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70年の歴史があり、特別な思い出がある建物…『原爆資料館 語り継ぐものたち』立川直樹監督に聞く!

2026年7月19日

1955年、原爆の惨禍を繰り返してはならないという思いで開館し、被爆体験を語り継いできた歴代館長に支えられた資料館の軌跡を、55年にわたる取材映像で紐解く『原爆資料館 語り継ぐものたち』が7月18日(土)より全国の劇場で公開。今回、立川直樹監督にインタビューを行った。

 

映画『原爆資料館 語り継ぐものたち』は、世界有数の平和博物館である広島平和記念資料館の70年以上にわたる歴史と、そこに込められたメッセージを伝えるドキュメンタリー。1955年に開館し、2025年には来館者数が累計8000万人を超えた広島平和記念資料館(通称・原爆資料館)。「もう二度と原爆の惨禍を繰り返してはならない」との思いから、原爆で溶けた瓦や石などの瓦礫を集め、市内の公民館で「原爆参考資料陳列室」を開いた地質学者である長岡省吾さんの執念と努力によって生まれ、歴代の館長たちが命を削って守り続けてきた。2万2000点を超える遺品や資料などを収蔵し、2006年には丹下健三さんの設計による本館建物が戦後建築として初めて国の重要文化財に指定された。2025年度には年間入館者数が250万人を突破し、3年連続で過去最多を更新。そのうち約4割が外国人で、世界からの注目度も高まっている。広島ホームテレビ報道部の立川直樹さんと斉藤俊幸さんが共同で監督を務め、100時間以上の素材から掘り起こした貴重なアーカイブ映像や新たな証言などを通し、核の恐ろしさと平和を静かに訴え続ける唯一無二の原爆資料館に込められた思いを映し出す。『ドライブ・マイ・カー』『悪は存在しない』の石橋英子さんが音楽を手がけた。

 

横浜出身の立川直樹監督は、母親が広島出身であったことから、小学6年生の頃に広島平和記念資料館を訪れており「怖くて駆け足になり、先に出ちゃいましたね」と打ち明ける。斉藤俊幸監督は広島出身で、平和教育を受けており、夏休みの登校日に原爆資料館に行っており「身近なところにあるよ」と聞いていた。彼は、広島ホームテレビへ2021年に入社しており、2023年のサミットでの光景が印象に残っていたようだ。立川監督は、7代目館長の高橋昭博さんを2009年頃から取材しており「いつか全体を描きたいな」と構想。斉藤監督も深堀していく中で、サミットでの光景に違和感を覚えことが大きく、2人の視点で本作の企画が成立していった。

 

具体的に取材を進めていくにあたり「初代館長の長岡省吾さんだけで出来上がったことではない。学芸員の方々も含めて取材していこう」と方針を定めていく。斉藤監督は、100時間以上のアーカイブ映像から調べていったが、その時々において館長へ取材していることが多く「館長さんの順に作品を構成していこう」と作品の方向性も定まった。立川監督は、アーカイブ映像がない箇所について取材していったが、既に亡くなっている方も多く、お孫さんへの取材も行っている。あまり取材を受けた経験もなかったようで「やっぱり語りたかったんだ」と気づかされた。4代目館長の浜崎一治さんは、その後の所在が不明で「既に亡くなったかもしれない」と諦めかけたが、実はご存命であることが分かり「奇跡的に、当時のお話を聞くことができた。ギリギリ聞くことが出来るタイミングだった」と安堵している。とはいえ、取材したい方が既に亡くなっていることも多く、親族の方へ取材に伺っても、当時について知らない方もおり、写真を基にしたナレーションを中心とした構成になってしまう。TVドキュメンタリー番組と映画では映像のつなぎ方に関する文法が全く違っており「どういう撮り方をすればいいのか」と検討し「映画では、映像の切り替えが多くなく、ゆったりと使う。長い尺で観ていると、気づきがあったり、ハッと感じるところが違ったりする」と分かり、貴重な経験が出来た。

 

