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自分のした行為によって誰かが救われたり失われた魂が報われたりすれば…『仕掛人・藤枝梅安』豊川悦司さんと田山涼成さんと河毛俊作監督を迎え舞台挨拶開催!

2023年2月4日

江戸の町を舞台に、鍼医者という表の顔と冷酷な仕掛人という裏の顔を持つ男を描く『仕掛人・藤枝梅安』が全国の劇場で公開中。2月4日(土)には、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマに豊川悦司さんと田山涼成さんと河毛俊作監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『仕掛人・藤枝梅安』は、池波正太郎さんのベストセラー時代小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズを、池波正太郎生誕100年となる2023年に豊川悦司さん主演で映画化した2部作の第1部。江戸の郊外、品川台町に住む鍼医者の藤枝梅安には、腕の良い医者という表の顔と、生かしておいてはならない者たちを闇に葬る冷酷な仕掛人という裏の顔があった。そんな梅安がある日、料理屋を訪ね、仕掛の標的であるおかみの顔を見た瞬間、思わず息をのむ。その対面は、梅安自身の暗い身の上を思い出させるものだった。これまでにも緒形拳さん、田宮二郎さん、萬屋錦之介さん、小林桂樹さん、渡辺謙さんらが演じてきた梅安役を新たに演じる豊川さんをはじめ、片岡愛之助さん、菅野美穂さん、小野了さん、高畑淳子さん、小林薫さんらが顔をそろえる。そのほか、第1部ゲストとして柳葉敏郎さん、天海祐希さん、早乙女太一さんが出演。監督は『星になった少年 Shining Boy and Little Randy』の河毛俊作さんが務めた 。

 

今回、上映後に豊川悦司さんと田山涼成さんと河毛俊作監督が登壇。豊川さんは「大阪はあったかいですよね。人もあったかい。僕はホームなんで、気が楽ですね」とお客さんに親しみを込めていく。前日まで京都で仕事をしていた田山さんは「出たがり田山としては嬉しくなって飛んで参りました」と意気揚々だ。

 

関西のお客さんから頂く反応について、豊川さんは「レスポンスが早い気がします。皆さん、せっかちなのか。関西人の血なのか」と反応の速さを感じている。田山さんが演じた役について、豊川さんは「田山さんと天海祐希さんのシーンが凄く好きで。内容的にはコメディタッチな部分もあるんですけども、その奥に愛だけで繋がらなかった男と女の切なさみたいなものが見えて、天海さんの中にも田山さんの中にも見えて、ジーンときましたね」と浸透していた。これを受け、田山は感謝しながら「私、この世界、長いんですけど、携帯電話を持ち始めた時、初めて女優さんと電話番号交換したのが天海さんだったんですよ」と告白。豊川さんは「多分、それは本人覚えていないと思いますよ」とツッコミしながらも、田山さんは「それで、ショートメールで連絡を取り合っていた。それが断ち切れて。今回、このチャンスを頂いたので、メールがきました。嬉しかったですね」と喜んでいる。現場での共演を楽しんでおり「共演者としては、物凄くやりがいのある、楽しい現場でした」と振り返った。

 

藤枝梅安について、豊川さんは自身と比べてみて「僕は梅安さんみたいに強くないので。毎日、彦さん家に遊びに行っちゃうと思います」と本音を漏らしながらも「自分が抱えている矛盾にきっちり向き合おうとしているところが男らしいな」と魅力を感じている。「目を背けずに自分の欠点や迷いにきっちり向き合おうとしている」と気に入っており、翻って「僕は下ばっかり向いています」と自身を謙虚に捉えていた。天海さんとの共演について、田山さんは「どんな役をやられても、素敵な方だなぁ」と改めて感じており「美しい人だなぁ」と印象深く「楽しい現場でした。本当に幸せでした」と満足げだ。また、豊川さんが演じた藤枝梅安について「何人もの梅安を観てきましたが、豊川さんはピッタリ。冷たいまなざし、ピッタリだと思いませんか」と劇場にいる豊川さんのファンに向けて伺っていた。

 

