「明日も今日みたいだといいな」そんな風につぶやきながら、穏やかに眠りに落ちる。そんな当たり前の日々ほど、かけがえのない幸せなものはあるだろうか。

本作は、いわゆるクリスマスムービーである。「クリスマス・キャロル」に代表されるような、ファンタジックな雰囲気で幸せな気分になれる映画だ。聖夜に起きる少し不思議な奇跡が、傲慢だった男に人生を振り返るチャンスを与える。彼は、本当に大事なものは何だったのかということに気付くことができるのか？

おとぎ話のようなストーリーを支えるキャストはハマり役ばかりだ。主人公パク・ガン役のクォン・サンウは、「大人気の映画スター」という本人そのままのオーラを放ちつつ、尊大で嫌な男の心に変化が起きていく様子を繊細に演じて、俳優としての実力を見せる。

彼と生涯の友人であるチョ・ユン役のオ・ジョンセは、現実の世界でも立場が逆転した世界でも、何かを得れば何かを失うという、主人公と対の鏡のような重要な存在をコミカルに演じる。

そして、パク・ガンの別れた恋人／もうひとつの世界では妻のスヒョンを演じるイ・ミョンジンは、「なんでこの人を選ばなかったの！」と彼をビンタしたくなる、美しいだけではなく、強く誠実で彼のことを深く信頼してくれる魅力的なパートナーだ。

人生はこの劇中のようにシンプルな二択ではないのかもしれない。成功して裕福な生活を得つつ大事な家族と暮らしている人もいれば、家族の関係がうまくいかずに捨ててしまいたいと思っている人もきっと少なくないだろう。だけど、それはそれとして、映画ではシンプルな選択とそれがもたらす結果の物語を見ていたい。この作品はそんな期待に応えるように、誰の心にも優しく届くようになっている。私の心にもしんみりと響いてしまった。

せっかくのクリスマス・ミラクルストーリーなので、クリスマス当日までに是非観ていただきたい。

fromNZ2.0@エヌゼット