ヌーヴェルヴァーグやアメリカンニューシネマへ思いを馳せる自称・鬼才の執念を描く『ORLIK』がいよいよ劇場公開!

内戦への関与を強いられた映画界の鬼才を自称する、文無し男の映画作りへの執念を描き出す『ORLIK』が5月23日(金)より劇場で公開される。
映画『ORLIK』…
インディペンデント映画監督クラレンス・オルリックはすべてに失敗し、失意と貧困のなかで虚勢を張る日々を過ごしていた。ある日、彼は秘密警察官ミラーにより、不毛な内戦への関与を強要される。そんな折、オルリックの悪友フジキが「ボイルドブレイン」という装置を完成させる。それは自己の意識を映像化する装置で、金も人手も使わずに映画づくりが可能になるという。装置を使用して再起を懸けるオルリックだったが、副作用で時間の感覚を失い、記憶と空想が混ざり合い神経が迷乱した状態に陥ってしまう。精神をむしばまれながら戦地へ送り込まれた彼は、爆撃と妄想が降りそそぐなか、映画への狂的な妄執にとり憑かれていく。
本作は、長編第1作『LUGINSKY』で注目を集めたhaienaが、切り抜いたスチールなどを複雑に組み合わせて制作した映像に、動画化の技術やデスクトップアートの手法を加えて完成させたコラージュアニメーション映画。ヌーベルバーグやアメリカン・ニューシネマに思いを馳せる主人公オルリックにhaiena監督自らの身上を投影しながら、政府機関や反体制組織の思惑に翻弄される姿を描き出す。俳優の金子貴伸さんが主人公オルリック役で声の出演をした。
映画『ORLIK』は、5月23日(金)より東京・吉祥寺のアップリンク吉祥寺で公開。

ヌーヴェルヴァーグやアメリカンニューシネマへ思いを馳せる主人公に、監督自らの身上を投影した作品…と聞くと、人によっては、難しそうな作品と思ってしまうかもしれない。だからといって、本作を観ることを避けるにはもったいない。主人公のモノローグがおもしろく、本作の物語はどこに向かっていくのだろう、といった気持ちが増大していく作品である。主人公のインディペンデント映画監督クラレンス・オルリックは、自らが手掛けた作品を誰にでも気軽に観てもらおう、とは思っていない。いや、本音は違うかもしれないが…自作を観るにふさわしい相手が存在してほしいだけだろうか。だが、彼が住む世界では、不毛な内戦により映画を観る者すら存在していそうにない。さらには、意味のない内戦に巻き込まれそうになっていたら、摩訶不思議な世界に振り回されていく。気づけば、何を見せられているか分からなくなっているのだが、なんだか惹き込まれてしまう世界観が魅力的だ。最終的に、オルリック監督の映画はどうなってしまうのか、見届けてみてはいかがでしょうか。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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