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吉積めぐみさんの眼差しを以て若松孝二監督の背中を追いかけた…!『止められるか、俺たちを』井浦新さん、毎熊克哉さん、高岡蒼佑さん、白石和彌監督を迎え舞台挨拶開催!

2018年10月20日

1969年を舞台に、“若松プロ“の門を叩いた少女の目を通して、若松監督ら映画人が駆け抜けた時代と生き様を映し出す『止められるか、俺たちを』が関西の劇場でも10月20日(土)より公開。公開初日には、大阪・十三の第七藝術劇場に、井浦新さん、毎熊克哉さん、高岡蒼佑さん、白石和彌監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『止められるか、俺たちを』は、2012年に逝去した若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクションが、若松監督の死から6年ぶりに再始動して製作した一作。1969年を時代背景に、何者かになることを夢みて若松プロダクションの門を叩いた少女・吉積めぐみの目を通し、若松孝二ら映画人たちが駆け抜けた時代や彼らの生き様を描いた。

門脇麦さんが主人公となる助監督の吉積めぐみを演じ、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』など若松監督作に出演してきた井浦新さんが、若き日の若松孝二役を務めた。そのほか、山本浩司さんが演じる足立正生、岡部尚さんが演じる沖島勲など、若松プロのメンバーである実在の映画人たちが多数登場する。監督は若松プロ出身で、『孤狼の血』『サニー 32』など話題作を送り出している白石和彌さん。

 

上映後、井浦新さん、毎熊克哉さん、高岡蒼佑さん、白石和彌監督が登壇。白石監督は威勢よく「若松プロが帰ってきました!」と挨拶。井浦さんは「若松孝二監督の作品を大阪で上映する時は必ず十三の第七藝術劇場、と決まっていたので、白石監督の下、若松孝二監督役を演じさせて頂いて嬉しく思います」と思いを込める。毎熊さんは「若松監督とお会いしたことがなく、若松プロダクションとは初めてだったんですが、若い者を迎え入れて下さって嬉しいです」と謙虚にご挨拶。高岡さんは「今日は朝イチにうんこを踏みまして…劇場を満員にして頂いたので、運を引き連れてきたのかな」とお茶目に話す。

 

本作制作の発起人は白石監督。関係者に話しながら「誰か一人でも『師匠を映画にするのはないよ』とネガティブな意見が1個でもあったら即終了にしよう」と心積もり。だが、誰も反対せず。白石監督自身も無茶ぶりだと分かっており「まだまだ元気な方もおり、文句を言う方がいるはず。作ること自体がどうなんだ」と認識していた。「新さんも断ってくれないかな、と思っていたが、オファーしたら受けてくれた」と困惑。これを受け、井浦さんは「最初にネガティブな反応をしたのは僕だと思う。本気ですか?簡単に考えていないですか、白石さんは?」と返したことを明かす。とはいえ、若松プロダクションからの正式なオファーでもあり「監督が旅立ってから6年経ち、若松プロダクションがまた動き出す」と喜んだ。復活第一弾作品を白石監督が撮ることについて「僕にとっては一番美しい形。そこから始まらないと、若松プロダクションの再始動はありえない。絶対に断れない」と確信。断るつもりはなく「若松監督は僕もよく知っている。僕の恩師なので、演じられないと思っていたが、こうやって皆さんに観て頂けるところまで至ったので、今は胸を張ってこの作品を多くの方達に観て楽しんで頂きたい」と太鼓判を押す。

 

若松プロダクションに初参加した毎熊さんは、若松プロダクションの方にお会いしたことがなく「怖くて野蛮な人達がいる」と想像していた。だが「知らないが故に踏み込める。迷うことなく演じさせて頂きたい」と決意する。演じることになったガイラさんに会いに行くと「凄い怖かった。ずっと高度なジョークを言っていた」と告白。若松プロダクションに所属していた当時について伺い「楽しかったということ以外覚えていないんだよな」と聞いた。そこで「自分も映画を作ろうと思い立ち、この世界を目指した。映画を作っている仲間と純粋に楽しもう」とモチベーションを確立する。

 

