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成田空港のその下に“あの時代”が埋まっている。『三里塚のイカロス』第七藝術劇場で公開!

2017年11月18日

成田国際空港建設への抗議として1960年代半ばに巻き起こった三里塚闘争と、運動に関わった人々の現在を描くドキュメンタリー『三里塚のイカロス』が、11月18日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。今回、関西での公開のタイミングに本作を監督した代島治彦さんにインタビューを行った。

 

映画『三里塚のイカロス』は、成田空港建設反対運動(三里塚闘争)で国家と闘った成田市三里塚の人々を題材にした『三里塚に生きる』の代島治彦監督が、闘争で農民とともに闘った当時の若者たちの人生を追っていくドキュメンタリー。1960年代からはじまった三里塚闘争で政府に抵抗する農民たちとともに闘うために、多くの若者が三里塚へと集まってきた。本作では、三里塚闘争の責任者という立場にいた者、農民と結婚した女子大学生、当時高校生だった活動員ら「かつての若者」たち自身の口から、あの時代、そしてその後の50年が語られていく…

撮影は、同闘争を追ったドキュメンタリー「三里塚シリーズ」を手がけた小川紳介監督率いる小川プロ出身の加藤孝信さん。音楽を大友良英さんが担当し、1971年に行われた「三里塚幻野祭」に参加したサックス奏者の坂田明さん、ドラマーの山崎比呂志さんらとの即興演奏によるフリージャズが劇中音楽として登場する。

 

代島監督は、前作の『三里塚に生きる』で農民の生きざまを描いた。三里塚の空港反対闘争について「農民が国家権力に抵抗した”昭和の百姓一揆”」だと捉える。その後の三里塚を砦とした新左翼党派の過激な暴力路線が権力やメディアによって広く喧伝され「現在流布する三里塚闘争のイメージは“過激派の闘争”だったということになっている。開始当初は国家権力の横暴に抵抗する農民の闘いだったが、1960年代、70年代の全国各地の闘争と連帯し、一般市民の共感を集めていた。70年代後半以降はイメージが“過激派の闘争”となり、1983年には反対同盟が分裂し、孤立していった」と論じた。その理由を問い詰めていき「人間の、人間集団の普遍的な愚かさ、悪霊的な心理のルーツをみつめ返すために、二作目の『三里塚のイカロス』を作った」と述べる。

 

今作は、これまでの三里塚に関する作品と違い、当時の映像より現在の映像が多い。代島監督は「『三里塚に生きる』は農民の闘いを描いた。小川プロの三里塚シリーズ7本は農民が主人公。だから、引用映像も多くなった」と捉えた。『三里塚のイカロス』では「農民を支援するために三里塚に入った若者たち、三里塚を革命の拠点とすることをめざした新左翼党派の人々を主人公にしている。新左翼党派の三里塚での闘いはあまり映像に残されていない。基本的に過去の映像は少ない方がいい」と考えている。必要最低限の過去の映像によって「現在の証言(記憶)と《衝突》させる。過去の映像を使用する場合、解説的な《引用》ではなく映画的な《衝突》」を表現した。

 

『三里塚のイカロス』というタイトルについて、代島監督は「映画の登場人物の誰が「イカロス」なのか?」という質問を受けることがある。「イカロス」とは「翼が生えたような高揚感に溢れた『あの時代』」だと考えた。当時を振り返り「『世界同時革命』を本気で起こそうと信じられた。それが、連合赤軍事件などの仲間殺し、ビル爆破事件などのテロリズム、党派同士の内ゲバ殺人などの悪霊的な航跡の果てに『あの時代』は墜落した」と解釈する。その後は「『あの時代』の墜落がもたらした政治的アレルギー症候群に感染した結果、この国の若者にはもう翼が生えることはない」と嘆く。

 

本作の音楽は大友良英さんが担当し、フリージャズが劇中音楽として登場する。1959年生まれの大友さんと代島監督はほぼ同世代、「あの時代」に対する複雑な感情を共有し、映画の主題にも敏感に反応してくれた。編集が終わった映画を観た大友さんの時代認識と遊び心から「音楽はフリージャズでいきましょう」と提案を受けた。当時のフリージャズ界にも党派があり「内ゲバこそなかったが、対立構図があった。大友さんは、この映画音楽で伝説のサックス奏者・坂田明さんと伝説のドラマー・山崎比呂志さんを出会わせた。この新左翼党派の歴史を描く映画を二人の演奏の初共演の場に選んだ」と代島監督は推測。出来上がった音楽を聴き「『自由』こそ、『あの時代』の空気そのもの」と満足している。

 

代島監督は、本作を作り終え「三里塚に関しては『三里塚に生きる』『三里塚のイカロス』で、その人間同士の闘争の光と闇を描けた」と思っている。今後も現代の多様なテーマを題材に映画を撮り続けていく。

 

映画『三里塚のイカロス』は、11月18日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また『三里塚のイカロス』公開記念として『特集「三里塚とあの時代」』と題して、『三里塚に生きる』『日本解放戦線・三里塚の夏』『三里塚・辺田部落』の3作品が11月25日(土)より日替わり上映される。なお、12月23日(土・祝)から神戸・元町の元町映画館でも公開。京都・烏丸の京都シネマでも順次公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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