画家クリムト&シーレに迫るドキュメンタリー『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』がいよいよ関西の劇場でも公開!
(C)Belvedere, Wien/(C)Belvedere, Wien, Photo: Johannes Stoll/(C)Archiv des Belvedere, Wien, Nachlass Ankwicz-Kleehoven
19世紀末のウィーンを代表するふたりの画家、グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの没後100年となる2018年にイタリアで製作された美術ドキュメンタリー『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』が7月19日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』は、19世紀末のオーストリア・ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの没後100年にあわせて製作されたドキュメンタリー。官能的でありながら、常に死の匂いを感じさせる作品を残したグスタフ・クリムト。クリムトから強い影響を受けながらも新たな表現を模索し続けたエゴン・シーレ。19世紀末のウィーンで花開いたサロン文化と、彼らの作品から匂い立つ官能性と愛に満ちた作品群をさまざまな映像群によって俯瞰し、彼らの生きた時代、そして2人の作品の魅力をひも解いていく。イタリアの新進俳優ロレンツォ・リケルミーがナビゲーター役を務め、ケンブリッジ大学で美術史を修めた女優でモデルのリリー・コールもコメンテーターとして出演する。日本語版ナレーションは柄本佑が担当。
映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』は、7月19日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、7月27日(土)より、京都・烏丸の京都シネマ、8月23日(金)より、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
(C)Belvedere, Wien/(C)Belvedere, Wien, Photo: Johannes Stoll/(C)Archiv des Belvedere, Wien, Nachlass Ankwicz-Kleehoven
冒頭から、膨大な情報量の人物名や作品名、専門用語が流れてくるが、聞き流すくらいで大丈夫。自然に内容が目と耳に入ってくる、とてもよく考えられた構成のドキュメンタリーだ。
クリムトという画家の、金色をふんだんに使用した特異な作風。セックスとは抑えるべきものとされていた時代に生殖器をはっきりと描いた作品を世に送り出した、先鋭的な作風。そんなドラスティックな印象の彼が、実は女性の人権が今よりも弱かった時代にもかかわらず偏見を持たず、人間の生と死を冷ややかに見つけ続けていた、思慮深い人物だったことが紐解かれてゆく展開は、ある種ミステリアスで引き込まれる。
この作品は関東では既に公開済みだが、関西の京阪神ではようやく、しかも少しずつ時期をずらして、この夏の間中ずっとどこかで観られるように公開されることには理由がある。東京ではもう会期が後半かあるいは終了しているが、クリムトを中心としたウィーン美術を鑑賞できる美術展が7月から名古屋で、8月から大阪で、それぞれ大規模に開催される。音楽・文学・写真といった、18世紀末から19世紀初のウィーン総合芸術を堪能することができる美術展に、この映画をあわせて鑑賞できる、またとない絶好の機会なのだ。劇場のスクリーンだと、混雑した美術館に比べて、実物の絵画よりも大きく拡大されたディテールを鮮明に見られるのも嬉しいポイントである。
第一次大戦末期の1918年、オーストリア帝国が崩壊し、スペイン風邪が大流行して多くの人々が亡くなってゆく激動の歴史の中で、20年ほどの短い時間の中を駆け抜けたクリムトら芸術家たち。彼らへの鎮魂歌のように、アコーディオンが物悲しく鳴り響く美しいエンディングを、ぜひ映画館で見届けてほしい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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