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「恋の終わらせ方」をめぐる、ちょっぴり不器用な成長物語『恋とさよならとハワイ』大阪凱旋上映2日目!ヒロイン綾乃彩さんが語る

2017年12月17日

恋の終わらせ方をテーマに、別れる決意をしたものの、ズルズルと同棲生活を続けてしまう女性の葛藤を描いたユーモアと切なさがあふれるラブコメディ『恋とさよならとハワイ』が今年の大阪アジアン映画祭以来に、大阪・十三のシアターセブンで12月16日(土)より凱旋上映開始。公開2日目には、上映後 にまつむらしんご監督と主演の綾乃彩さんを迎えてトークイベントが開催された。

 

映画『恋とさよならとハワイ』は、「友だち以上恋人未満」の関係を引きずる女性を主人公に、「恋の終わらせ方」をユーモアと切なさを交えて描いたラブコメディ。大学院生の恋人イサムと3年間、同棲を続けているリンコ。2人の関係はいつしかうまくいかなくなり、別れることを決めたのだが、それからもずるずると同棲生活を続けていた。リンコにとって、一度別れを決意したあとの友だち以上恋人未満な関係が思った以上に心地よく、いつしか2人の仲も回復。穏やかな日々の中で、リンコは自身の内にイサムへの思いが残っていることに気付く。ところが、そんなある日、イサムが後輩の女の子に好意を寄せられており、イサムもその子に気持ちが向いていることを知り……

シアターセブンでの『恋とさよならとハワイ』上映2日目、上映後 にまつむらしんご監督(以下、まつむら監督)と綾乃彩さん(以下、綾乃さん)に西尾孔志さん(以下、西尾さん)が登壇。

 

綾乃さん:

私は舞台を中心に活動していたんですが、この作品で映画初出演の上、初主演をさせて頂きました。

まつむら監督:

作品鑑賞後、可愛らしい女の子が撮ったんじゃないかとよく言われますが、30歳過ぎのおじさんが撮りました(笑)

 

☆制作の経緯について

まつむら監督:

元々、綾乃彩さんのプロモーション依頼があった。彼女は舞台出身で、映像・映画に仕事をシフトするタイミングだった。30分程度の短編映画を作ってもらえないかと依頼を受けた。短編を作ってもその先が日本映画界では難しく、長編を作るべくプロデューサーに長編の企画を送ると数時間後にやることになった。

西尾さん:

近年のアメリカ映画では等身大のダメな人の話を共感を持って描くコメディが多い。人生にあるシーンを切り取った作品が量産されている。1つのムーブメントとしてマンブルコア(本来は、みんなゴニョニョ喋る意味)があり似ている。マンブルコアはシチュエーションを説明された後に役者はアドリブで演じるが…

まつむら監督:

この映画はアドリブは一切ない。一字一句そのまま演じてもらった。稽古期間を設け会話のリズムや間を意図通りにやってもらった。

西尾さん:

監督の演出はいかがでしたか?

綾乃さん:

私はまず声を張ってしまった。舞台では観客を意識した芝居を見せるので、最初は悲しさや切なさのある表情を作ろうとしてしまう。「やり過ぎだよ」と修正してもらった。ラッシュを一度見せてもらい、自分の表情が予想以上にオーバーなリアクションしていると実感した。そこで腑に落ち、もう一度チャレンジできた。

まつむら監督:

最初は、僕が思っている映像の演技ではなかった。クランクインの数日前に練習する時間を設け、ビデオカメラを数台据えて実際のシーンを演じてもらい、本人たちに見せて「今、こんな顔をつくっているよ。声を張っているよ。目の前にいる相手に言葉を届けるだけでいいんだよ」と繰り返した。数日しか期間がなかったので、癖がついている演技は直ぐに変わらない。今回は自主映画の延長、小規模でスタッフも少なくデメリットも多くあるが、プロの現場と違い、1シーンにかける時間をコントロールできるメリットがある。生活感を大事にした映画なので、重要なシーンの撮影に半日かけたことが細部に表れている。

 

☆撮影現場について

まつむら監督:

部屋は実際にある部屋を借りてもらった。2月から3月になる時期だったので撮影用に1カ月だけ借りようとしたら門前払い。1軒だけ話を聞いてくれて、作品にピッタリの部屋を紹介してもらった。ロケーションは、部屋から自転車で行動可能な範囲に収まっている。撮影現場のスタッフはカメラマン、助監督兼制作、プロデューサー兼録音、監督の4人だけ。長編映画はつくるのが大変。撮影にベストなタイミングや条件にはならない。今やらなければいけない時に条件が揃っていなくても撮る。限られた環境で工夫すれば出来る。デメリットだけではない。重要なシーンに時間をかけたり、少人数で意思が浸透しやすく様々なアイデアをもらえたりする。

西尾さん:

初めての映画の現場でその環境はいかがでしたか?

