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目で見ることだけが“みる”じゃない…障害者の表現活動の可能性を探ったドキュメンタリー『へんしんっ!』が関西の劇場でもいよいよ公開!

2021年6月23日

(C)2020 Tomoya Ishida

 

電動車椅子の生活を送る石田智哉監督が、全盲の俳優や手話通訳者、振付家・ダンサーに取材しながら、“しょうがい者の表現活動の可能性”を探っていく姿を描く『へんしんっ!』が6月25日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『へんしんっ!』は、第42回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2020」グランプリに輝いたドキュメンタリー。電動車椅子を使って生活する石田智哉監督は、「しょうがい者の表現活動の可能性」について探るべく、演劇や朗読で活躍する全盲の俳優・美月めぐみさんや、ろう者の通訳の育成に尽力するパフォーマーの佐沢静枝さん、多様な「ちがい」を橋渡ししている人々を取材する。石田監督は撮影スタッフ、録音スタッフの2人と対話を重ねながら、映画制作を進めていく。やがて石田監督は、「しょうがい」を「コンテクストが違う身体」と表現する振付家・ダンサーの砂連尾理さんに誘われ、パフォーマーとして舞台に立つことになる。日本語字幕、音声ガイドありの「オープン上映」で劇場公開。

 

(C)2020 Tomoya Ishida

 

映画『へんしんっ!』は、関西では、6月26日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、7月23日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

しょうがい者にスポットをあてたドキュメンタリー、或いは、しょうがい者が監督を務めたドキュメンタリーは、これまでいくつもあった。だが、本作は、今まで以上にしょうがい者である映画監督が全面に出ている作品である。すると、撮影スタッフや録音スタッフの方もこれまでにない状態でカメラに捉えられていた。ありそうでなかった斬新なドキュメンタリー作品である。映画は、出演者とスタッフ全員がしっかりと手を組んでこそ出来上がる芸術作品であることを改めて認識させられた。

 

本作では、石田智哉監督が「しょうがい者の表現活動の可能性」について探求していく。全盲の俳優やろう者のパフォーマー、そして、しょうがい者と共に表現する活動をしている振付家兼ダンサーと出会い、未知の世界を監督が開拓していく姿は興味深い。最終的には、電動車椅子から離れてパフォーマーとして舞台に立ってしまう。可能性は無限大であると改めて感心させられた。彼の姿に対し、人によっては”頑張っている”と称えるかもしれない。だが、この言葉の意味は表裏一体。頑張っていることは当たり前であり、本質的なことから目を背けているかもしれない。この真理に気づいた時、しょうがい者と健常者の壁は取り払われ、1人の表現者との真摯な相互理解が必要であること気づかされる。

 

なお、本作は、日本語字幕と音声ガイドがある「オープン上映」の形式を用いて一般劇場で公開していく。石田智哉監督は、探求したものを表現するためであり、劇場に集った観客でみることによる気づきや発見をシェアしたいという思いから、この「オープン上映」を選んでいる。近年では、「UDCast」や「HELLO!MOVIE」といったスマートフォン向けアプリによって徐々に映画ファンにも音声ガイドが浸透してきた。しょうがい者だけでなく、健常者の方が聴いても参考になる作品解説として成立している。河瀬直美監督の『光』を観ると、解説を盛り込み過ぎると却って邪魔になると気づかされた。総合芸術である映画を堪能するために熟考を重ねている音声ガイドと日本語字幕をフラットに楽しめる「オープン上映」を存分に体感してもらえたら、と願うばかり。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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