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犬や猫に関わる人がどう生きるか、現実を切り取った大事な作品…『犬部!』篠原哲雄監督に聞く!

2021年7月22日

捨て犬や捨て猫を救うべく、風変わりな獣医学部生が仲間と共に動物保護サークルを立ち上げる姿と、16年後に再会した彼らの人生模様を描く『犬部!』が7月22日(木)より全国の劇場で公開される。今回、篠原哲雄監督にインタビューを行った。

 

映画『犬部!』は、青森県北里大学に実在した動物保護サークル「犬部」を題材に描いた青春ドラマ。片野ゆかさんのノンフィクション「北里大学獣医学部 」を原案に、『』『花戦さ』の篠原哲雄監督がメガホンをとり、動物保護をテーマにしたドキュメンタリーを手がけてきた映像作家の山田あかねさんが脚本を担当した。子どもの頃から大の犬好きだった獣医学部生の花井颯太は、目の前の命を救いたいという一途な思いで動物保護活動を続けてきた。そんなある日、心を閉ざした1匹の実験犬を救ったことをきっかけに、動物保護サークル「犬部」を設立。同じく犬好きの同級生の柴崎涼介ら仲間たちと共に動物まみれの青春を駆け抜け、やがてそれぞれの夢へ向かって羽ばたいていく。16年後、獣医師となっても熱心に保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという報道を受け、かつての犬部のメンバーたちが再結集するが…
主人公の颯太を林遣都さん、相棒の柴咲を中川大志さんが演じる。

 

高校時代からご自宅では犬を飼っていた篠原監督「黒い犬だったのでロクって云います。青春時代を共に過ごしていましたね」と振り返り「当時、自主映画の題材は、ほぼ毎日の帰宅後に犬の散歩をしながら考えていた。犬は僕を待っていた」と思い返す。だが、犬や猫の保護活動に対しては、無自覚だった。「犬が病気を患った時に獣医のお世話になる。獣医さんとは治療してくれる人という認識。可能な場所では動物はできるだけ自由にしてあげた方が良い」と考えていたが「自由にしてあげるために放し飼いをする。これは、却って動物を大切にしていないことになる」と本作のモデルである太田快作先生の活動を知って思い知らされていく。

 

学生時代の太田先生は「外科実習をやりたくない。何故犬を殺さなきゃいけないんだ」と当初から考えていた。外科実習用に託された犬が逃げたところを太田先生が見つけ一旦は大学側に戻し後悔したが、その犬が太田先生のところに戻ってきて、実習で殺さない特例とする手続きが行われた経験をしている。太田先生や犬部の後輩が経験したことは、片野ゆかさんによって「北里大学獣医学部 犬部!」という書籍となり、これを原案として、犬や猫の命をテーマにした作品を多く手掛けている山田あかねさんが本作の脚本執筆を担った。現在、犬部は「北里しっぽの会」という名前で存続しているが、獣医師となった今でも同様の活動を太田先生はしており、本作について「非現実的かもしれないが、過去と現在を同じ目線で描きたい。過去の回想ではなく、現在と過去を同じレベルの出来事として考えた」と脚本の意図を篠原監督は解説する。

 

2019年末、主人公の花井颯太役に林遣都さんが決まり「バディーの相手は中川大志さんが良いよね」と話し合っていた。彼等は同じ芸能事務所に所属しており「林君が『中川君と一緒にやりたい』と思っている」と知り「お互いに歩み寄って調整した結果、撮影が可能になった」と一安心。今となっては「この2人が揃わないと、全く違う映画になったんじゃないか」と思っている。彼等が備えている俳優としての資質について「中川君は考え込んで入り込むタイプ。林君は冷静に自分を見て役作りをする」と受けとめており「中川君が演じた柴崎は思い込んで自分の世界に入り込む場面が多い。林君は中川君の役に対するアグレッシブな追求を理解し、自身をも調整していく度量をもつ」とアプローチの違いも認識していった。また「中川君は自分を鼓舞しながら現場に臨んでいる。ぐっと入り込むスタイルを自分で作っていた」と明かし「2人での芝居が多かったので、シーンを積み重ねていくと、設定の背景にあるリアリティを模索する必要がある」と気づき、現場での演出も熟考している。そして、颯太の後輩で猫好きの佐備川よしみを大原櫻子さんが演じているが「普通なら男女の間柄になってもいい距離感なのにそんなことを超越する間柄」と設定。「太田先生はおそらくそういう人だったんだろう。異性より犬という人だったんじゃないか」と考察している。なお、篠原監督もカメオ出演しており「出演するのは嫌いじゃないです。チャンスを狙っています」と冗談を言いながらも「俳優が出演する必要がない場合でも、何気なく誰かが居る必要がある。エキストラに任せるわけにはいかない状況もある。林君は『なんで監督がいるんですか。芝居しづらいじゃないですか』と面喰っていましたね」と明かした。

 

クランクインは昨年7月。犬や猫がいる中での撮影は大変だと思っていたが「動物プロダクションの方による対応は丁寧だった。彼等のおかげで出来た」と安堵している。花子を演じた”ちえ”や太郎役の“”きぃ”は動物プロダクション内でオーディションが行われており「一押しの犬と会っている間に自然と決まっていく。自然と花子と太郎は決まった」と話す。外科実習用に託された犬であるニコを演じた犬については「若い犬だけど元々は野良犬だったと聞く。人間と接するのが苦手なタイプ」だと説き「林君が懸命に数日前から仲良くしていた。林君はロケ先の青森に先行して入ってニコと戯れる時間を作っていた。そうやって林君だけに懐くようにしている」と解説。林さんや中川さんは、通常の作品とは違ったスタンスで演じており「犬を通して役に入り込んでいる。犬が一番の共演者である。彼等はバディだけど犬ともバディ。忠実にやってくれている」と感心している。なお、多頭飼育崩壊の現場を描いたシーンもあり「動物プロダクションと実際の現場にいる犬に対し慎重に対応している。美術部が殺伐とした現場を作ったり区画分けしたりと気を遣った設計をし、杜撰な飼育現場を再現している」と言及した。

 

本作では、保護犬や保護猫の譲渡会についても描写している。篠原監督自身も実際に訪れたことがあり「この子が可愛いなぁ。いずれまた飼おうかな」と考えていた。だが「犬を託す側も慎重に犬の個性を伝えないといけない。犬と関わっていける方であるか、飼い主希望の人達を見ている。だからこそ何度も会って上で判断している」と主催者の慎重な姿を真摯に受けとめ「『飼いたいな』と思うけど、安易な飼い主になり兼ねない。保護犬や保護猫を助けることは良いことだけど、自身の状況に照らし合わせてみると、現在の環境下でしっかり出来るだろうか」と気づかされていく。今作について「保護犬や保護猫を知らない人にとっても考えさせられる作品。制作依頼を受けた時、犬や猫が可愛いだけの映画だったら応じなかった。犬や猫に関わる人がどう生きるか、という映画なので監督しています」と述べ「世の中にある矛盾に関して異を唱えていく若者の話だと捉えていくと、普遍性を兼ね備えた題材で、映画が現実を掬い取っていけるような作品を目指した」と印象深く語っている。

 

映画『犬部!』は、7月22日(木)より全国の劇場で公開。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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