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”凄い!”や”美しい!”と言ってくれる観客の感性が凄いし、心が美しい…『国宝』吉沢亮さんと李相日監督を迎え特大ヒット記念舞台挨拶開催!

2025年8月10日

抗争で父親を失った任侠一門の息子が、上方歌舞伎の名門当主に引き取られ、歌舞伎の世界で出会ったライバルの御曹司と成長していく『国宝』が全国の劇場で公開中。8月10日(日)には、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田に吉沢亮さんと李相日監督を迎え特大ヒット記念舞台挨拶in大阪が開催された。

 

映画『国宝』は、李相日監督が『悪人』『怒り』に続いて吉田修一さんの小説を映画化。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主である花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子である俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。主人公の喜久雄を吉沢亮さん、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星さん、喜久雄を引き取る歌舞伎役者の半二郎を渡辺謙さん、半二郎の妻である幸子を寺島しのぶさん、喜久雄の恋人である春江を高畑充希さんが演じた。脚本を『サマー・ウォーズ』の奥寺佐渡子さん、撮影をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『アデル、ブルーは熱い色』を手がけたソフィアン・エル・ファニ、美術を『キル・ビル』の種田陽平さんが担当した。2025年の第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品された。

 

今回、上映後に吉沢亮さんと李相日監督が登壇。吉沢さんは、関西でずっと撮影していたことから、大阪で舞台挨拶ができることを感激している。李監督は、関西で撮影出来たことへの感謝と共に緊張感もある中で舞台挨拶に臨んでいた。

 

そして、今回はお客様からの質問を中心にして舞台挨拶を展開。まずは「大阪のロケはどこでされたんでしょうか?」と聞かれ、李監督は「大人になった春江が出てくるキャバレが十三。あとは、2人が子どもと大人の時代で出てくる赤い吊り橋のように見える橋も大阪です。あとは、大阪の文楽劇場。喜久雄が”鷺娘”の格好で廊下を歩く時、廊下は東京の国立劇場、地下の奈落が大阪の文楽劇場。奈落から上がってくるまでが文楽劇場。上がり切ったら京都のセットです。奈落で撮影できる場所がなかなかなくて…大阪で撮影させていただきました。あそこをよく見ると、喜久雄が歩いている後ろに”道成寺”の釣鐘があり、藤があったり。彼の今までの過去を遡って、暗い道を歩いていく画になれたのは大阪の文楽劇場のおかげです」と解説。

 

「個人的に好きな演目はありますか?」と聞かれ、吉沢さんは「やってみて…一番に精神的に…内面で踊ったのが”鷺娘”だった。一番に体力も使い、集中力が必要な演目です。綺麗に踊れるように一生懸命に練習していたんですけど、いざ本番になって、綺麗に踊る、というより、今までの喜久雄の蓄積みたいなものが一気に解き放たれる最後の瞬間。今までの人生や様々な喜久雄の感情を爆発させながら踊っていたので、滅茶苦茶大変ではあったけど、気持ち良くもあった。今までにないぐらいの集中力で演目を踊れたので、僕はやっていて一番良かったのは”鷺娘”かもしれないですね」と振り返る。端から見ていた李監督は「それが伝わってくる。喜久雄が最後に見える風景を疑似体験して見ている空気感があった瞬間でした」と話し、印象深く残っていた。

 

 

「歌舞伎役者と俳優は、どちらが大変だと思われますか?」と聞かれ、吉沢さんは「歌舞伎役者だと思います」と即答。「僕は、今回、歌舞伎役者を演じる、ということで…普段は、歌舞伎役者、という人間を演じるわけですけれども、そこには、或る種の正解もないし、見え方によって全然違っている。誰かが演じれば、その人のものになっていくわけです」とふまえ「歌舞伎役者さんは、何百年と続いている芸を生きる。そこにはある種、正解はあると思う。下手が許されない世界。下手が味にならない世界の厳しさは、演じていて凄く感じました。先代のとんでもない人達が沢山演じてきた演目を演じなきゃいけない覚悟は相当なものだろうな、と演じて思いましたね。歌舞伎役者さんの方が大変だろうなぁ」と察していた。

 

「一番難しかったなぁ、テイクを重ねたなぁ、とシーンは?」と聞かれ、李監督は「難しい、という意味でいうと…序盤ですよね。最初にクランクインしてからの数日というのは、お互いに喜久雄の輪郭を掴み切れなくて、芯が捉えられなくて、何をやっても、お互いに”ちょっと違うなぁ”な空気感のまま超えていかなきゃいけない時間が4,5日続き、これをどう突破していくか。それは吉沢君に限らず、過去の映画でも、例えば『悪人』の妻夫木君は最初の1週間ぐらいは、分かりやすい役柄ではないので、探る時間では本人が一番苦しんでいる」と解説。吉沢さんも「ある種のキャラクター性にとらわれていた。喜久雄はこういう人間なんじゃないか、みたいなものを演じようとし過ぎてて、最初の1週間ぐらいはかなり分からなくてしんどかったですけどね。大人になった春江が最初に出てくるシーンの後で、家で、結婚しよう、という話をしているシーンは撮影3日目で、喜久雄がどういう表情をしているのか、が凄く難しかったので、様々なパターンを撮ったんですよね」と思い返し、李監督は「リハーサルで、様々なパターンを試した。”結婚しよう”という言葉を、どういうテンションで、どういう空気感の中で、あの一言を発するのか試したあげく…やっぱり向き合わないだろう。背中を向けたままで馴染み出したよね」と振り返る。