様々な関係者へ当時について取材するにあたり、最初から映画として製作することを考慮し、テレビ番組的な撮り方をせず、ゆったりとしながらしっかりと長く収められる撮り方を意識していた。そして、構成を考えるにあたっては、盛り過ぎずフラットに並べていくことも考えていたようだ。これまでは、TVドキュメンタリー番組として、被爆者の方の生き様を取材してきたが、長い歴史を描いた企画にしっかりと取り組みたかったことから、本作について「30分や1時間のテレビ番組では難しい。映画でなければ実現できない企画」と受けとめていた。なお、普段から、TVドキュメンタリー番組をプロデュースし30本以上も手掛けているが「映画っぽくしたいな」と思ったことがあったが「ゆったりし過ぎている。ふわっとしている」と云われ、失敗した経験もあったようだ。「映画では、分かりやすく結論出さない作品もある。 そういった作品が好きで、ふわっとしたメッセージを委ねた作品を送り出すと、テレビの世界では、”おもしろくない”、”結論が分からない”、”何が言いたいのか”という反応が返ってくるのです」と打ち明け「言葉ではっきり結論を言えるなら、わざわざ苦労してドキュメンタリーを作らない」と吐露。とはいえ「そういった作品を手掛けたいな」という思いがあったことから、外国のドキュメンタリー映画を観て「こういう手法で繋ぐのだな」と気づかされた。「同じように見えて全然違いますよね。あれを観てしまうと、テレビ番組の構成は忙しくて、作れなくなってしまう」と自省しながらも、普段のお仕事に励んでいるようだ。

 

2024年8月に企画書を書き、2025年は被爆80年、広島ホームテレビ55周年であることにも合わせており、どうにか11月には完成させた。編集にあたり、カメラマンの熊田好洋さんと共に取り組んでおり「イメージを伝えた上で、”自由にやってください”と委ねた部分もありながら、全体の構成を組み立てた。斉藤が使いたい部分もありながら、バラバラのものが上手く組み合わさったな」と手応えを掴んでいく。「ある程度はしっかりと並べていく形にしていき、観る方が多様に解釈できるように」と心がけ、実現に至っている。劇伴の音楽については、石橋英子さんが手掛けた。広島がロケ地にもなっている『ドライブ・マイ・カー』との縁もあり、2023年には、広島国際映画祭には『悪は存在しない』のジャパンプレミアが行われ、濱口竜介監督や石橋英子さん等が舞台挨拶トークショーに登壇している。「本作に音楽をつけるなら、石橋さんだったらいいな」と思い、『悪は存在しない』の音楽をシーケンスに並べて編集し、イメージを掴んだこともあったが「ピアノもあれば、電子音楽もある。何の楽器か分からなかった」と告白。石橋さんは撮影現場に入り込んで音楽を作り上げている、と伺っており、今作では「原爆資料館を見に来てください」とオファー。承諾していただき、実際に広島に来てもらい、2時間以上も一緒に原爆資料館で過ごし、音楽がついていない状態の作品も観てもらった。その後、40分程度からなる1曲が届けられることに。「色々な場面が入っているような曲がふわっとあった。石橋さんが感じた原爆資料館や広島の音楽が届いたのです」と興奮しながらも「自由に使ってください」とメッセージが添えられていた。「ちょっとしたギミックもあり、1曲として実におもしろい」と感じながら「この場面に添えようかな。この場面はこんな風に想像したのかな。これは、こんな風にも感じられるような…呼吸だよね」とスタッフとも相談。そして、大阪のMAスタジオの方による意見を聞きながら存分に悩みながら完成させていった。

 

完成した映画を広島で上映することに最も気を張っていたようで「70年の歴史があり、特別な思い出がある建物ですから、いろんな見方がある。正直に云えば、入ってないエピソードの方が多いのです」と告白。だが、結果的に、反応は良く「元館長さんや平和に凄く詳しい方からも”大体を描けている”と評価いただいた。広島の方でも知らないことが多かったようです。真面目でシリアスなテーマですが、ホッとしました」と安堵していた。今後も映画を手掛けたいが、まずは、8月6日に向けて、全国版「テレメンタリー」での番組プロデュースをしており、被爆者の方が主人公となる企画を手掛けている現在だ。また、核廃絶を仕事にしている元大学生を追いかけた番組も手掛けており、様々な企画に携わっている。広島ホームテレビ、という地方に密着しているメディアで仕事をしていることから「長年の蓄積がある中で、今作は最たる例です。だけど、それ以外でも、地元の目線で見ると、中央の人たちが発信していることと違う目線がある。なおかつ、市民の距離が近い。地方ならではの目線が、全国、世界の目線につながるようなことがあるので、コツコツと地域の目線から発信していきたい」と志を語ってもらった。

 

映画『原爆資料館 語り継ぐものたち』は、7月18日(土)より全国の劇場で公開。関西では、8月1日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場や神戸・元町の元町映画館、8月28日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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