余命を削ぎ落とされ、生きるエネルギーがなくなった時、どう生きていけばいいのか…『なん・なんだ』山嵜晋平監督に聞く!
結婚40年を目前にした夫が、自分の知らぬ妻の世界に触れ、妻の過去と結婚生活を振り返っていく姿を描く『なん・なんだ』が大阪・十三の第七藝術劇場でも2月12日(土)から公開。今回、山嵜晋平監督にインタビューを行った。
映画『なん・なんだ』は、40年連れ添った2人が、これまでの人生や今後の生き方について真剣に向き合う姿を描いたドラマ。監督は「テイクオーバーゾーン」の山嵜晋平。結婚から40年を目前にした三郎と美智子。ある日、文学講座に出かけた美智子が交通事故に遭い、昏睡状態となってしまう。突然のことに途方に暮れる三郎が、美智子の趣味だったカメラに残されたフィルムを現像すると、そこにはまったく見知らぬ男の姿が映っていた。困惑した三郎は娘の知美とともに、写真の男を探しに旅を始める。
『痛くない死に方」の下元史朗さんが三郎役を、ドラマ「スカーレット」の烏丸せつこさんが美智子役を演じ、娘の知美役を『岬の兄妹』の和田光沙さんが演じる。
10年ほど前、ロケハン先で、自殺しようとしているおじいさんを止めた山嵜監督。「その人は、定年後、バツイチからずっと独り身で両親や兄弟、親戚もおらず脳の手術がうまくいかず目眩がして痛みを伴う生活を5年間続けて死のうとしていた」と分かり「生きるエネルギーがなくなった時、どう生きていけばいいのか。これをどのように映画にしようか」と映画監督として考察。分かりにくい映画が好きな山嵜監督は「過去と今を分け、過去を奪っていく認知症と、今の余命を削ぎ落とされた人はどうすべきか」と検討し、本作を家族映画として構想していく。
キャスティングにあたり、本作のプロデューサーである寺脇研さんと坂本礼監督が話している時に、下元史朗さんの名前が上がるが山嵜監督が助監督をしていた『菊とギロチン』でお会いしたレベルであったため、勧められた高橋伴明監督の『襲られた女』を見て今回の映画に合っていると思いオファーする。主人公の妻役として「女性としての何かが残っている人を起用したい。二人が並んだ時、どう見栄えるか」と考え、烏丸せつこさんを起用。佐野和宏さんとは、復活作『バッド・オンリー・ラブ』の助監督をしていたことがあり「元々は台詞のある男性役だった。喋らないけど、色気がある役がピッタリ」だと直感。日本映画学校在学時、緒方明さんのワークショップで「良いヤツがいるんだよ」で紹介してもらった和田美沙さんとは親戚のように慕っている。吉岡睦雄さんとは、いまおかしんじ監督作品で助監督をしていたことで、呑み会での面識があり「とにかく上手なんですよね。安心できる」と信頼を寄せていた。また、外波山文明さんが主宰している「劇団椿組」には下元さんがよく出演しており「何度か仕事をしており、面識があった。オファーしたら応じてくれた」と、皆さんが出演を快諾してもらっている。
撮影にあたり、今作では、演出で口出しをしないようにしており「こんな台詞は言わないわよ」と烏丸さんから云われたこともあった。今作では、演出で口出しをしないようにしており「普段は、登場人物の年表を作るが、今回は大丈夫かな。自分達で考え演じてもらったほうがおもしろい」と考え、皆さんを信頼していく。前作『テイクオーバーゾーン』では、「子供が相手なので励ましながら撮っていた」と明かし「今作では、芸達者な人達に好きなように演じてもらって、画を考えていった」と振り返る。
既に、東京の劇場では公開しており「年配のお客さんが多く、女性は笑顔で、男性はしんみりと噛み締めながら感想を話してくださる。若者は、これからの人生について様々なことをちゃんと考えないといけないな、と考えていた」と受けとめ「自分ごととして捉える映画。様々な角度から感情移入出来る作品」だと提示する。なお、夫婦が鑑賞することについては「踏み絵映画だと云っている。2人で観れない夫婦は沢山いる」と冷静に話していた。
映画『なん・なんだ』は、関西では、京都・烏丸の京都シネマで公開中。2月12日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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