島で生まれ、水と共に暮らし生きていく…『ねことじいちゃん』岩合光昭監督に聞く!
小さな島で暮らす男と飼い猫のつつましくも豊かな暮らしを描いた人気コミックを映画化した『ねことじいちゃん』が2月22日(金)の猫の日より全国の劇場で公開される。公開を目前にした今回、岩合光昭監督にインタビューを行った。
映画『ねことじいちゃん』は、世界的に知られる動物写真家の岩合光昭さんが初めて映画監督に挑み、ねこまきさん原作のコミックを落語家の立川志の輔主演で実写映画化したヒューマンドラマ。とある小さな島に住む70歳の大吉は、2年前に妻に先立たれて以来、飼い猫のタマと2人きりで暮らしている。生まれ育ったこの島には幼なじみの巌をはじめ多くの友人や猫がおり、穏やかな日常が流れていた。東京で暮らす息子・剛はひとり暮らしの父を心配しているが、大吉もタマも自由気ままな現在の生活に満足している。しかし、親しい友人の死や大吉自身の身体の不調など、ずっと続くと思っていた日常に少しずつ変化が訪れはじめ……。
ヒロインを柴咲コウさんが演じるほか、小林薫さん、田中裕子さん、柄本佑さんら実力派俳優がそろう。
タマ役のベーコンの愛らしさに関係者らと共に骨抜きにされる和やかな空気の中でインタビューを実施した。
フィクション映画に初挑戦した岩合監督は、まず「大変だった」と物語る。撮影前は「監督は大胆に演出すればいい」と考えていた。だが、最初に「『監督!』と呼ばれて何かと思ったら『お箸の置く場所を決めてください。』だった」と苦笑い。また、主演の立川志の輔さん演じる大吉が自身より年上の70歳の設定であるため「『監督、白髪の位置を決めてください』と言われた。監督は、そこまで決めるのか」と驚くばかり。
普段は写真家として活躍している岩合監督。前作のドキュメンタリー映画『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち』と今作のフィクション映画『ねことじいちゃん』では「撮り方が180度違う」と実感。「キャストと猫を隔てなく立体的に撮ることに苦労しました。通常の映画ではキャストだけ、前作のドキュメンタリーではネコだけを輝かせればよかった。今回はどちらも主になるよう、画角に入れなければいけない」と気づいていく。そこで、照明のチーフにお願いし、猫用の小さなライトを準備してもらい、見切らないように画面に隠し、猫が立体的に見えるように撮影に挑んだ。この手法について「普通は、猫が動いてしまうので、ドキュメンタリーでは出来ない。今作は演出を加えた劇映画なので、照明の数はいつもより格段に多い」と解説する。
撮影は総勢37匹の猫を島に連れて実施。まさに猫が中心となった「猫映画」はヒロインのミチコさん役である柴咲コウさんを筆頭にスタッフ・キャスト共々猫好きが集結した。もちろん猫好きの岩合監督は、特にお気に入りのシーンとしては「水」のシーンを挙げる。「島の自然環境を取り入れたかった。島感を出すために水をテーマにしました。猫が水を飲むシーンは5回出てきます」と意識しており「島で生まれたその日から、暮らし死にゆくまで、島の水を飲む。生きることの根底」と考えている。自然を描くことを目的にしながら、同時に、老人問題も入り込んでくるため「俳優さん達にパステルカラーの服を着てもらいながら、ファンタジー要素も強調したい」と心がけた。
初めてのフィクション映画をスタッフ・キャストの協力の下で撮り終えた岩合監督は、次回作について「正直に言えば、次を考える余裕はない」と告白。「この映画を楽しく観客の方々に観てもらい、笑顔で映画館を後にして頂ければ」と、不安と期待がありながらも強く願っている。「最後は昔話のような終わり方にしたかった」と語りながら、終始にこやかな表情で取材に応じて頂いた岩合監督と、終始異様な落ち着きぶりを見せてくれたベーコン。二人の想いが詰まった映画『ねことじいちゃん』は、2月22日(金)の猫の日より、全国の劇場で公開。
fromマツコ
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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