若き日のプーチンの姿捉えたドキュメンタリー『プーチンより愛を込めて』がいよいよ関西の劇場でも公開!
©Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018
ロシア連邦初代大統領エリツィンから指名を受けたプーチンの大統領代行就任から1年間を追った貴重な映像とインタビューが映し出される『プーチンより愛を込めて』が6月9日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『プーチンより愛を込めて』は、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンの素顔をとらえた2018年製作のドキュメンタリー。1999年12月31日、ロシア連邦初代大統領ボリス・エリツィンが辞任し、自身の後継者としてプーチンを指名した。3ヶ月後に行われる大統領選挙までの間、ロシアの新しい憲法と国旗は若き指導者に引き継がれることに。プーチン大統領候補の選挙用PR動画の撮影を開始したビタリー・マンスキー監督は、大統領選挙への出馬表明も公約発表もしないまま“選挙運動”を展開するプーチンの姿を記録。プーチンが大統領代行に就任してからの1年間を追った映像を編集し、ドキュメンタリー映画として完成させた。選挙運動では控えめな印象のプーチンだったが、徐々にその本性が見えはじめる。プーチンがいかにして権力を握り、現在の統治国家を築きあげたのかを浮かび上がらせていく。
©Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018
映画『プーチンより愛を込めて』は、関西では、6月9日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、6月17日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。なお、6月10日(土)にはシネ・リーブル梅田で、6月18日(日)には元町映画館で、神戸学院大学教授でウクライナ研究会会長の岡部芳彦さんを迎えトークイベントを開催予定。
正直なところ、見てはいけない恐ろしいものを見たような気がして落ち着かない。
今となっては専制君主のイメージと結びついているプーチンであるが、大統領候補として支持を伸ばしていく政治手法はメディア王であり、大衆の心を得るための演出が際立っている。本作で映し出されているプーチンの振る舞いや語りから、彼の素顔を捉えるのは誤りであろう。かつて、独裁者スターリンが革命期には人々に親しみのある人民服、戦時には信頼と強さの元帥服で自らを表現したように、プーチンもポピュリストと専制君主で求められる振る舞いが違うことをよく理解している政治的人間なのだ。
本作の見どころは本質を持たないプーチンの姿ではなく、彼の周辺にあると云える。カジュアルなセーターを着こなしたプーチンを囲うメディア関係者と彼の政治的同盟者達、歴史の裁きを恐れるエリツィン元大統領とその家族、もはや過去の想い出しか語ることのないゴルバチョフ元大統領と側近の宴会。彼らの視点からは、強くて民主的なリーダーへの望みが専制君主を生み出す過程となってしまった悲劇的な物語が見えてくる。
ダメになった民主主義の記録は、歴史的経験から観るものにヒトラーの権力掌握を思い起こさせるが、この記録を遠い国に寓話的なものとして捉えるべきではなない。専制君主は常に観客の足元を揺さぶっているのだから。
fromにしの
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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