新興宗教に傾倒する女性と家族を通して“現代社会が抱える闇や不安”を描く『波紋』がいよいよ劇場公開!
©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
次々と降りかかる苦難に感情を抑える女性が、新興宗教を拠り所にし、絶望の中で募った感情を爆発させる姿を描く『波紋』が5月26日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『波紋』は、震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった現代社会が抱える問題に次々と翻弄される家族の姿を描いた人間ドラマ。須藤依子は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫の修が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子の拓哉は障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが…
本作では、『かもめ食堂』『彼らが本気で編むときは、』の荻上直子さんが監督・脚本を手がけ、主人公の依子を筒井真理子さん、夫の修を光石研さん、息子の拓哉を磯村勇斗さんが演じた。
©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
映画『波紋』は、5月26日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や烏丸の京都シネマ、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。
東日本大震災による東京電力福島第一原発事故によって水に関する警戒心を抱き不安な日々を過ごしていく中で、夫が突然疾走したら、妻であり母である女性は、社会の中で生きていこうすると窮地に追い込まれてしまう。そんな状況下において、水に由来する新興宗教を信仰してしまう、というのは自然な流れだろうか。新興宗教に関する高額献金問題が社会問題になっているが、社会で息苦しさを抱えている女性がセーフティーネットとして新興宗教に依存してしまう、というのも一案あるかもしれない。だが、そこから周囲の人間をも巻き込んでしまうから、余計に厄介な出来事を引き起こしてしまう。とはいえ、新興宗教によって全ての問題やトラブルが解決するわけではない。時には、自身以上に長年生きてきた諸先輩によるアイデアによって出口への兆しが見つかるかもしれないのだ。
元々は緩やかな空気が流れているようなヒューマンコメディドラマな作品を多く手掛けてきた荻上直子監督は、近年では社会時事や社会問題を作品の一要素として取り入れた作品を手掛けるようになってきた。本作では、いよいよ直接的な表現を以て制作しており、実に興味深い。主演である筒井真理子さんは、深田晃司監督作品で強烈な印象が残る役を演じており、本作でも自身の演技力を存分に披露している。クライマックスでは見事な御姿を見せつけており驚かされるが、それによって主人公の依子が一人の女性としてアイデンティティを確立させたことを表現していた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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