俳優で臨床心理士の女性が謎の階層に迷い込む物語が展開していく『ハイパーボリア人』がいよいよ関西の劇場でも公開!
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©Leon & Cocina Films, Globo Rojo Films
臨床心理士兼俳優の女性が、友人の映画監督の提案で、患者の幻聴を基に映画を製作していく中で入りこんだ謎の階層を、実写・影絵・アニメなど多様な方法で描く『ハイパーボリア人』が2月14日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『ハイパーボリア人』は、『オオカミの家』で世界的に注目を集めたチリの監督コンビ、クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの長編第2作。主演俳優アントーニア・ギーセンやパペット姿のレオン&コシーニャ監督が実名で登場し、チリ現代史の暗部やナチスドイツをモチーフに、実写やコマ撮りなどさまざまな手法を駆使して描きだす。女優で臨床心理学者のアントーニア(アント)・ギーセンは、幻聴に悩まされているというゲーム好きの患者を診察する。アントからその話を聞かされた友人の映画監督レオン&コシーニャは、幻聴の内容が実在したチリの外交官・詩人でヒトラーの信奉者でもあったミゲル・セラーノの言葉だと気づき、これをもとにアントの主演映画を撮ろうと提案。アントはセラーノの人生を振り返る映画の撮影を始めるが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探すよう命じられる。
同時上映される、レオン&コシーニャ監督による2023年製作の短編「名前のノート」は、チリのピノチェト軍事政権下で行方不明となった未成年者たちを重厚なアニメーションで追悼した作品で、レオン&コシーニャ監督の他作品と同様に、映像や音響(合唱)を若者たちとのワークショップによって制作した。2024年の第48回オタワ国際アニメーション映画祭に出品された作品。
©Leon & Cocina Films, Globo Rojo Films
映画『ハイパーボリア人』は、関西では、2月14日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のkino cinéma心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のkino cinéma神戸国際で公開。
©Leon & Cocina Films, Globo Rojo Films
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あの『オオカミの家』クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャによる監督コンビが手掛けた長編第2作。今回は、実写に影絵とストップモーション・アニメーションも掛け合わせて、さらに奇怪な世界観を構築した作品を作り上げ、日本にも届けられた。冒頭では、謎の人物へのインタビューかと思っていたら、気づけば、映像にノイズが入ったかの如く、人間であって人間ではない物体が存在し、更なる奇異な世界を連れていかれてしまう。今回は、一体どのような世界へと連れ去られてしまうのか、と不安になっていたら、気づけば、現代へと語り継がれてきた歴史の闇を描いていることに次第に気づかされてきた。とはいえ、難解で奇怪な世界である。一体、何をしでかそうとしているのは、読み取っていくのは難しい。一体、私は何を観ているのだろう…と思わずにはいられないが…されど、今は観ておかねばならないと思わずにはいられない世界観が構築されていた。2人の監督それぞれに個性があり、明確な違いがあることも見受けられる。だが、それらが一つの作品の中で絶妙なバランスで存在し、映画として成立しているのは実に興味深い。1時間強というサイズの中で、これだけの世界を構築できることに羨望の眼差しを送ってしまう。2作目にしてこのクオリティであるならば、今後もどのような作品が届けられるのか、今から楽しみで仕方がない。
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- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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