綾乃さん:

実際にある家を借りたので、住んでいる感覚でした。撮影していない横で自分の布団でイサムが寝ていたり、喧嘩のシーンでは押し入れに監督が入って見ていたり。近いから親密に出来た部分と近い故の圧迫があったが、絆や団結力を凄く感じた。

まつむら監督:

メリットもデメリットもどちらも十分にある。あと何人かいればどうにかなることもあった。

 

 

☆キャラクター設定について

西尾さん:

作中のリンコは情けない三枚目。実際の綾乃さんはフレッシュで可愛らしい。プロモーション目的に三枚目を演じることに抵抗はなかったですか?(プロモーションだと綺麗に撮る映画もある為)話していると、綾乃さんに良さを引き出すのにピッタリだった。

綾乃さん:

正直、私のレベルだと、綺麗や可愛さで売り出しても絶対売れない。身近に思ってもらえる、脇に入っても大丈夫な自然にいるイメージでやりたかった。踊ったフラダンスは長く、自分だと見ていられない。

まつむら監督:

フラダンスを撮るのは大変。振付1つ1つに意味が全部あり著作権が伴う。言葉を体で表し、ハワイ語で歌っている。オリジナル曲を作ってもらい、先生に振付を作ってもらったので、長くて、切れない。長いと段々クスクスッと面白くなり、短くやるより長い踊ってもらった方がよい。綾乃さんの名誉のために言っておくが、綾乃さんは元々アイドル活動をしていたのでダンスはできる。アイドルグループの中ではダンスが一番駄目で有名だったが、未経験の素人よりも上手く、真面目に練習し上手くなっていた。だから、あえて1テンポずらし、下手に見えるように踊ってもらった。

西尾さん:

なんでハワイだったんですか?

まつむら監督:

最初に依頼を受けた時、短編の内容を考えていた。ハワイに行こうとしていたが行けなくなってしまった女の子が東京を右往左往しながら新しい自分を発見する話をやろうとしたが、30分の作品には出来なかった。長編作品ですると決めた際、ハワイに行けなくなった女性のエピソードを入れたくなった。まさか、タイトルにハワイが入るとは微塵にも思っていなかった。今は馴染んでいるが、撮影中は”(仮)”を付けていた。プロデューサーから、ポップで切なくてユーモラスなタイトルという要請があった。全然意味がわからなかったが(笑)、恋はポップ、切ないはさよなら、ユーモラスがハワイだなと。”恋とさよなら”だと掴みがない。最後にハワイがつくと違和感がある。当時、小沢健二を聞いていたのでオザケンっぽく感じた。

西尾さん:

病んでいたんですか?

まつむら監督:

病んでいたと思います(笑)。撮影前は病んでいますよね。タイトルはいつも最後に付けるので、オザケンのおかげですね。オザケンのアルバムに入っていそうなタイトルにしようと思っていた。ありそうじゃないですか(笑)

 

☆演技指導について

西尾さん:

鑑賞してみて、最初は知らない役者さんが沢山登場するが、この人達は何者だろう、とすぐに興味を持てない。10分程度経過すると、リンコが可愛く共感出来るようになる。最終的に男性でも感情移入できた。役者と監督の間で意見に食い違いが起きるのは、役者自身は出来たと思う演技が必ずしも客観的に求めている演技ではない時。役者は”ここまでの感情になれたのに…”となるが、それがNGを出されるとわからなくなる。

まつむら監督:

綾乃さんは初めての映画だったので、僕の意思に沿うように演じてくれた。田村さんは経験がけっこうあったので、彼を修正すると彼が悩む。考えてやってくれるので、違うと演技の修正に時間を要する。

西尾さん:

綾乃さんが一生懸命にリンコを演じていると田村さんが演技派っぽくならず、さりげない目の動きや表情で上手く受けている。二人による投げと受けがあり、カップルになっていくのが監督の手腕ですか?

まつむら監督:

自分達は他の監督の現場を見に行くことがない。どういう形式で演出していますか?(当日、観覧していた外山文治監督に振る)

外山監督:

私の場合、役者に膨大な量の資料を渡す。資料を読んでもらえれば、自分の思い通りに芝居をしてもらう状態が出来上がっている。あとは指示を出しながら、指揮者みたいにバランスをとる。

まつむら監督:

予定通りにならない場合はありますか?

外山監督:

全然ならないこともあった。真逆の設定で来られる方もいた。その場合、話し合って出来る限り撮りたい方向に導くようにしている。役者を信じているので、キャラクターさえ掴んでもらえれば間違いが起きない。

 

☆撮影中の綾乃さんについて

西尾さん:

綾乃さんがリンコになったと思ったタイミングは?

まつむら監督:

後半のシーンを撮影している頃、皆が同じタイミングで撮影中に「どこから撮ってもリンコだよ」と言った。その日は撮影が直ぐに終わりました。

西尾さん:

ご自身で作品を観て、映画の中のリンコはどうでしたか?

綾乃さん:

一言多いなぁと。客観的に自分と違うキャラクターに見えている。それが不思議だなぁ。最初は「90分間のほとんど私のシーン。リンコが出ずっぱりなので、観てられないと思うよ」と言われた。観るのが怖かった。一番最初の関係者試写会で観た時、自分にしか見えなくて。二回三回と観ていくうちに自分には見えず、今はリンコにしか見えない。”この一言が嫌われるんだよ。これがなければイサムと続いていたかも”と感じる。

西尾さん:

女優さん向きなんじゃないですか。

まつむら監督:

成長したと思います。

 

最後に、グッズとして販売している台本の紹介をしながら、まつむら監督は「口コミだけが命綱なので、おもしろいと思ったらSNS等に掲載して頂ければ」と綾乃さんと共にお願いしながら、上映2日目のトークショーは幕を閉じた。

 

映画『恋とさよならとハワイ』は、12月16日(土)から12月29日(金)まで大阪・十三のシアターセブンで公開。12月16日(土)から12月22日(金)までは18:30~、12月23日(土)から12月29日(金)までは16:15~、の上映で、一般1,700円、専門・大学生1,200円、シニア1,100円、中学・高校生1,000円、小学生以下700円、シアターセブン会員1,000円となっている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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