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17歳の少女がキャンプ旅を通して“大人の不完全さ”に気付く『グッドワン』がいよいよ劇場公開!

2026年1月13日

©2024 Hey Bear LLC.

 

ニューヨーク州キャッツキル山地へキャンプしに来た少女が、支配的な父と、人生に行き詰まった父の友人との間に漂う空気から、大人の不完全さに気づいていく『グッドワン』が1月16日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『グッドワン』は、父とその友人と3日間のキャンプに出かけた少女が、大人の不完全さに気づく瞬間をとらえ、大人になることの喪失感と希望を描いたドラマ。17歳の少女サムは父クリスと彼の旧友マットとともに、ニューヨーク州キャッツキル山地へ2泊3日のキャンプに出かける。旅の間、クリスとマットは長年のわだかまりをぶつけあいながらも、ゆるやかにじゃれあう。サムはそんな彼らの小競りあいに呆れながらも聞き役と世話役を引き受け、静かに空気を読み続ける。しかし男たちの行動によりサムの大人への信頼が裏切られ、サムとクリスの親子の絆は揺らいでしまう。

 

本作では、映画初主演のリリー・コリアスが主人公サムを繊細に演じ、『ドラッグストア・カウボーイ』のジェームズ・レグロスが父クリス役、テレビドラマ「プリズン・ブレイク」のダニー・マッカーシーが父の友人マット役を務めた。ロジャー・ドナルドソン監督の娘としても知られるインディア・ドナルドソンが長編初監督を務め、2024年の第96回ナショナル・ボード・オブ・レビューで新人監督賞を受賞、カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)にノミネートされるなど高く評価された。ロサンゼルスのマルチメディアアーティスト、セリア・ホランダーが音楽を担当している。

 

©2024 Hey Bear LLC.

 

映画『グッドワン』は、1月16日(金)より全国の劇場で公開。関西では、1月16日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸、奈良・橿原のユナイテッド・シネマ橿原で公開。また、3月7日(土)より大阪・心斎橋のTheater Aimyouでも公開。

タイトルのグッドワン(good one)は、劇中でサムの父クリスの友人であるマットが 「You’ve got a good one.(お前の娘は良い子に育ったな)」と言っていたように、家族の中で”良い子”と位置付けられたサムのことを指す。彼女は他の登場人物に比べて、温和で周りと波風を立てないようにしている平和的な人物のように見える。たとえば、そのマットの息子のほうは、いかにも嫌そうに今回のキャンプ行きをドタキャンしてしまうのに対して”約束とおりパパと一緒に来てくれる良い子”なのだ。そして、「私のことを従順で扱いやすいと思っているんでしょ」ということまで彼女はちゃんと理解していることまで、その振る舞いで伝えてくる、主演のリリー・コリアスの演技が見事だ。

 

ハイティーンの成長物語である本作が扱うテーマとして、”主人公が何かのイベントを通して世の中の一面を知る”という流れが一つの柱になるが、この場合のイベントは”父とその友人との3人でのキャンプ”で、知るのは世の中の、特に”大人の男性に対しての幻滅”だと感じた。父と同年代のマットが発する一言に、一瞬にして表情が変化するサムの演技が見事で、私はスクリーンのこちら側で見ている傍観者の立場にもかかわらず、中年男性性の持つ無意識で無責任な加害性を突き付けられて、とてもいたたまれない気持ちになった。少女の目には滑稽にすら見えるであろう理由で離婚しているマットおじさんは、きっと悪気はなかったというか、何が悪かったのか理解できていないのだろうけど、そういうところが既にアウトなのである。

 

10代の少女の成長ストーリー、と捉えると評論めいた視点で観てしまいがちになりそうだが、本作の魅力はキャンプをする森や川の風景をただ静かに映し出し、その中で息づくサムの自然体の姿だ。陽の光を通して水色に輝く彼女の瞳の美しさには目を奪われた。リリー・コリアスはこれが映画初主演、と聞いて驚いてしまうスクリーン映えする存在感だったので、今後どんな活躍を見せてもらえるのか、とても楽しみだ。

fromNZ2.0@エヌゼット

 

