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いつの時代もゾンビ映画が表現出来ることは沢山ある…『DEAD OR ZOMBIE ゾンビが発生しようとも、ボクたちは自己評価を変えない 』佐藤智也監督に聞く!

2022年11月7日

ゾンビの発生で隔離された地方都市で、女子高校生が家族の世話をするために残り、新しい生活を営んでいく姿を描く『DEAD OR ZOMBIE ゾンビが発生しようとも、ボクたちは自己評価を変えない 』が11月12日(土)より大阪・十三のシアターセブンでも公開。今回、佐藤智也監督にインタビューを行った。

 

映画『DEAD OR ZOMBIE ゾンビが発生しようとも、ボクたちは自己評価を変えない 』は、ゾンビが蔓延した街を舞台に、ゾンビ化した家族と暮らす女子高生の日常を描いた異色ヒューマンドラマ。ゾンビの感染拡大を防ぐために隔離された地方都市。女子高生の早希はゾンビになってしまった家族を世話するため隔離地域に残り、それほど危険ではないサバイバル生活を送ることに。ゾンビ発生前には不登校で家族との関係も上手くいっていなかった彼女にとって、それは新しい暮らしだった。
主人公の早希を演じるのは、アイドルグループ「さくら学院」のメンバーとしても活躍した倉島颯良さん。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020でグランプリを受賞した日中韓合作映画『湖底の空』の佐藤智也監督が、映画祭より支援金を受けて製作した。日本におけるゾンビメイクの第一人者である江川悦子さんが特殊メイクを担当している。

 

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭からの次回作制作支援金が与えられ「ファンタスティック映画祭から支援されるなら、ゾンビ映画にチャレンジしよう」と決意した佐藤監督。当時、長編映画のシナリオを執筆しており「ゾンビで隔離された地域に数人は残る人間が現れる、というオムニバス作品を考えていた。3つ程度のエピソードで長編作品にしよう」と検討。支援金は決して多くはなく、文化庁の助成金も追加しており「撮影期間も短くなり、まずは1つのエピソードを作ろう」と決め、短編である本作に至った。2020年代の今作るゾンビ映画として、40分強の作品の中に様々な要素を詰め込んでおり、コロナ禍のメタファーとして主人公がマスクをしていたり、引きこもりに関する問題に対して「現在は何万人と存在し、世界的に共通する問題になってきている」と受けとめサブタイトルに込めていたりする。

 

キャスティングにあたり、これまで様々な俳優事務所と仕事をしてきたプロデューサーと一緒になって探していった。主人公の早希は、女子高生役が出来る年齢、髪型はショートヘア等といった条件の中で、倉島さんに辿り着き、おかあさん役のみやべほのさんは、以前の現場で知り合った俳優であり、監督が個人的にオファーしている。他のキャスティングもプロデューサーと相談しながら決めていった。

 

特殊メイクについては、プロデューサーを通じてゾンビメイクの第一人者であるメイクアップディメンションズの江川悦子さんに実施して頂いている。予算が少なく撮影期間が短いという条件の中でゾンビを作っており「エキストラのマスクをかぶっているゾンビは、マスクをかぶって目や口の周りをメイクして短時間でゾンビが出来る。主人公の家族は、ゾンビ化が進んでいない設定だったので、直接のメイク。ラスボス的なゾンビはシリコンピースを貼り付ける形。演じた宮澤寿さんはメイクアップディメンションズ所属の俳優でゾンビメイクに慣れている」と説き、3種類のゾンビを組み合わせて短時間で特殊メイクスタッフの人数が限られている中で対応頂けた。また、ゾンビの衣装に関しては、メイクアップディメンションズにはボロボロな服が沢山あり提供頂くと共に、制作側でボロボロにした服も用意し、撮影後にメイクアップディメンションズに引き取ってもらっている。まさに、短時間のメイクや既存のモノを駆使し、スタッフを最小限に抑え準備できた。

 

ロケーションについては、北関東エリアの各フィルムコミッションに相談。ゾンビが登場する映画であるため断られたこともあったが、ぐんまフィルムコミッションと前橋フィルムコミッションが協力的で、商店街や団地を使わせて頂いた。ロケハンではインターネットで廃墟を探して検討していたが「廃墟は、現在の地権者が不明で、プロデューサーが探し、撮影許可を得られるところまで辿り着いた」と苦労を重ねている。

 

ゾンビ映画については「ジョージ・A・ロメロ監督の初期三部作で完結している」と認識しており「3作目の『死霊のえじき』では博士に研究されているけど懐いているバブは、人間性を取り戻していきそうなゾンビという描き方だった。転じて、ゾンビの回想シーンを作って良いのかスタッフの中で意見は分かれながらも、記憶を取り戻しつつあるような設定にしました」と解説。初期三部作にある設定に準じ、走らないゾンビを選び「それぞれの人生があった上でのゾンビだから、個体差を大切にしている。一人一人の動きが違っている。自分が目標としているゾンビが描けたかな」と納得している。本作でも様々なゾンビが登場するが「『死霊のえじき』には、エキストラでアメフトのユニフォームを着たゾンビが何回も横切り目立つ。この人は、どういった状況でゾンビになったんだろう」と考えていく中で多様なゾンビを登場させた。自身の家族は皆ゾンビになってしまった主人公だが「バラバラの家族だけど、ゾンビ化することで一つにまとまってしまった。逆説的な意味を持たせました」と話す。認知症を患うおばあちゃんは、ゾンビになったことで逆に元気になっているが「認知症は不思議な現象。記憶を失っても時々思い出す時がある。人間は普通に生きていても変わってしまう瞬間がある」と理解し「引きこもりや認知症、現代人が抱えている問題がゾンビになったことで解決してしまう。逆説的に考えていました。つまり、いつでもゾンビ映画は作ることが出来るんだ」と驚きの発想だ。

 

完成した本作について、映画評論家の塩田時敏さんからコメントを頂いており「ゾンビはもはやホラーにあらず。時代劇や西部劇、あるいはロマンポルノのように、一定の描写があれば何でも描ける映画の無限の大地」と仰って頂き「ゾンビで出来ることは沢山ある」と確信。本来は3つ程度のエピソードによるオムニバスとして長編作品を作る予定だったが「今後、上手く展開したら他のエピソードも作りたい。主人公の女の子が結局外では上手くいかず、またゾンビがいる世界に戻ってしまう…等々もやってみたい」と想像は膨らむばかり。なお、前作『湖底の空』と似たような話だと受けとめており「トラウマを抱えて前に進めない主人公が、周りからの協力を得て、ちょっと前に踏み出せる描き方をしている。ゾンビが登場するかどうかだけの違いで、似たような世界観がある」と解釈している。今後も「ゾンビを発展させて、人間が変わること、変わった後も何かあるんじゃないか、ということを描きたい。それは生物の進化なのか退化なのか。生命が変わるんじゃないか、と期待できるかもしれない作り方もしてみたい」と創作意欲は止まらない。

 

映画『DEAD OR ZOMBIE ゾンビが発生しようとも、ボクたちは自己評価を変えない 』は、関西では11月12日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。11月13日(日)には上映前に倉島颯良さんと佐藤智也監督を迎え舞台挨拶開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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