台湾の白色テロ時代、再教育施設と監獄が置かれていた緑島を舞台にした物語『流麻溝十五号』がいよいよ劇場公開!
©thuann Taiwan Film Corporation
戒厳令下の台湾で行われた政治弾圧によって設置された再教育施設がある緑島を舞台に、島に閉じこめられた女性達を描く『流麻溝十五号』が7月26日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『流麻溝十五号』は、台湾国民政府による恐怖政治下で戒厳令が敷かれていた白色テロ時代に、政治犯収容を目的とした教育施設と監獄のある緑島で生きる女性たちの姿を、実在した複数の人物を3人の女性に投影して描いたドラマ。1953年、政治的弾圧が続く台湾では、罪を課せられた者は思想改造および教育・更生のため緑島に収監されていた。連行された者は名前ではなく番号で呼ばれ、重労働を強いられた。純粋な心を持ち、絵を描くことが好きな高校生のユー・シンホェイ。子どもが生まれて間もなく投獄された、正義感の強い看護師イェン・シュェイシア。妹を拷問から守るため自ら囚人となったダンサーのチェン・ピン。次々と迫る不条理に対しても考えることを諦めず、台湾語、北京語、日本語などさまざまな言語を駆使しながら日々を生き延びようとする彼女たちだったが…
本作では、ユー・シンホェイ役に『越年 Lovers』のユー・ペイチェン、監督は『Tattoo 刺青』等これまでも一貫してジェンダー平等の視点から作品を撮り続けてきたゼロ・チョウが務めた。
©thuann Taiwan Film Corporation
映画『流麻溝十五号』は、7月26日(金)より全国の劇場で公開。関西では、7月26日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や堺のMOVIX堺、京都・烏丸の京都シネマ、兵庫・洲本の洲本オリオン、7月27日(金)より大阪・十三の第七藝術劇場、8月3日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。また、兵庫・宝塚のシネ・ピピアでも近日公開予定。
蔣介石による中華民国政府の統治が及ぶ範囲で戒厳令が敷かれていた時代、共産主義者や政府・中国国民党に反対する人々を投獄する等の抑圧政策を行われていた。事実がいずれにしても、共産主義に賛同するような動きが少しでも垣間見えたら投獄される社会、どれだけの恐怖政治であったか、想像に難くない。もはや自由に考えることすら否定され、政府に対して右に倣え、をするしかないのだ。そこで、罪を課せられた者は思想改造および教育・更生のため収監されたら、重労働を強いられるか、得意分野を以て政府の思想に合ったパフォーマンスを強いられることになる。だが、少しでもずれたことをしてしまうと、死と隣り合わせの拷問を受けざるを得ない。この世の生き地獄とは、まさにこのことである。過酷な状況下、いつかは脱出して穏やかな日々を送ることができるのだろうか。僅かながらの希望を抱くことも打ち砕かれてしまう現実を否応にも見せつけられてしまった。翻って、現代に同じようなことが起こらないようにするためにも重要なメッセージが込められた作品としても捉えられる。辛いながらも、じっくりと観続けてほしい一作であった。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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