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学校は、階級の流動性を生み出し、階級を崩壊させるために作られたもの…『トラブル・ガール』ジン・ジアフア監督に聞く!

2025年1月10日

© Taipei Golden Horse Film Festival Executive Committee

 

クラスメイトにいじめられているADHDの少女が、唯一の理解者だった担任と母親の不倫関係に戸惑いながら、なんとか適応しようとする『トラブル・ガール』が1月17日(金)より全国の劇場で公開される。今回、ジン・ジアフア監督にインタビューを行った。

 

映画『トラブル・ガール』は、ADHDの少女と彼女を取り巻く大人たちの姿を、繊細かつ現実的に描いた台湾発のヒューマンドラマ。感情のコントロールが苦手で、自分だけの世界を持っている少女シャオシャオ。学校では孤立していじめの標的となり、家では母から厄介者あつかいされている。父は海外で働いており、他人のような存在だ。そんな彼女の感情を理解してくれるのは、担任の英語教師ポール先生だけだった。しかしある嵐の日、シャオシャオは母がポール先生と不倫していることを知る。困惑しながらも、複雑な関係に適応しようとするシャオシャオだったが…
『アメリカから来た少女』のオードリー・リンが主人公シャオシャオを演じ、2023年の第60回金馬奨にて史上最年少となる12歳で最優秀主演女優賞を受賞。『悲しみより、もっと悲しい物語』のアイビー・チェンがシャオシャオの母、香港の若手俳優テレンス・ラウが担任教師ポールを演じた。短編作品で高く評価されてきたジン・ジアフア監督の長編デビュー作。

 

☆2024年の第19回大阪アジアン映画祭での上映後に開催されたトークではポールを通して、教育問題を表現したかった、と仰っていました。なぜ、シャオシャオのようなキャラクターを主役にしたのでしょうか。そこからどのように物語を紡いでいったのでしょうか。

…学校は本来、階級の流動性を生み出し、階級を崩壊させるために作られたものですが、クラスにふさわしくない子どもが入ってきて、クラスメイトもその子がクラスになじめないことに気づき、仲間はずれにし始めると、そこは階級意識が生まれる場所になります。 階級対立が深刻化している今、問題の根源を考えてみると、学校にさまざまな問題があることがわかりますし、教育は昔から進歩の少ない分野だと言われてきました。 教師、生徒、親の心には階級意識が深く根付いており、階級間での対立が日々繰り広げられています。 この映画では、多動症が原因で仲間はずれにされ、いじめられる子どもとは別に、彼女を取り巻く登場人物たちも物語を成立させる要素となっています。学校はわかりやすい社会の縮図であり、私はこの視点から物語を展開させました。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

☆オードリー・リン、アイヴィー・チェン、テレンス・ラウのキャスティングについてはどのような意向を以て選んでいったのでしょうか。

…オードリー・リンとアイヴィー・チェンはお互いの鏡で、互いのなかに互いを見ています。ADHDの少女を演じたオードリー・リンは実際にはとても落ち着いており、一方で母親役のアイヴィー・チェンはエネルギー溢れる俳優です。2人の気質を入れ替えても物語は成立しますが、この組み合わせであることで、問題を抱えているのは子どもなのか、それとも周りの人々なのかを客観的に考えさせられます。教師は第三者でありながら母娘の問題を解決することは出来ず、むしろ自分自身の方がより多くの問題に悩まされているかもしれません。最初のプールのシーンで、教師は少女に泳ぎ方を教える際に嘘をつきますが、少女は結果的にそのおかげで泳ぎ方を習得します。これは、私たちが教育を受ける過程が、ある意味で嘘に順応する状態であることへの暗示でもあります。華やかなテレンス・ラウの姿がその残酷さを人々の目から逸らさせ、教育を合理化しますが、それがポール先生という役の設定です。この物語は、教育システムの中ではみ出し者となった3人が家族を築こうとし、互いに温め合いますが、最終的には失敗に終わってしまうのです。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

☆雨が伴ったシーンが多く見受けられるように感じますが、撮影などで苦労されたことはあったでしょうか。

…雨や風の強いシーンの撮影は本当に大変でした。晴天時に雨のシーンを撮影すると、雨が本当に降っているようには見えず、風を起こすファンが大きな音を立ててしまうことが最大の問題でした。プロフェッショナルなクルーのおかげで、これらの問題をすべて克服し、無事に映画を完成させることができました。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

☆作品の企画~脚本執筆~キャスティング~撮影~編集~完成といった映画制作のプロセスを経ていく中で本作が1本の映画として成立する、と手応えを感じた瞬間はどの時点であったでしょうか。

…説明するのが難しいですが、段階ごとに振り返ってみると、毎回違った感じ方がありました。映画はまさに生き物で、作っている過程で成長し、変容し、自分の形を見つけていきます。コントロールできないことも多いですし、以前はがっかりさせられたこともありましたけど、たくさんの驚きももたらしてくれました。今は完成してから長い時間が経過しましたが、いまだに新しい視点や違う見方を発見していますよ。私はまだ、この作品とともに生きる方法を模索している最中です。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

☆初長編作品でありながら、金馬獎で最優秀主演女優賞を受賞する等により各国の映画業界に対してどのような印象をお持ちでしょうか。

…私は他国の映画業界で働いた経験はありませんが、最近大阪アジアン映画祭に参加した際に見た限りでは、日本の映画館の外には独立系映画作品のチラシがたくさん貼られており、そのどれもが劇場公開されているか、これから公開されようとしているものでした。 私はあらゆる独立系映画にとても興味があるので、日本の独立系映画の自由さが羨ましいと思いました。台湾では興行収入の縮小により、そういった映画制作の場が圧迫され始めているので…。日本も同じ問題に直面しているのか気になりました。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

☆本作を経て、次はどのような作品(長編・短編問わず)を予定しているでしょうか。

…次に準備中なのは、2024年3月のHong Kong Asian Film Financing Forum(HAF)で公開した『市場裡的女鬼』という作品で、現在プリプロダクション中です。死ぬことはできないけどうまく生きられない女性についての話で『トラブル・ガール』でも描いた女性の苦境に近いものがあります。早く皆さんにお見せできる機会があればと思っています。
また、もう1つ制作中の「東海東邊的少年」というドラマがあります。インターネットが存在しなかった時代からインターネット時代へと人類が移行した重要な10年間である、1990年代にインターネット業界で起業した台湾の若者たちの物語です。

 

©2023 寓言工作室 華文創 華映娯楽 得利影視 影響原創 承達投資

 

映画『トラブル・ガール』が1月17日(金)より全国の劇場で公開。関西では、1月17日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、1月25日(土)より大阪・十三のシアターセブンや神戸・新開地のCinema KOBEで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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