藤枝梅安が備える哲学的要素について、河毛監督は「良いこともすれば悪いこともする。悪いことをしながら、それと知らず良いことをする。人間は矛盾を抱えているグレーな生き物。大人になればなるほど、人生の経験が長くなればなるほど、そういう面を抱えつつ、それでもなんとか生きていかなければいけない。その中で生きる楽しみを僅かに見つけて日々を過ごしていく」と説く。そして「昨今、ネット社会の発達もあり、物事を善悪ではっきり切り分けなければいけない状況がある気がする。そういう時代に、人間のグレーな部分を抱えながら、それでも人と折り合いをつけて生きていく。今の時代に問いかけてくるものがある」と感じている。また、ダークヒーローとして藤枝梅安を捉え「悪い人をやっつけて正義の人だ、という顔を梅安も彦次郎もしない。どこかで、いつかは自分も同じような死に方をしていくんだろうな。苦いものを抱えつつ、自分のした行為によって、僅か乍らでも誰かが救われたり、失われた魂が報われたりすればいい。謙虚なダークヒーロー。そういうところに池波先生の哲学があり、意識して作った」と解説していく。

 

作品が令和の時代に通ずることについて、豊川さんは「昔も今も、ほとんど人は変わっていない。コミュニケーションは昔と今では全く違っている。人と人がちゃんと向き合って手の届く範囲で、あるいは、お互いの体温が感じられるような距離感で話したり一緒に行動したりすることは物凄く大事なことだな」と改めて実感している。また「今、SNSで繋がっているんでしょうけど、それだけでは足りない繋がりが存在している。今あるような問題は、どんどん綻びの中から出てきているような気がしてしまう」と感じており「もう一度、原点に立ち返って、人と人が向き合う。会う、出会う、という言葉の意味を、もう一度大事にしてもいいんじゃないか」と訴求していく。

 

見逃さないでほしいお気に入りシーンについて聞かれ、豊川さんは「関西人だったら、鴨川の風景。自分達が観ているものとは違っている。誰も見ておらず、当時の写真は残っていません。でも、この映画の中の町の風景、江戸も京も、もしかしたら、あぁいう感じだったんじゃないかな、と想像させてくれるような風景は監督が物凄く拘って作られた画だと思います。なかなか他の映画では、ここまで作り込むことはないと思います」と風景をお薦め。田山さんは「物凄くハッキリとした輪郭の人間達がどどっと登場してくるんです。そこに夫々の生き方がある。それを俯瞰して監督が観ていらっしゃる。それを映像にした時の音楽やカット割りによって何かが画の中に表れている。全体を見て俯瞰してみると、素敵な音楽やカット割りや色合いが素晴らしく気持ちのいい作品でございます」と絶賛。河毛監督は「見所は、全部だよ、としか応えられない。作品は、トータルで楽しんでもらうつもりで作っている」と困りながらも「僕が映像を作る上において意識したのは光と影。葛飾応為の浮世絵を見て、あの時代の人が観ていたであろう光と影。座敷の奥で弱くなっていき最後に一滴のように残った太陽の光といったことを意識した。撮る前に、谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』を読み返して、文学的な光と影も含めて意識して頂いた。それが気持ちよく上がっている。光と影を浴びて頂きたい」と思いを込めている。その上で「2時間の中で、非日常の世界の中に心が遊べる。そういう思いでこの映画を気に入って頂けたら、もう一度でも観て頂ければ嬉しいです。俳優さん達が細かい演技をしている。2度3度観て頂ければ、新しい発見や見方があるんじゃないかな」と期待していく。最後に、豊川さんは、4月7日(金)公開の映画『仕掛人・藤枝梅安2』について「全く違った展開が待っております。梅安さんと彦さんで旅をしながら色んな事件に巻き込まれていく凄くおもしろい作品になっております」と楽しみを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『仕掛人・藤枝梅安』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや心斎橋のイオンシネマ シアタス心斎橋や難波のなんばパークスシネマ、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSや、神戸・三宮のkino cinéma 神戸国際や岩屋の109シネマズHAT神戸等で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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