フランスの片田舎で凍死体として発見された少女が死に至るまでの数週間が描かれる『冬の旅』が2K修復版として関西の劇場でも公開!
(C)1985 Cine-Tamaris / films A2
アカデミー賞や三大映画祭で功績を残したアニエス・ヴァルダ監督による、1985年の『冬の旅』が2K修復版として12月2日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『冬の旅』は、さすらいの末に凍死した少女が死に至るまでの足取りを描いた作品。冬の南フランス。片田舎の畑の側溝で、18歳の少女モナが凍死体となって発見された。ヒッチハイクをしながらあてのない孤独な旅を続けていたモナが命を落とすまでの数週間の道程を、彼女が路上で出会った人たちの証言を通してたどっていく。
本作は、フランスを代表する映画作家アニエス・ヴァルダが、1985年の第42回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞に輝いた作品。『仕立て屋の恋』のサンドリーヌ・ボネールが主演を務め、『昼顔』のマーシャ・メリル、『ふたりの5つの分かれ路』のステファーヌ・フレス、『セラフィーヌの」のヨランド・モローが共演。フランスでは当時100万人を超える動員を記録し、バルダ監督最大のヒット作となった。
(C)1985 Cine-Tamaris / films A2
映画『冬の旅』は、関西では、12月2日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、12月3日(土)より神戸・元町の元町映画館、12月9日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。
2019年3月、生涯現役を貫き90歳で逝去した映画作家アニエス・ヴァルダ。今回、2K修復版として初めて『冬の旅』を観た。冒頭、フランス片田舎の畑の側溝で少女が凍死体が発見される、というショッキングな映像から始まる。誰に殺された様子はなく、自死あるいは事故死だったとしたら、何故このような事態に至ったのか、疑問に思いながら、観る者は、この少女、モナの直近の出来事を見せつけられていく。誰に追われ逃げているのかな、と一考したが、そういった素振りはなく、でも、警察に遭遇しそうになると、避けようとする。次第に、世の中からの逃避行をしているように思えた。社会に馴染もうとしたことはあるが、結局は将来に明るみがあるとは思えなかったのだろうか。ならば、この世界の片隅を漂流しようとしたのではないか、と思わされてくる。ならば、近年に公開された作品を思い返せば『ノマドランド』に近い雰囲気があると気づかされていく。2022年の今に公開される意味もある。しかし、モナの行く末を考え、凍死に至る描写には刹那さしか感じ得ない。大いに心を揺さぶられた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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