ブラジル全土で起きた学生運動に当事者として参加した3人の高校生の視点から社会運動を見つめたドキュメンタリー『これは君の闘争だ』が関西の劇場でもいよいよ公開!
多くのデモや抗議などが起こった2013年頃から、2015年の高校生による学校占拠、2018年のブラジル初の極右政権成立、激動の2010年代のブラジルを学生の視点から見つめる『これは君の闘争だ』が11月13日(土)より関西の劇場でも公開される。
映画『これは君の闘争だ』は、2010年代、激動したブラジル社会の変遷を当時の学生たちの視点から描いたドキュメンタリー。2013年6月、ブラジル・サンパウロの路上で公共交通料値上げに対する抗議デモが起こる。その運動はやがて、物価上昇やLGBTQ+、女性の権利、人種差別などさまざまな社会問題に対する抗議へと広がっていき、2015年には公立学校再編案に反対する高校生たちがブラジル全土で学校を占領する事態に発展する。高校生たちによる革命が起きようとしていたが、たび重なる汚職や治安悪化で支持を失い倒れた左派政権に代わり、「ブラジルのトランプ」と称されるジャイル・ボルソナロによる極右政権が成立する。本作では、学校占領の当事者だった3人の若者が当時の運動を振り返り、発達した公共政策の下で育った最初の世代である彼らが、混迷し、右傾化していくブラジル社会の在り方を問いただしていく中で、社会に対する希望と不安を浮き彫りにする。山形国際ドキュメンタリー映画祭2019インターナショナル・コンペティション部門優秀賞を受賞した。
映画『これは君の闘争だ』は、関西では、11月13日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、12月17日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。
かつては日本でも大学生による学生運動が起こり、高校生にも飛び火して、校内で立て籠もり主義主張を訴えたことがあったと人伝えに聞いたことがあった。近年では一時的に盛り上がったこともあったが、結局はかつてのような規模にはなっていないように感じる。アジア圏なら、台湾や香港での動きの方が大きく取り上げられているだろうか。さらに世界に目を向けると、ブラジルでも起こっていた。政権の腐敗や行き過ぎた思想によって国民の格差が生じ、不平不満は募っていくばかりだ。
そして、闘争が起こるわけだが、かつて起こったような様相とは違っている。マイノリティとして扱われるような若者達が活発に活動しており、映し出される姿にはカッコいいヒップホップが添えられていく。彼等の活動を象徴するがごとく、すぐに歌い踊る姿も積極的に映し出す。いわば、90分もあるミュージックビデオを観ているような感覚にもなる。運動はブラジル全土に広がっていき、様々なグループが自然発生していく。縦の繋がりを重視している者達がいれば、横の繋がりを大切に知るグループも存在する。本作を手掛けたエリザ・カパイ監督はそれぞれの視点を取り入れていった。ナレーションも映像も小刻みに入れ替わっており、不思議な映像作品を見せられているような気分にもなった。これぞ2010年代以降の多様性を重視した闘争の記録である。
- キネ坊主
- 映画ライター
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