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心の可視化は映像を通して表現できる…!『メカニカル・テレパシー』五十嵐皓子監督に聞く!

2021年1月10日

とある大学研究所を舞台に、“心を可視化することができる機械“を巡る三人の男女の姿を通して、心や願望とは何かを問いかける『メカニカル・テレパシー』が関西の劇場でも1月15日(金)より公開。今回、五十嵐皓子監督にインタビューを行った。

 

映画『メカニカル・テレパシー』は、大阪を拠点に映像制作者の人材発掘を行っているシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)の第13回助成作品として制作された作品で、これが長編初監督作となる映画美学校出身の五十嵐皓子監督が手がけた。「もしも心を可視化できたら?」ということに着想し、SF的要素と恋愛感情を掛け合わせて描いた異色の恋愛映画。「心を可視化する機械」の開発が行われていた大学の研究室で、実験中の事故により開発者の三島草一が意識不明になってしまう。共同研究者で妻の碧は開発を続け、眠ったまま目覚めない夫の心の可視化を試みていた。成果の出ない開発を疎ましく思う大学側から、機械の調査という名目で送り込まれた真崎トオルは、可視化された草一の姿を目の当たりにするが、その草一は本当に彼自身の本心なのか、あるいは碧の願望が可視化されたものなのか、確信が持てない。徐々に碧にひかれていく真崎は、やがて本当に重要なことは何かということに気づいていく。

 

シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)の助成作品に選ばれた本作。本企画を応募する際に応募条件に過去に作った短編を送付する必要があり、当時の五十嵐監督は、本作のプロトタイプとして短編作品『心を可視化する機械』を監督。テーマは異なる”心を可視化する機械”を用いた作品となっている。「心を可視化することを映像を通して表現できるんじゃないかな」と思いつき「心の可視化をテーマに描こうとしたら、抽象的な表現が様々にある」と検討していく。映画化にあたり「カメラがある中で、俳優が心と体の一人二役で演じたのを分割合成することで、同じ画面に二人で登場したら、心と体を表現できるんじゃないかな」と独自の表現方法を考えた上で、複雑な設定のSFになることに配慮し、観客が作品にのめり込みやすいように、三角関係などのドラマを絡めていった。

 

キャスティングにあたり、当時のCO2で俳優特待生だった吉田龍一さん、白河奈々未さん、伊吹葵さんを起用。企画通過段階で、吉田さんと白河さんに合ったキャラクターをオファーし、伊吹さんにお会いして新たな女性のキャラクターが思い浮かび、アスミ役として出演してもらう。既に濱口竜介監督作『ハッピーアワー』等で活躍していた申さんは前年のCO2俳優特待生であったが、三島草一役にピッタリな俳優として、CO2事務局に紹介してもらい、演技力を確認した上でオファーしていった。なお、登場人物の中でも異彩を放っているのが三島碧。感情表現を抑制したキャラクターであり、脚本段階では更に弱々しくなる可能性もあった。碧を演じた白河さんは、女性でありながらチームを率いる責任者として働いていく姿をしっかり演じており「強い雰囲気がある中で、少しだけ切ない感情を表現できる」と気づき、本作の世界観を構築していく。

 

撮影にあたり、限られた予算の中で可能な限りメインシーンの数を少なくしようと考え、機械がある実験室と外側の研究室のロケーションを分割している。研究室は神戸芸術工科大学、実験室は神戸映画資料館がある商店街の空き店舗を借りて撮影し、順撮り出来るようにスタッフのスケジューリングも配慮し、円滑に撮れるように協力頂いた。なお、元々の脚本は標準語で書いていたが、関西で活躍している出演者ばかりなので、リハーサルでスタッフから関西弁による演技を提案してもらい、違った雰囲気がおもしろく、関西弁での台詞を採用。だが、五十嵐監督にとっては初の長編制作であり、クランクイン初日に脚本は未完成だった。「映画に出演したいというキャスト達のおかげ。途中段階の脚本で皆さんに演じてもらうのを見て、最終日の朝にラストシーンのシナリオが出来ました」と打ち明け「皆さんの演技から、各キャラクターなりの結末が見えたことで書き上げられました。ラストシーンの撮影をしながらシナリオを書いていき、本作の本筋が決まりました」と振り返る。

 

当初、企画段階での仮タイトルは『メカニカル・テレパシー』だったが、編集後に『可視化する心たち』というタイトルにして2017年の第12回大阪アジアン映画祭で上映された。その後、CO2事務局からアドバイスや意見を頂き、もう一度編集し直し、当初の『メカニカル・テレパシー』に戻す。再編集では、抜本的に内容を変えるか悩んだ時もありましたが、最終的に最初のシナリオに沿った内容で劇場公開場版の本作が完成した。既に東京の劇場では公開されており、SFが好きな男性のお客さんから良い反応があったり、女性からも碧への反応が良く、様々な視点があることに気づかされていく。初めての長編作品が完成し公開された現在、五十嵐監督は「凄く良い経験となり、力になりました。撮影でカメラマンの中瀬慧さんが相談にも応じてもらい、撮影技法についてもっと学んでいきたい。もし次に撮るとしたら、自分で構図を組み実験的な短編を撮ってみたい」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『メカニカル・テレパシー』は、1月15日(金)より京都・九条の京都みなみ会館と神戸・新長田の神戸映画資料館、1月16日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォXで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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