自閉症の息子と母親の揺るぎない親子の絆と他者との触れ合いを描いた『梅切らぬバカ』がいよいよ劇場公開!
(C)2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト
自閉症の息子を抱えた母親が、自分のいなくなった後の息子を案じて、自立の道を模索しながら、それまで離れていた地域のコミュニティに関わっていく姿を描く『梅切らぬバカ』が11月12日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『梅切らぬバカ』は、老いた母と自閉症の息子が地域コミュニティとの交流を通して自立の道を模索する姿を描いた人間ドラマ。山田珠子は古民家で占い業を営みながら、自閉症の息子である忠男と暮らしている。庭に生える梅の木は忠男にとって亡き父の象徴だが、その枝は私道にまで乗り出していた。隣家に越してきた里村茂は、通行の妨げになる梅の木と予測不能な行動をとる忠男を疎ましく思っていたが、里村の妻子は珠子と密かに交流を育んでいた。珠子は自分がいなくなった後のことを考え、知的障害者が共同生活を送るグループホームに息子を入れることに。しかし環境の変化に戸惑う忠男はホームを抜け出し、厄介な事件に巻き込まれてしまう。
本作は、映像産業振興機構(VIPO)が商業映画監督の育成を目的に行っている文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の長編映画として製作された。『第三の肌』『禁忌』の和島香太郎さんが監督と脚本を担当。加賀まりこさんと塚地武雅さんが親子役で共演。加賀さんにとっては1967年の『濡れた逢びき』以来54年ぶりの映画主演作となった。珠子の家の隣に引っ越してくる里村夫婦役で渡辺いっけいさんと森口瑤子さんが出演。里村家の息子である草太を斎藤汰鷹さん、グループホームの運営に反対する乗馬クラブのオーナーを高島礼子さん、グループホームの代表を林家正蔵さんが演じる。
(C)2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト
映画『梅切らぬバカ』は、11月12日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸などで公開。
自閉症の息子である忠男は、時間に対して正確な行動をとり、自身の感情に対して素直に動いていく。周囲の人々にとって、時と場合によってはワガママに感じてしまうこともある。だが、忠男ことチューさんの行動に対して本質を見極めると、間違ったことはしていない。チューさんの姿を見ながら、近隣に住む人間の行動が変化していくことも本作では描いている。周囲の理解があってこそ、チューさんが生きていくことが出来る地域や世界が出来上がっていく。
本作のタイトルは、対象に適切な処置をしないことを戒める「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という諺に由来しており、人間の教育においても桜のように自由に枝を伸ばしてあげることが必要な場合と、梅のように手をかけて育てることが必要な場合があることを意味している。チューさんの母親である珠子さんは、自身が老いていくことを認識しながらも、チューさんを自由に成長させていくと同時に、観客側も現実の世界における相互理解の重要性も問い質されていく。77分のシンプルな作品ながらも、人間が生きていく上で大切なことを教えてくれる。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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