若松監督が撮った最後の作品『千年の愉楽』に出演した高岡さんは、自身の範囲内で若松監督を理解している自負があった。今作では、大島監督を演じるにあたり「テレビで観ていた印象等があり、どんな時代の大島さんなのか」と役作りに勤しむ。「1960年代後半の日本、学生運動があったり高度経済成長に向かっていったりする時代はおもしろそうだ」と直感。「若松監督から一目置かれ尊敬されながらも、自分に足りないものをお互いに感じ合っている」と役柄を掴んでいく。当時の若松監督を知らなくとも、現場に入ってみて「若松さんの温かみを感じながら演じさせてもらい、有難かった。願わくば、若松プロ側の誰かを演じたかった。皆が良い関係性の中で演技していた」と羨望の眼差しだった。

 

若松監督を演じた井浦さんは、演技がモノマネであることを認識しながらも「モノマネではあるが、僕からしてみたら、若松監督には1ミリも届いていない。若松監督は野生の熊のよう。座って喋らなくても何をしなくてもエネルギーが溢れ出している方。僕はそれを体を動かさないと表現できない。何も出来ていない」と痛感。若松監督の下で過ごした6年間を思い返し「自分の心中にある若松監督の記憶を、白石監督の下で役を通して記したかった」と告白。実際に演じてみて「若松監督だったらこんな風に話すだろうと想像した。若松監督のリズムで台詞を喋ると今作のようになってしまう。芝居の領域を超えてしまい、自分の中にいる若松監督が僕の体を使って演じている状態になった」と表現する。

 

若松監督を映画にするにあたり、白石監督は「若松さんの歴史は常に波乱万丈。作中の時代までに、俳優が撮影中の事故で亡くなったり、前年には『壁の中の秘事』がベルリン国際映画祭に選ばれて日本中から国辱映画だと言われたり。後の時代には、大島さんと『愛のコリーダ』を撮ったり」と解説した上で「あらゆる時代の何処を切り取ればいいか」と悩んだ。そこで「吉積めぐみさんの2年半があれば、若松プロへの人の出入りが表現できる」と着想する。「めぐみさんの目線は僕らの目線。作中でめぐみさんが若松監督から言われていることは全て僕が言われていること。時代や男女の違いはあれど、同じ師匠に弟子入りしている。若松さんは基本的に変わっていない」と気づき、同じ背中を見ていた、と懐かしんだ。

 

最後に、高岡さんは「関西は今日が初日。今後、皆さんに愛して頂けるような作品になるといいな」と思いを込める。毎熊さんは「これから様々な壁が出てくると思うのですが、役者や映画等をやっていくなかで、何か迷った時に若松プロダクションで出会った仲間に返ってくるような映画になりました。皆さんにとっても、もう少し頑張ろうと思える映画になっていれば嬉しい」と伝えた。井浦さんは、白石監督の言葉を受けて「めぐみさんの眼差しを以て僕も若松監督の背中を追いかけていました。僕自身、この映画を観て、めぐみさんの眼差しに心を刺されます。若松監督を演じているとはいえ、演技をしながらも門脇麦の眼差しを感じていました」と述べる。また、お客さんに向けて「若松監督や若松プロダクションのことを何も知らない方達にこの映画が深く届いてほしい。若松プロや若松監督の作品を今まで愛して下さった方達には懐かしさと共に、もう一度心の中に小さな火種がまた燃え上がれば」とメッセージを送った。本作に対し「この物語は白石監督であり僕らであると同時に、皆さんの物語でもあると思っています。この映画を観て頂いてじっくり味わって頂いたら、一人でも多くの方達に末永く愛されるものになっていけば」と願いを込める。白石監督は、これまでの映画人生について「若松監督から恩恵を受けている」と思い返していた。『止められるか、俺たちを』というタイトルについて「若松監督が写真集を映画化しようとした企画から由来している。映画に関わったスタッフの皆が、今後も自身を止めないで活動していければ」というメッセージを込めており「若松プロの再始動第1弾と謳っている。ヒットすれば、また若松プロらしい映画を作れれば」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『止められるか、俺たちを』は、10月20日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、十三の第七藝術劇場、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸、京都・烏丸の京都シネマで公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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