なぜ、国家初の選挙に銃が必要なのか?僧侶が銃を探すブータン映画『お坊さまと鉄砲』がいよいよ劇場公開!
©2023 Dangphu Dingphu: A 3 Pigs Production & Journey to the East Films Ltd. All rights reserved
2006年のブータンを舞台に、国王の退位にともなう初めての選挙を控えた村の騒動をユーモラスに描く『お坊さまと鉄砲』が12月13日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『お坊さまと鉄砲』は、初めて選挙をすることになったブータンの小さな村で、変化を求められて戸惑う村人たちの姿を、温かいまなざしとひょうひょうとしたユーモアでつづったコメディドラマ。2006年。長年にわたり国民に愛されてきた国王が退位し、民主化へと転換を図ることが決まったブータンで、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることに。周囲を山に囲まれたウラの村でその報せを聞いた高僧は、なぜか次の満月までに銃を用意するよう若い僧に指示し、若い僧は銃を探しに山を下りる。時を同じくして、アメリカからアンティークの銃コレクターが“幻の銃”を探しにやって来て、村全体を巻き込んで思いがけない騒動へと発展していく。
本作は、長編監督デビュー作『ブータン 山の教室』で世界的に注目を集めたパオ・チョニン・ドルジが監督・脚本を手がけ、タンディン・ワンチュック、ケルサン・チョジェ、タンディン・ソナムらが出演した。
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映画『お坊さまと鉄砲』は、12月13日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
ブータンの僻地にある村の学校に赴任した教師が自分の居場所を見出しながら、本当の幸せについて問いかける『ブータン 山の教室』で世界的に注目を集めたパオ・チョニン・ドルジ監督による新作。”お坊さま”と”鉄砲”というブータンにおいても相容れない2つのキーワードが結びついていることが興味深い。実は、今作は、選挙を扱った作品である。ブータンは王政体制であったが、2008年7月に憲法が施行され、王政から立憲君主制に移行した。国民は選挙権を得ることになったが、突然に選挙の報せを受けても、何をすればいいか分からない。状況の急変に振り回され、国王の意向に懐疑心まで抱く者まで現れる始末。そこで大切な役割を担ったのが、選挙委員会の人達だ。選挙がどういったものなのか説明し、選挙人名簿の作成、模擬選挙の実施にまで勤しむが、想定外のことだらけ。その想定の中にも”政治”的な意図が見え隠れするので、さらに悩ましいことが増えていくばかり。笑ってはいけないことであるはずだが、滑稽に思えて仕方がない。最終的には、お坊さんが治めてしまうことに畏れ入るばかり。さらには民俗学にも興味深いオチまでつけられているので、実にブータンらしさあふれるユニークな一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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