ニューヨークから車で2時間のキャッツキル山地へのキャンプを控えた主人公サムは、体調が優れないなか山歩きの準備を進める。父親のクリスは手慣れた様子で準備を進め、豆知識なんかも披露しているけど、洗濯されたはずの服の匂いが気になりパートナーへ文句を垂れる。キャンプは父親の友人のマットと、その息子も参加する予定だったが、迎えに行った家の玄関前で口論中。マットは一人階段を降りてくる。父は助手席のサムに後部座席へ移動するよう指示を出してくる。出発後も車酔いが辛いので運転をさせてほしいという願いは聞き入れてくれないし、自分のお仕事メールの返信までさせてくる。離婚したサムの母と、今の結婚相手を比べて「今の方が楽」とか言うし、友人のマットの行動にもいちいち文句を垂れる。なんか嫌な感じ。この先のキャンプも思いやられる…。案の定、食事の準備や片づけ、洗濯はすべてサムの仕事。ダルい話も聞かされる。躾だと思ってるのか、教育だと思ってるのか。どちらにせよ面倒この上ない。

 

大人ってもっともらしいことを言うけど、自分本位だし、自分の正解が世の総意くらいに振る舞ってくる。そうやって言わなければならないのも今となれば分かるけど、幼少期妙に納得できてしまったそれは、中学生くらいになれば違和感を覚えるし、大人のデタラメさを目にしているサムは尚更だろう。親は子供の気持ちよりも”正しさ”を優先して、子供の気持ちを分かろうともしないし、分かった気で接してくる。子供だったあの頃の感情が映画に充満していた。楽しげに振る舞ってしまう事も含め痛いほど分かる。

 

大人のそばで気まずい思いをしている子供を描き、映すのがあまりに達者すぎる。そんな風に感心しているのも束の間。「自分もこういう大人になっていやしないか…」と凄まじい不安に襲われた。都合が良かったり、効率的だったり、慣習だったり、空気を読んだり。その場の最適化のために正しさをかざしてしまっていないだろうか。ただ、大人だって何もかも完璧じゃないと知れたら、自分が進む未来も怖いものじゃなくなるかもしれない。みんなそうやって大人を演じてるのだろう。
でもやっぱりムカつく。

fromブライトマン

 

メインキャストは主人公、父、父の友人3人、登場人物も少なく、舞台は基本山の中というミニマルさでありながら、撮影と演技の凄みで観客を飽きさせない。特に主人公サムを演じるリリー・コリアスは今作が初主演とは思えない存在感。大人になりきれない大人たちを静かに観察する鋭い視線にこちらまで姿勢を正される。彼女の一挙手一投足を見逃したくなくて、終始スクリーンから目が離せない。去勢を張り合いながら、中身のない話で場を埋めていく男二人の隣でじっと「グッド・ワン」であり続けようとする娘。娘(女性)にケアされる事が当たり前すぎてケアされている自覚もないまま、自分のペースで指示だけ飛ばす父。周囲への配慮を怠ったことは認めないが、それによって愛する人達が遠ざかる事を憂い続ける、父の友人。旅が進み復路にて、大人、とりわけ男達の矛盾とこれから自分が踏み出していく社会の不条理に気がついた時、主人公は自分の中の”グッド・ワン”を取り払う。一人で歩くことを決意した彼女を山全体が祝福しているかのように煌めきだし、木々が風になびく音や土の匂いが観ているこちらにも伝わってくる。3人の小さな旅に映画的な大展開はないまま終わりを迎えてしまう。ただ、男2人が最後まで気がつかない主人公の怒り、諦め、希望をカメラだけがじっと見ている。

 

監督のインディア・ドナルドソンは今作が長編デビュー。監督と主演俳優の新人ならではの瑞々しさが共鳴してこれまで見たことのない新しいフェミニズム映画が誕生した。

fromマスダ

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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