過剰な自意識が故に素直になれない大学生の女性と演劇サークルの先輩との10年にわたる恋愛模様を描く『早乙女カナコの場合は』がいよいよ劇場公開!

©2015 柚木麻子/祥伝社 ©2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
大学に進学した女性が、演劇サークルでの出会いを経て、恋人との関係と仕事の間で揺れる10年間を描き出す『早乙女カナコの場合は』が3月14日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『早乙女カナコの場合は』は、自意識過剰で不器用な主人公カナコの10年にわたる恋愛模様を中心に、彼女と周囲の人々が自分を見つめ直していく姿を描く。男勝りで過剰な自意識から素直に甘えられない不器用な早乙女カナコ。大学進学と同時に友達と2人暮らしをスタートさせた彼女は、入学式で知り合った演劇サークルで脚本家を目指す長津田とそのまま付き合うこととなった。就職活動でカナコは念願の大手出版社に就職が決まるが、3年の付き合いとなった長津田は口ばかりで脚本を最後まで書きあげることはなく、大学を卒業する気もなさそうな状態だった。カナコと長津田の口ゲンカが絶えない日々が続く中、カナコは内定先の先輩・吉沢から告白される。編集者になる夢に向かって着実に進んでいくカナコと長津田の生き方に、徐々にすれ違いがうまれていく。
本作では、柚木麻子さんの小説「早稲女、女、男」を、橋本愛さんを主演に迎え、『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』の矢崎仁司監督が映画化。カナコ役を橋本愛さん、長津田役を中川大志さんがそれぞれ演じ、山田杏奈さん、臼田あさ美さん、中村蒼さんらが共演。また、本作と同じ柚木麻子さん原作の映画『私にふさわしいホテル』でのんさんが演じた主人公の作家である有森樹李が登場する。
©2015 柚木麻子/祥伝社 ©2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
映画『早乙女カナコの場合は』は、3月14日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のなんばパークスシネマ、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。

今や国内外で人気の柚木麻子さん。出版月と順番は前後するが、映画化も『私にふさわしいホテル』から立て続けである。キャストは、のんさんが引き続き有森樹李役として登場しているが、橋本愛さんは別の役で登場している。『私にふさわしいホテル』では超有名カリスマ書店員の須藤役だったが、本作においては、東京の私立大学に通う女子大生の主人公カナコ、と別人物だ。原作小説は、いわゆる”女子力高め”な大学の女子達の目線から語った連作小説という構成であるため、本作では、カナコの視点を中心に描かれており、タイトルは原作に準えて『早乙女カナコの場合は』になっただろうか。
監督を務めた矢崎仁司さんのフィルモグラフィを辿っていくと、本作はかなりエンターテインメント寄りな作品だと捉えらえる。そこに驚かされるが、ストーリーが進むにつれて、矢崎監督ならではの芸術性の高い画にて構築されていることに気づかされた。カナコの周辺に存在するキャラクターとの関係性に関しても、繊細な感情の変化が描かれていく。特に、離れそうで離れることが出来ないカナコと脚本家志望の長津田の関係を中心にして、不器用だけれども憎めない相手との関係を淡々と描いているのが、翻って愛おしくなってしまう。故に、学生から社会人に至るまでの10年間の悲喜こもごもを描いても、ずっと観ていたくなってしまう魅力が秘められているのが本作だ。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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