている詐欺師等を演じられる自信があり、自身にしか出来ない特権があると確信している。最近では、後輩の俳優にも注目の眼差しを送っており「杉咲花ちゃんと吉沢亮さんは好きですね」と話す。また、これまでに携わっていない監督にも関心を示しており「橋口亮輔監督、黒沢清監督、瀬々敬久監督の作品には出演してみたいですね」と目を輝かせていた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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