 

「花吹雪と雪と光がキーポイントになっているシーンは、どのように考えられて作られたのでしょうか?」と聞かれ、李監督は「色も関係している。雪に象徴される真っ白は無ですね。無はどちらかというと死も意味する。白い雪の死の情景と、同時に凄く気を遣っていた赤は血の色でもある。血は生命の根源でもあるので、赤と白による生と死という世界観を色味や光でどう表現しようか、と考えスタッフと共有していた。喜久雄が舞台に上がる時は基本的に白で、自分というものを消していく。色味と雪と血を合わせながら考えていきました。最後に彼の踊る世界を、本物の雪でもなければ紙でもなければ、また別の世界の象徴として捉えていました」と説明。これを受け、吉沢さんは「やっている時は、踊りに集中し切っていたので、あまり雪を意識していなかったですけど、雪は、象徴的なシーンで出てきます。喜久雄自身が最初に見る強烈な画が父の死。喜久雄にとって景色みたいなものが凄く重要。彼の目線の先にある印象的なものとして雪が大事なんだな、と思っていました。映像で観て、改めて本当に美しい画になっていた」と思い返す。

 

 

「女形のお化粧について意識したことや気をつけたことは?」と聞かれ、吉沢さんは「実際に舞台に立つ時は、顔師さんにやっていただいていた。やっぱり、ちゃんと自分でもやれるようにはずっと練習していた。眉毛が浮いてくるんです。撮影も長いので、時間が経つにつれて眉毛が浮いてくるんですけど、それをいかに潰すか、が凄い大事。あとは、白を均等に塗るのが意外にも難しい。脂の載り具合によっては斑が出るので、それを如何に綺麗に白く塗れるか、練習していました」と明かす。また、女形を演じるにあたり「姿勢をずっと気をつけていました。水泳と剣道をやっていて、肩幅がデカめなので、この肩幅を如何に消すか、肩をどれだけしまえるか。肩を如何に後ろに引きつけて存在感を消すか、一年半で一番苦労したのはそこですね」と振り返った。

 

締めの質問として「公開されてから今までのムーブメントをどのように実感されていますか?」と聞かれ、李監督は「そんなに日常生活に影響ないですよ」と言いながらも「沢山の様々な方からお祝いとご連絡を今までにないぐらい頂きますね」と話す。「とはいえ、今まで自分がやってきたこと…吉田修一さんと話した時、吉田さんもビックリして喜んでおられるんですけど…最初、『悪人』を2人で一緒に脚本を書いてやっている時、東宝という大手の映画会社で初めて僕は作品を作る(ことになり)…どちらかといえば、インディペンデントから入ったつもりだったので、我々の感性は、消費税(当時8%)だよね。8%の人に届く…それだけ掘り下げるものをやりたい2人が、東宝という大きなマーケットを担わなきゃいけない。チャレンジでもあり、変な矛盾だな、と思いながらも一生懸命にやったんです。それは、8%から50%を目指しているわけではなく、同じ姿勢で、エンターテイメント的な要素を、と別の意識はありましたけど、根底にあるものは、伝わる人に深く伝わる映画を作ろう、ということでやってきたんですよね。だから、一番驚いています、この状況を」と真摯に話し「僕から言えるのは、この作品を”凄い!”や”美しい!”と端的に言ってくれることが多いんですけど、そう思ってくれている観客の感性が凄いし、心が美しいな」と打ち明けた。

 

最後に、吉沢さんは「公開から2ヶ月以上経った今もこれだけ沢山の方に劇場へ足を運んでいただいて、本当に多くの方に愛して頂いている状況が続いている、と非常に嬉しく思っております」と感謝し「人の心に深く届く作品になればいいな、と僕自身もこの作品に携わらせていただきながら、ずっと思っていたことです。深く刺さっている方がこれだけ沢山いらっしゃることが、僕自身もビックリです。非常に嬉しいことです。この作品を作って良かったな、と日々思わせていただいております。これからもっともっとこの作品が多くの方に愛していただけるように」と思いを込めながら、舞台挨拶を締め括った。

 

映画『国宝』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田大阪ステーションシティシネマや、心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋kino cinema 心斎橋、難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸kino cinema 神戸国際等で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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