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誰かが出生前診断の経験を作品にしないといけない…『渇愛の果て、』有田あんさんに聞く!

2024年5月18日

順風満帆だった夫婦が、難病の子供の出産をきっかけに決断を迫られ疲弊していく姿を描く『渇愛の果て、』が6月1日(土)より関西の劇場でも公開される。今回、監督・脚本・主演の有田あんさんにインタビューを行った。

 

映画『渇愛の果て、』は、野生児童主宰の有田あんさんが監督・脚本・主演を務め、友人の出生前診断をきっかけに妊娠・出産について取材して実話を基に撮りあげた群像劇。“普通の幸せ”を夢見る山元眞希は、高校時代からの親友3人に、「将来は絶対に子どもが欲しい」と言い続けてきた。やがて妊娠が発覚し、夫の良樹とともに順調な妊婦生活を過ごしていたが、出産予定日が迫るなか、体調不良で緊急入院することに。赤ちゃんの安否を確認するため出生前診断を受けると、結果は陰性。しかしいざ出産を迎えると、我が子は難病を患っていた。事実を受け入れる間もなく次々と医師から選択を迫られ、疲弊していく眞希。妹の渚にだけは本音を語っていたが、親友たちには打ち明けられないまま、夫と子どものことで悩む日々を送る。そんなある日、親友たちが眞希の出産パーティを計画するが、それぞれの子どもや出産に対する考えがぶつかってしまう。

 

出生前診断を経験した友人から「誰か取り上げてくれないかな」と聞いた有田さん。「産まれた時に難病だと分かった場合、どういう風に受け入れていったらいいか。友人が出産したお子さんは3万人に1人の難病だった。これからどうなっていくのか」と不安だったそう。友人はインターネットでも調べてみたが「病院のホームページ等、専門的な知見は見つかった。だが、個人的なことは全然載っていない。SNSでは鍵アカウントだった。受け入れ体制等の本当に知りたい情報は、どこで見つけたらいいのか」と困惑したようだ。そこで、有田さんは、彼女の一言から本作を作ることを決意した。

 

とはいえ、脚本を書くにあたっても、本当に必要な情報は見つからず。2020年の段階では、ドラマ「コウノドリ」の中での題材や、NHKで2本のドキュメンタリー(出生前診断を受けた直後の夫婦の話し合いを撮ったドキュメンタリーと、診断を受けて陽性だったことから中絶を選んだ方のドキュメンタリー)があった。また、本作の監修医である洞下由記さんに取材したり、文献を読んだりもしていく。更に、およそ40名程の色々な立場の方に取材も行った。実際に脚本を執筆していく中では「こういうテーマだとどうしても肩に力が入った状態で観ることが多いが、極力間口の広い作品にしたい」と心がけ「私が作るなら、少しだけ知っている、或いは、全く知らない方が見ても、出生前診断とか妊娠について考えられるようにしよう。どうしても重い展開になるから、力を抜ける箇所を極力入れていこう」と定めていく。ストーリーの後半には、主人公にとって転機となる女性が現れる。それは、数年を経た友人の姿を描いており「彼女は我が子にしっかりと向き合い、生きている。そういった生き方もあることを描きたかった」と説く。

 

監督兼主演を担った有田さん。この主人公は、大変な役回り。テーマ自体も挑戦的であり、作品の責任も負うことになる。どなたかに任せることも出来る、と思ったが「友人の意思を私が直接聞いて台詞が出来上がっている。私がしっかりと伝えたい。最後まで責任を持とう」と決意し、主人公の眞希を演じることにした。なお、当初は同じテーマの作品を舞台で上演する予定だったが、コロナによって中止せざるを得なくなった。その時、舞台版にキャスティングしていた俳優には「この作品を映画化します。」と一人一人に電話で説明した。また「映画に慣れている人もお呼びした方がいいな」と考え、以前から共演したかった俳優にもオファーした。眞希の妹である渚役を演じた辻凪子さんとは、とある映画監督のワークショップで知り合い「別チームだったけどお互いに覚えていた。度々会っており、共演を願っていた。信頼できる方であり、監督の経験もあり、(演じる渚と同じく)大阪出身でもある」といったことから抜擢している。眞希の父親である健司役のオクイシュージとは、昨年まで所属していた劇団鹿殺しの公演で共演したことがあり「当時から、物凄く尊敬できる俳優さん。お人柄も尊敬でき、お芝居の引き出しも沢山ある。関西出身の父親という設定なら関西出身の方が良かった。映画監督もしているオクイさんで間違いない」と確信した。

 

短編映画の監督経験があった有田さん。また、『エッシャー通りの赤いポスト』などで役者として撮影現場の様子を理解していた。本作は、十月十日の妊娠・出産を描くために三期に分けて撮影しており、その期間ごとに自ら様々なことを学ぶと共に、スタッフからの支援も受けながら知り合いの映画監督らにも相談して学んで少しずつ映画作りを学んでいった。第三期には多くの作品で助監督の経験がある工藤渉さんも参加し、さらに理解していった。また、「撮影した映像を観て、第二期、第三期に向けて修正していった」と振り返る。映画と演劇の違いも把握した上で「映画は初対面で撮影していることもある。逆に演劇の慣習を踏襲してもいいかな」と思い、事前に稽古を行い、役者同士が初対面の状態で現場を迎えないようにした、と語る。

 

編集段階となり、まずは有田さん自身で取り組んだ。だが思い入れが強く、「全てのシーンを残したい」と思ってしまいカットが進まない。そこで以前から野生児童の舞台映像の編集でお世話になっていた、ドラマ監督でもある日暮謙さんに編集を依頼。そこから二人三脚で日暮さんとなんども編集を重ね、2021年の秋に0号試写を行った。そこで更に意見を聞き、カットしたり追加撮影を行ったりしながら、2024年3月に最終編集を行い、完成に至っている。

 

完成した本作について、モデルになった友人からは「誰が悪いとかになってなくて良かった。見やすいし、広まっていったらいいな」と好反応だ。0号試写の際は、出産をまだ考えていない20代前半の方や演劇仲間にも見てもらい「次は恋人と観に行きたいな」という反応があったり、結婚に迷っている30代の方から「ちゃんと考えよう、という決心ができました」という声もあったりした。賛否両論含め様々な反応があり、改めて本作を公開する意義を実感している。

 

映画『渇愛の果て、』は、6月1日(土)より6月7日(金)まで大阪・十三のシアターセブンで公開。6月1日(土)・6月2日(日)は13:30~、6月3日(月)・6月4日(火)は12:20~、6月5日(水)~6月7日(金)は18:50~から上映される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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