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誰も渡辺紘文監督の素晴らしさに気づいていない…『あなたの微笑み』リム・カーワイ監督に聞く!

2022年12月3日

スポンサーに振り回される映画監督が自分の作品を売りこみに全国のミニシアターを訪ね歩く姿を、インディーズ映画あるあるを交えて描く『あなたの微笑み』が12月3日(土)より関西の劇場でも公開。今回、リム・カーワイ監督にインタビューを行った。

 

映画『あなたの微笑み』は、『COME & GO カム・アンド・ゴー』のリム・カーワイ監督が映画監督の渡辺紘文さんを主演に迎え、不器用で憎めない映画監督がインディーズ映画界の底辺で自身と向き合う姿を描いたロードムービー。地元の栃木で映画制作集団「大田原愚豚舎」を旗揚げし、東京国際映画祭でも受賞歴を持つ渡辺紘文さん。しかし大手映画会社から依頼が来ることもなく、今では脚本も書けずにいた。そんなある日、旧知のプロデューサーから沖縄での映画制作を打診された渡辺は意気揚々と現地へ向かうが、“社長”と呼ばれる男に無理難題を押し付けられた挙句に追い出されてしまう。自分の映画を上映してくれる劇場を求めて日本各地のミニシアターを訪ね歩く旅に出た渡辺は、道中で出会った不思議な少女に導かれていく。

 

5年前に東京国際映画祭のカフェで渡辺紘文監督と知り合ったリム監督。毎年、東京国際映画祭に作品を出品しており、よくカフェで話し合っていた。現在の映画について語り合い「映画に対する考え方も似ているところがあり親近感を持っている。とはいえ、彼の映画と僕の映画は全く違う。だが、映画に対する同じような考え方を持っている」と意気投合している。

 

2020年、コロナ禍によってミニシアターが話題になったことを気にかけ「ミニシアターで映画を観て育ててもらったので感謝の気持ちが強い。応援もしたい。普段はクラウドファンディングをやらないが、初めて寄付(ミニシアター・エイド)を行った」と明かす。だが、本作に関しては「映画を作って応援するつもりで映画を作っているわけではない。あくまでも、日本でロードムービーを作りたい。しかも映画監督についての話を作りたい」と述べ「ロードムービーで全国を周ろうとすると、自主映画の監督が自分の映画を地方の映画館に持ち込んで上映してもらうことは、成り行きとして納得しやすい」説く。

 

主役となる映画監督役について、リム監督から渡辺監督へ直接オファーしており「映画監督を演じてもらえる人が必要。自分の周りにいる自主映画の映画監督で、演技が出来て、存在感のある人は彼しかいない。この企画は最初から彼しかいない」と直感。「渡辺さんが出演してくれなかったら、自分が出演することも考えていた。出演してくれてよかった」と安堵している。なお、渡辺さんへの当て書きはしておらず「そもそも脚本がない。行き当たりばったりしながら、状況に合わせて、当日や前日の思いつきで物語の展開を考えていく」と明かし「実際の渡辺さんはおもしろいですから。大田原でずっと映画を撮っており、知り合いが沢山いる。彼がどんなところに住んでいるのか」と興味津々だ。

 

ロードムービーである本作は、沖縄県から北海道まで映画館を訪れていく。「沖縄で撮るとしたら、おもしろい劇場があるかロケハンする。自分が一番惹かれるのは、首里劇場」と挙げ「沖縄の次は九州。九州で一番撮りたいのは別府。毎年、大好きな温泉巡りをしている。湯けむりが美しいし、別府のパワーがある。自然に惹かれ別府で撮りたくなった。別府で映画を撮るとしたら、別府ブルーバード劇場」と次々に伺いたい映画館が出てくる。本作に相応しい映画館を探していく過程について「自然とブルーバード劇場に辿り着いた。支配人のテルさんを初めて知った。日本で現役最年長の支配人だと知らなかった。会ってみたら、おもしろそうな人で出演を依頼した」と振り返り「脚本はないですが、ロケハンをして気に入った場所を探して、おもしろそうな人に出会い、彼等を基にして映画に作っていく」と流れに任せて制作していくプロセスを説明。渡辺さんからは「自分がリムさんを演じているんじゃないか」と聞かれると同時に「リムさんを演じるつもりでやっている」と言われた。リム監督自身も「自分の話ではある」と認識しており「僕も売れない映画監督でもある。僕自身も仕事のオファーがない」と漏らす。

 

ロケ地となった映画館の中で、兵庫県豊岡市にある豊岡劇場だけは最初から知っており、撮ることを決めていた。「主要都市では僕の映画を上映してくれるところは決まっている。だけど、地方は決まっていない。自ら営業していない」と打ち明け「昨年4月に豊岡劇場が特集上映してくれ、初めて伺い舞台挨拶をしに行った。豊岡劇場は立派な劇場。上映してもらってインスピレーションも生まれてきて、ぜひ撮りたい」と本作の企画がなかった段階で決断。豊岡劇場の石橋秀彦支配人から「ここで映画を撮るなら全力で協力します」と仰ってもらい、本作にも出演してほしかったが「絶対駄目」と言われてしまう。「豊岡劇場がメインの舞台になっていくので、役者を探すしかない」と決意し「最初は、尚玄さんを考え、お願いし承諾頂いていた。結局、諸般の事情により沖縄での社長役を演じることになった。そこで、リム監督が親交のあるコピーライターの田中泰延さんが演じるることを思いつき「丁度良いんじゃないか」と直感し、お願いし快諾してもらっている。

 

北海道浦河町にある大黒座は、本作の中で一番辿り着きにくい場所にあり「札幌からバスに乗って4時間かかる。スタッフも大変。撮影時は本当に大雪で、帰ることが出来なかった。2日間以上、町に閉じ込められた。一番大変だった」と苦笑い。北海道は事前にロケハンし「未来の話にしよう」と決め、取り組んでいた。「如何にして未来を見せるか」とハードルになったが「低予算映画でCGを使わず、セットも組めない。未来の渡辺さんを予測してやるしかない」と試行錯誤しながら、北海道での撮影に挑んでいる。

 

渡辺紘文監督については、リム監督は「日本の北野武のようなもの。誰も彼の素晴らしさに気づいていない」と受けとめており「主演は今作が初めて。もったいない。存在感があり、キャラクターがおもしろい。この映画はおもしろくなる」と確信していた。実際にカメラを回してみて「やっぱり良いな。最初のカットから、これはおもしろくなる」と手応えを得ていた。実際の渡辺監督について「凄く真面目で、謙遜しているシャイな人ですね」と表し「彼は、試行錯誤しながら撮っている。最初は、好感度を持てる人間ではなかった。作品を観ていくうちに、徐々に感情移入して好きになる。悪い人ではなく、実は可愛い人。意図を以て人物像を作ろうとしていた。問題を起こすのは演技であって、リアルな渡辺さんではない」と真摯に語る。

 

なお、撮影終了後、リム監督は編集時にもう一度構成し直すことが多く「最初に意図があっても、編集後は全く違う用途でシーンが使われることもある。スタッフも役者も驚く」と反応を楽しんでおり「渡辺さんも完成品を観て納得してくれた。おもしろい、と思ってくれた」と一安心。リム監督の作品は三部作となることが多いが「これも三部作を作ろうとしている。次はカンヌ国際映画祭に自分の作品を出品しようとする。3作目はハリウッドに映画を売りに行く」と構想しており、期待は膨らむばかりだ。

 

映画『あなたの微笑み』は、関西では、12月3日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、2023年1月14日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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