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全5章からなる3時38分で語るドイツ100年と家族史、トーマス・ハイゼのドキュメンタリー『ハイゼ家 百年』が関西の劇場でもいよいよ公開!

2021年5月15日

(C)ma.ja.de filmproduktions / Thomas Heise

 

旧東ドイツ出身のトーマス・ハイゼが監督を手がけ、自身の家族が19世紀後半から保管してきた遺品からハイゼ家の歴史を捉えたドキュメンタリー『ハイゼ家 百年』が5月22日(土)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『ハイゼ家 百年』は、旧東ドイツ出身の映画作家トーマス・ハイゼが、自身の家族を通して激動のドイツ100年史に迫ったドキュメンタリー。ハイゼ家が19世紀後半から保管してきた日記、手紙、写真、音声記録などの遺品を紹介しながら、ハイゼ監督自らのモノローグで3時間38分かけて語る。2度の大戦、ナチスの台頭、ホロコーストの記憶、冷戦による東西分断、秘密警察シュタージによる支配、ベルリンの壁崩壊、そして冷戦後も続く国家による暴力に希望を打ち砕かれる人々。激動の時代に翻弄されたハイゼ家の壮絶な歴史を振り返る。第69回ベルリン国際映画祭でフォーラム部門の最高賞にあたるカリガリ賞を受賞した。

 

(C)ma.ja.de filmproduktions / Thomas Heise

 

映画『ハイゼ家 百年』は、関西では5月22日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、京都・出町柳の出町座でも近日公開予定。

東ドイツ出身のトーマス・ハイゼ監督が218分間で描くドキュメンタリーは歴史そのものだ。彼は歴史を描くための創作を徹底的に拒絶しており、彼に連なる人々が帝政ドイツ時代から現代までの100年間で遺した日記や手紙、テープをそのままの形で映像に登場させている。さらに、ハイゼ監督自身が映像を通して伝えたいことや観客に感じさせたいものに再構築することさえ拒んでいるようにうかがえた。観客は、無味乾燥に映された現代ドイツの映像の上に流れる「歴史のむき出し」に直面する。歴史のむき出しは演劇でないから、善悪は描かれない。ヒロイズムも滑稽も悲劇も演出されず、感動も教訓も提供されず。結局、諸々を盛り込んで描かれた歴史はすべて嘘なのだから。

 

本作を鑑賞し続けると、見ず知らずの現代美術館の展示に入り込んだような奇妙な感覚に襲われた。皇帝ヴェルヘルムやヒトラーやホーネッカーによって創造された物語ではない「歴史」に向き合うには、観客が自らの感性で意味づけなければならない。気づいた時には、映画の観客のままでいられるのだろうか。

fromにしの

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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